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桜咲かな
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第47話
俺は、店に来た少年が勇者だった事を初めて知った。
確かに今思えば、あんな夜に出歩けるのはとても腕に自身が無いと怖くて出られない。
あの子は、親がいないと言っていたが、聖騎士になれたって事は成人はしていたのか。でも、最近は成人しても家を出ない人が多いみたいな話を聞くが、何歳なんだ? 十二歳では一人暮らしは辛いだろう……
それに、あの子は魔力も少ないが、魔力じゃない何かがある。でも、魔力じゃない何かって何だよ……
それにしても、あの耳飾りは質がいい。何年ものだか分からないが、ちゃんとしていて、綺麗だ。
特に、細工をされているようなものでは無いし、ただの石を耳飾りの形だけに加工した物だが、綺麗と感じた。
俺は、あの子が店に来たことを誇りに思いながら帰路を歩いた。
✡
私たちを乗せた馬車は復興の進んだ、近くの街の大通りを一周してから終わった。
ロルフさんは少し柔らかい表情で手を振っていた。
私は勿論、笑顔で振っていたけど、青い瞳の後ろに光が見えなかった。何かを、悔やんでるように見えた。
「今日はありがとうございました」
そう言って、私の事をエスコートしてくれる。
「こちらこそありがとうございました。段々と、視察や私を知る人に挨拶をするので、その時は、またお願いします」
「はい」
ロルフさんの顔を見ていると、なぜか、ボロボロで傷だらけの姿が頭の中に浮かんだ。
何? ロルフさんだけど……こんな姿なんて……
「お疲れですか? 顔色が優れないようですが……」
……嘘だ。嘘。
こんな強い人が……うん。初対面だし。
「……いえ。大丈夫ですよ。一応、確認ですけど、前にどこかで会った事は……」
ロルフさんは少し驚いたように見えたけど、首を横に振った。
「分かりました。私はこれで失礼します」
私は腰を落としてから、ロルフさんに背を向けた。
侍女に連れられながら、部屋に戻った。
何かモヤモヤが残る。起きてからずっと。
私は夕食が出るまでの間、ベッドの上で本を読みながら、ロルフさんのあの姿について考えた。
あの人は、私に会ってからずっと、自分を自分で刺し殺している。前からかもしれないけれど、押し殺してはいない。もう、その感情を消して、まるで無かったかのようにやり過ごす。
……でも、あの容姿はロルフさん。でも、これは黒焦げた何かが舞っていて、咽るような腐敗臭と真っ黒の空。それと、残骸だけで、自分の手も傷だらけだ。
それにしても、ロルフさんの傷が酷くて、今にも死んでしまいそうだった。華奢な体格に加えてあの怪我だと、直ぐに押しつぶされてしまいそう。
あのボロボロのロルフさんの青い瞳には、悔しみも、悲しみも、恐怖も、沢山の感情が滲んでいた。
そんな表情を見たこと無いはずなのに、微笑む姿や泣いている姿、唸っている姿が直ぐに想像がつく。逆に、寝顔がどうとか、怒り狂ったり、口を大きく開いて笑う姿なんて全く想像がつかない。
なにこれ……
私は気づかぬ間に本を読むのをそっちのけで、考えていた。
憶もあの声だけ。ロルフさんのあの姿は多分、違う。私の中……でも無いかも?
じゃあ、何? あの人は誰?
ロルフさんは、何で私を治せたの? あの光の筋は何? 本当に会った事が無いの?
……貴方は、私より苦しんでる……
私は昼間のベッドの上で一人混乱していた。
次の日のお風呂上がり。
私は、あの疑問符が消えないまま、書庫にいた。人は夜なのでいなくて、静まり返っていた。見上げる程の本棚がズラリと並ぶこの書庫は、世界でトップを争う程のスケールだろう。
でも、魔力はちらほら見えて、まだ、使用人や住み込みの侍女が残っているのだろう。
私は、歴史本がある本棚に行った。少し奥の方で、光は灯されているけど、ガランとして寂しい。昼間は、人が沢山いるので、そんな事は感じないけど。
しばらく、立ち読みしていると、光る何かが、本棚の反対側から見えた。黄色くて、ロルフさんより強い。
……ソフィー……ん? 何で、名前が?
誰だっけ?
私がポケッとしていると、黒髪黒目の侍女が本を抱えて私の後ろの本棚の前で止まった。
「……あの、急に失礼ですが、光って見えるのはなぜですか? 私の護衛騎士もそう見えるのですが……」
私が思い切って聞くとその侍女は少し俯きながら口を開いた。
「私、貴女と一緒に大災厄を封印していた人なんです。その力が光って見えるのです。私は、光の子なのですよ」
え? この人が……そしたら、見た目より……
それに、ロルフさんも光の子……それか、王族の血筋が……
私も二十八歳。あの人は何歳なのだろう……
「私はこれで失礼します」
そう言って侍女は扉の方へ足を進めた。
コメント
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第48話、読み終わりました!ロルフさんの優しい笑顔の裏に、主人公だけが傷だらけの姿を幻視するシーンがすごく印象的でした。「私より苦しんでる」という台詞が胸に刺さります。そして書庫で出会った侍女が「光の子」で、ロルフさんと同じ力の持ち主かもしれないっていう伏線…この世界の謎がどんどん深まってきました。次が気になります!