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こんばんはtakuです。
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第5話閾(いき)
訓練場の空気は、食堂よりずっと乾いていた。
爆豪が前に立ち、僕と轟くんが
少し後ろに位置取る。 いつもの配置。
いつものはずの、距離感。
「今日は連携だ」
かっちゃんが言い捨てる。
「デク、前出すぎんな。俺の後ろ維持しる」
「う、うん」
「轟は左右カバー。氷出すタイミング、
俺に合わせ ろ」
「分かった」
号令と同時に、模擬敵が起動する。
金属音が響き、視界に複数のターゲットが現れた。 「来るぞ!」
かっちゃんが一気に踏み込む。
爆風で距離を詰め、敵の注意を引きつけるーーいつもの戦法。
僕も追おうとして、無意識に一歩前へ出た。
その瞬間だった。
「出るな!!」
かっちゃんの怒鳴り声。
同時に、衝撃。
僕の肩を強く掴まれ、後方へ引き戻される。
バランスを崩し、よろけた僕の背中を、
かっちゃんの腕が支えた。
「っ……!」
近い。 息が、熱が、伝わるほど。
「だから言っただろ!」
耳元で怒鳴られて、思わず肩が跳ねる。
「お前は前出る癖があんだよ…….!」
その声は、怒りよりも、焦りが混じっていた。
「爆豪、離れろ」
轟くんの声が割って入る。
振り返ると、轟くんが俺たちを見て立ち止まっていた。 視線は、かっちゃんの腕に向けられている。 「訓練中だ」
「分かってる!」
爆豪は叫ぶように返す。
「だから守ってんだろ!」
「守る範囲を越えてる」
その言葉に、かっちゃんの動きが止まる。
僕は、ようやく気づいた。
自分が、かっちゃんの腕の中にいることに。
「か、勝己……?」
名前を呼んだ瞬間、
かっちゃんの腕が僅かに強まった。
「……チッ」
次の瞬間、乱暴に手を離される。
「邪魔すんな」
吐き捨てるように言って、
かっちゃんは前線へ戻った。
その背中は、いつもよりずっと硬い。
轟くんが、俺の横に立つ。
「大丈夫か」
「う、うん…….」
返事はしたけど、胸の鼓動が収まらない。
(今のは……)
守るため?
それともーー。訓練は続いたが、連携は噛み合わなかった。
かっちゃんは必要以上に前に出て、
僕を視界に入れ続け る。
轟くんは、俺とかっちゃんの間に、
無言で割り込むような位置取りをする。
三人の動きが、互いを戒している。
終了のブザーが鳴ったとき、
全員が息を切らしていた。
「…..デク」
かっちゃんが背中越しに呼ぶ。
「次、勝手な動きすんな」
その声は低く、強かった。
「俺の言う通りにしろ」
それは命令。
それ以上に一ー独占に近い響き。
俺が答える前に、轟くんが一歩前に出る。
「それは違う」
かっちゃんが振り向く。
「出久は俺たちの”所有物”じゃない」
空気が、凍りついた。
爆豪の目が細くなる。
「…..あ?」
僕は、二人の間に立ち尽くす。
(やめて……)
でも、止める言葉が、見つからなかった。
守ることと、縛ること。
その境界線は、もうーー越えかけている。
この訓練は、まだ終わっていない。
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