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着いた頃には日が沈みかけていた。
上品な店先の提灯は消えたまま風に揺れている。
古い着物を着た子供など追い返されそうな店構えであるが、閉められている戸を叩いてみた。
まずは怪しまれ尋ねられると思いきや、すっと戸が開きお辞儀をされる。
「旦那様から伺っております。どうぞ…」
別世界へ来たようだと少々面食らいながら言われるまま着いて歩く。
薄暗い店の中にある土間を渡り外へ出ると大きな庭園と屋敷が現れた。
いくつかの部屋から眺められるよう作られていて、障子からもれる明かりと庭の石灯籠に照らされる様は見事である。
手入れされた大きな松が並び、微かに流水の音が響く池には鮮やかな鯉が優雅に泳いでいた。
俺より良い暮らしをしてそうな鯉だと眺めて歩けば小さな離れが目に入る。
屋敷から繋がる渡り廊下の先にあるのだが、明らかに雰囲気が違っていた。