テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
店内。
誰も止めないまま、
慎太郎が再生を押す。
画面に映る
廉。
静かなトーン。
廉「この曲は…」
空気が一瞬で変わる。
廉「“守りたかったのに守れなかったもの”っていうか」
〇〇の指、止まる。
廉「それでもずっと、心の中では咲いてる存在っていうか」
“咲いてる”
その言葉だけで、
胸がざわつく。
曲が流れ始める。
♪「もう泣かないで…」
〇〇「……」
♪「ひとりぼっちで ただ凛と咲いていた」
一瞬、
呼吸が浅くなる。
頭の中、
勝手に重なる。
過去。
廉といた時間。
何気ない日常。
終わった日。
♪「そっと包もう」
(やめて)
心の中で思うのに、
止まらない。
きょもは静かに画面見ながら、
ふと横を見る。
その先には北斗。
完全に、固まってる。
表情は変えてない。
でも、
分かる。
限界。
♪「君が咲いてる世界で 僕は君といられる」
〇〇の目、ほんの少しだけ揺れる。
(なにこれ)
ただの歌なのに。
(なんでこんな…)
胸の奥、
押し込めてたものが
じわじわ浮いてくる。
未練。
ちゃんと終わらせたはずの、
感情。
♪「守るよ ずっと ずっと」
その言葉、
まっすぐすぎて
逆にきつい。
〇〇「……」
視線、落とす。
きょも、
それに気づく。
そして
もう一人。
北斗。
完全に無理。
手に持ってたグラス、
少しだけ強く握る。
(やめろ)
(それ以上、流すな)
でも止められない。
♪「いつか雨も上がり…」
“また歩いていける”
そのニュアンス。
北斗の中で
何かが切れる。
北斗「……ごめん」
低い声。
全員、見る。
北斗「ちょっと外出る」
立ち上がる。
樹「え?」
風磨「どうした」
北斗「なんでもない」
それだけ。
でも
その声、
全然“なんでもなくない”。
ドアが閉まる。
〇〇以外全員、静かに見送る。
全部分かってる顔。
動画、まだ流れてる。
〇〇は動かない。
(終わったはずなのに)
(なんで今さら)
胸の奥、
揺れてる。
廉の声。
歌詞。
記憶。
全部、
繋がる。
〇〇「……」
小さく息吐く。
止めたいのに、
止まらない。
きょも、そっと
慎太郎のスマホに手伸ばす。
きょも「…いい?」
慎太郎、無言でうなずく。
動画、止まる。
静寂。
風磨「……重」
樹「タイミングえぐいな」
でも
〇〇は反応しない。
ただ
テーブル見てる。
その顔、
“まだ終わってない人”の顔。
きょも、
それを見て
少しだけ目を細める。
そして
ドアの方を見る。
外にいる北斗。
“今の〇〇”と
“過去の〇〇”の間で
完全に置いていかれてる。
静かな店内。
でもそれぞれの中で
感情は大きく動いてる。
動画は止まったまま。
誰もすぐには喋らない。
〇〇は視線を落としたまま。
(終わったはず)
(ちゃんと終わらせたはずなのに)
さっきの歌詞が、
ずっと残ってる。
“君が咲いてる世界で 僕は君といられる”
〇〇「……」
胸の奥、
じわじわ熱くなる。
(なんで今さら)
思い出したくないのに、
勝手に浮かぶ。
廉といた時間。
隣にいた温度。
別れた日の空気。
〇〇、ぎゅっと手握る。
(違う)
(もう終わってる)
でも
完全には、
消えてなかった。
〇〇「……最悪」
小さく呟く。
風磨と樹、
何も言わない。
慎太郎も黙ってる。
きょもだけ、
ゆっくり立ち上がる。
きょも「ちょっと行ってくる」
誰にとは言わない。
でも全員分かる。
ドア、開く。
外。
夜。
壁にもたれてる
北斗。
きょも「……珍しいじゃん」
北斗「……なにが」
きょも「逃げるの」
北斗、少しだけ笑う。
北斗「逃げてねぇよ」
きょも「逃げてるよ」
沈黙。
きょも「無理だった?」
北斗「……」
答えない。
それが答え。
きょも「まああれはきついな」
北斗「……タイミング悪すぎだろ」
低く呟く。
北斗「なんであの曲なんだよ」
きょも「偶然だろ」
北斗「……偶然で済ませたくねぇわ」
少しだけ感情が滲む。
北斗「まだ残ってんじゃん」
きょも、静かに聞いてる。
北斗「終わってる顔してんのに」
拳を少し握る。
北斗「全部、刺さってた」
その一言で十分。
きょも「……見てたよ」
北斗、目閉じる。
きょも「〇〇」
北斗「……」
きょも「完全には終わってない」
北斗「……だろうな」
分かってる。
だからきつい。
北斗「……じゃあ俺無理じゃん」
ぽつり。
きょも「無理って決めんの早くない?」
北斗「早くねぇよ」
北斗「ずっと見てきたから言ってんの」
静かだけど、
ちゃんと本音。
北斗「勝てる気しねぇ」
きょも「それでも好きなんだろ」
北斗「……」
否定しない。
それで全部伝わる。
きょも、少しだけ笑う。
きょも「じゃあまだ終わってないじゃん」
北斗「……は?」
きょも「向こうも、こっちも」
北斗、言葉詰まる。
きょも「一番中途半端で、一番動く時期」
北斗、少しだけ顔上げる。
きょも「どうするかはお前次第だけど」
きょも「見てるだけなら、普通に終わるよ」
静かな夜。
北斗「……だる」
でも
少しだけ、
目が変わる。
――――――――――
店内。
〇〇はまだ座ってる。
風磨「大丈夫?」
〇〇「……なにが」
樹「いや顔」
〇〇「普通」
慎太郎「普通じゃない」
〇〇「……」
否定しない。
そのまま少し間。
〇〇「……ちょっと外出ていい?」
立ち上がる。
風磨「行ってこい」
ドア、開く。
外。
きょもと北斗。
〇〇、少し止まる。
〇〇「……なにしてんの」
きょも「いやちょっと」
〇〇「なにそれ」
北斗と目合う。
一瞬だけ、沈黙。
〇〇「……さっきの」
言いかけて、やめる。
でも
〇〇「……最悪だったね」
本音が出る。
北斗「……」
〇〇「なんで今あれなの」
少しだけ笑う。
でも全然笑ってない。
〇〇「ちゃんと終わってんのに」
ぽつり。
北斗、その言葉に反応する。
北斗「……ほんとかよ」
〇〇「は?」
北斗「終わってる顔してなかった」
〇〇「……」
言い返せない。
〇〇「……してたでしょ」
北斗「してねぇよ」
〇〇「……」
少しだけ沈黙。
〇〇「……ちょっとだけ」
小さく。
〇〇「残ってたかも」
きょも、何も言わない。
北斗、息止まる。
〇〇「でもそれだけ」
〇〇「もう戻るとかじゃないし」
〇〇「ただ」
少しだけ視線落とす。
〇〇「……忘れきれてなかっただけ」
それが本音。
静かな夜。
その言葉、
ちゃんと空気に落ちる。
北斗、少しだけ目閉じる。
でも
さっきより、
ほんの少しだけ前向く。
完全に終わってないなら、
まだ終わってない。
〇〇も、
北斗も、
廉も。
全部、
まだ途中。
夜の外。
三人の距離、
ほんの少しだけ
動き始める。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
北斗side🌃
夜。
解散後。
それぞれが帰ったあと。
北斗の部屋。
電気つけたまま、
ジャケットも脱がずにソファに座ってる。
「……」
頭の中、
ずっと今日のまま。
動画。
歌詞。
〇〇の顔。
「……忘れきれてなかっただけ」
その一言、
何回もリピートされる。
北斗「……それが一番きついんだよ」
完全に終わってるなら、
諦められる。
でも
“少し残ってる”
それが一番、厄介。
スマホ、テーブルに置く。
その瞬間
震える。
画面。着信。
風磨。
北斗「……なんだよ」
数秒見てから出る。
北斗「もしもし」
風磨「生きてる?」
北斗「うるせぇ」
風磨「いや死んでる声してたぞ」
北斗「してねぇよ」
風磨「してたって」
少し間。
風磨「……大丈夫か」
北斗「……なにが」
風磨「今日」
北斗「……」
答えない。
風磨、少しだけトーン落とす。
風磨「きついよな、あれは」
北斗「……まあな」
認める。
風磨「タイミング最悪」
北斗「ほんとそれ」
少しだけ笑う。
でもすぐ消える。
北斗「……まだ残ってるってよ」
風磨「聞いた」
北斗「最悪だろ」
風磨「いや」
少し間。
風磨「チャンスじゃね?」
北斗「は?」
風磨「完全に終わってないってことだろ」
北斗「それ廉の方だろ」
風磨「でも〇〇側にも残ってる」
北斗「……」
言葉詰まる。
風磨「ゼロじゃないってことはさ」
風磨「上書きできる余地あるってことじゃん」
北斗「……簡単に言うなよ」
風磨「簡単じゃねぇよ」
少しだけ真面目な声。
風磨「でもお前さ」
北斗「……」
風磨「今日、何もしてねぇじゃん」
北斗、黙る。
風磨「見て、耐えて、外出て終わり」
北斗「……」
否定できない。
風磨「それじゃ変わらなくね?」
静かに刺す。
北斗「……どうしろってんだよ」
風磨「動けよ」
即答。
北斗「……」
風磨「別に告白しろとかじゃなくて」
風磨「“自分の位置”ちゃんと作れって話」
北斗「位置…」
風磨「今お前、“いいやつポジ”で止まってる」
北斗「……」
風磨「楽なやつ、の中の一人」
そのワード。
今日、何回も聞いたやつ。
北斗、少しだけ顔歪む。
風磨「そこ抜けないと一生そのまま」
北斗「……だる」
風磨「だるいけど事実」
少し沈黙。
北斗「……あいつさ」
風磨「ん?」
北斗「ちゃんと終わってるって言ってた」
風磨「言ってたな」
北斗「でも残ってるって言った」
風磨「うん」
北斗「……どっちなんだよ」
風磨、少しだけ笑う。
風磨「どっちもだろ」
北斗「は?」
風磨「終わらせたけど、消えてない」
風磨「それが一番リアル」
北斗「……」
風磨「で、そこにお前がいる」
北斗、目閉じる。
風磨「いい位置だと思うけどな」
北斗「……良くねぇよ」
風磨「いや良いよ」
風磨「“今から入り込める位置”だから」
静かな声。
北斗「……」
少し長い沈黙。
風磨「どうする?」
北斗「……」
考える。
今日の〇〇。
揺れてた顔。
でも、
完全には戻ってない。
北斗「……」
ゆっくり息吐く。
北斗「……動くわ」
風磨「おー」
北斗「でも無理なことはしねぇ」
風磨「それでいい」
北斗「……」
少しだけ、
目が変わる。
風磨「とりあえず」
北斗「ん?」
風磨「次会う時、今まで通りやめろ」
北斗「……」
風磨「それだけで変わる」
通話、切れる。
静かな部屋。
北斗、スマホ置く。
「……だる」
でも
さっきより、
少しだけ前向いてる。
まだ終わってないなら、
終わらせない。
ーーーーーーーーー
〇〇side
夜。
部屋。
静か。
〇〇はベッドに倒れ込む。
「……疲れた」
そのまま天井見る。
今日のこと、
全部流れてくる。
夜飯。
北斗のあの顔。
あの動画。
「……最悪」
小さく呟く。
目閉じるけど、
全然寝れない。
頭の中、
ずっとあの曲。
“もう泣かないで”
〇〇「……」
息、浅くなる。
(なんで今さら)
ちゃんと終わらせた。
ちゃんと前向いた。
そのはずなのに
“残ってた”
自分で言った言葉が、
一番刺さる。
〇〇、寝返り打つ。
「……違うし」
誰にでもなく否定。
でも
消えない。
廉の声。
インタビューの表情。
“その人のために歌ってるみたい”
〇〇「……なにそれ」
顔しかめる。
(関係ないでしょ)
もう、
終わってる関係。
戻る気もない。
なのに
(なんであんなに…)
胸の奥、
じわじわ残ってる。
静かな部屋。
〇〇、スマホ手に取る。
無意識に開く。
検索欄。
少し止まって
「Waltz for Lily」
出てくる。
再生、押しかけて
止める。
「……やめよ」
スマホ伏せる。
天井見る。
今度は
別の顔が浮かぶ。
北斗。
外での会話。
“終わってる顔してなかった”
〇〇「……」
少しだけ眉寄る。
(なにあれ)
あの言い方。
あの目。
いつもと違った。
〇〇「……」
もう一回、
思い出す。
インライ。
恭平。
笑ってた。
触れてた。
近かった。
(楽だった)
それは間違いない。
でも
(……それだけ)
ドキドキは、なかった。
〇〇、目閉じる。
頭の中、
3人がぐるぐるする。
廉。
北斗。
恭平。
〇〇「……めんどくさ」
正直な本音。
でも
その中で
一番引っかかってるのは
今日の自分。
“まだ残ってた”
それを認めたこと。
〇〇「……」
小さく息吐く。
(どうしたいんだろ、私)
すぐには答え出ない。
でも
ひとつだけ
分かってる。
(このままじゃダメ)
曖昧なままは、
気持ち悪い。
〇〇、布団かぶる。
「……寝よ」
無理やり目閉じる。
でも
最後に浮かんだのは
あの曲でも、
恭平でもなくて
北斗の顔。
〇〇「……なんで」
小さく呟いて
そのまま、
眠れない夜が続く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
☀️
朝。
事務所。
会議室。
資料広げながら、
〇〇と 風磨が向かい合ってる。
風磨「ここもうちょい変えたくね?」
〇〇「どこ」
風磨「この流れ」
〇〇「…あー、たしかに」
普通に仕事モード。
昨日のこと、
引きずってないわけじゃないけど
ちゃんと切り替えてる。
〇〇「ここはこうした方がよくない?」
風磨「いいね、それでいこう」
ガチャ
ドア開く。
「おはようございまーす」
入ってくるのはSixTONES。
ジェシー、
高地、
樹、
慎太郎、
きょも、
そして
北斗。
〇〇「おはよ!!」
ジェシー「おはよー!」
高地「早いね」
風磨「仕事だからな」
樹「珍しい組み合わせだな」
〇〇「会議」
慎太郎、軽く視線送る。
昨日のこと、もうすでに情報が共有され、
全員知ってる。
でも
空気はあえて普通。
ジェシー「昨日さ〜」
樹「お前早いって」
ジェシー「いや気になるじゃん」
〇〇「なに」
ジェシー「ご飯会」
〇〇「あー」
軽く返す。
高地「大変だったらしいじゃん」
〇〇「なにが」
樹「いやまあ色々」
風磨、ニヤッとする。
風磨「動画な」
〇〇「……あー」
ちょっとだけ顔しかめる。
〇〇「最悪だった笑」
ジェシー「見た見た!」
高地「共有されてるからね」
〇〇「なんで広がってんの」
慎太郎「仕方ない」
きょも、少しだけ笑う。
きょも「タイミングが悪すぎた」
〇〇「ほんとそれ」
軽く流す。
北斗は何も言わない。
ただ普通に席に座る。
風磨「で?」
〇〇「なに」
高地「どうなったの、そのあと」
〇〇「別に」
樹「別に、ね」
〇〇「普通に帰った」
ジェシー「ほんとに?」
〇〇「ほんとに」
あっさり。
高地「引きずってない?」
〇〇「別に」
少しだけ間。
〇〇「ちょっと思い出しただけ」
それだけ。
樹と風磨、
一瞬だけ目合わせる。
“ちょっとだけ”
でも
それ以上ではない。
慎太郎も何も言わない。
北斗、
その言葉聞いて
少しだけ視線上げる。
〇〇は普通に資料見てる。
もう仕事モード。
北斗「……」
昨日の夜とは違う。
“残ってる”けど
“引きずってない”。
その距離感。
風磨、わざと軽くする。
風磨「まあでもいい曲だよな」
〇〇「うん、それはそう!」
ジェシー「俺も聴こうかな」
〇〇「聴いて」
普通に笑う。
重さはもうない。
ただの会話。
でも
北斗の中では
昨日のまま。
一方で
〇〇は
もう前を見てる。
同じ出来事でも
温度差がある。
それが今の2人。
ーー
〇〇は前のめりで資料見てる。
〇〇「ここさ、もうちょい削った方がいいかも」
風磨「どこ?」
〇〇「この説明長い」
風磨「たしかに」
完全に仕事モード。
その少し斜め後ろ。
北斗。
腕組んだまま、
資料見てるふり。
でも
頭の中は別。
“今まで通りやめろ”
昨日の夜、
風磨の声。
“いいやつポジから抜けろ”
北斗「……」
視線、少しだけ上げる。
前にいる〇〇。
普通に笑ってる。
普通に話してる。
昨日の夜の顔とは、
もう違う。
(切り替えてる)
それは分かる。
だからこそ
(このままだと終わる)
静かに息吐く。
樹「北斗?」
北斗「……あ?」
樹「聞いてる?」
北斗「あー、聞いてる」
適当に返す。
でも
決めてる。
“今まで通りやめる”
北斗、ゆっくり立ち上がる。
全員、少しだけ見る。
北斗「そこ、ちょっといい?」
〇〇の横。
今までなら行かない距離。
〇〇「え?」
北斗、自然に近づく。
〇〇の隣に立つ。
距離、近い。
〇〇「なに」
北斗「ここ」
資料を指差す。
でも
その距離、
ほんの少しだけ近すぎる。
〇〇「……」
一瞬だけ視線上げる。
でも
すぐ資料に戻る。
〇〇「ここ?」
北斗「うん」
声、いつもより少し低い。
でも
特別じゃない。
〇〇「別にいいと思うけど」
北斗「長い」
〇〇「さっき言った」
北斗「じゃあ削る方向でいいじゃん」
〇〇「……そうだね」
普通の会話。
でも
北斗は引かない。
そのまま横に軽く座る。
配置が変わる。
風磨、気づいてる。
樹も気づいてる。
慎太郎も、
みんな、何も言わないけど見てる。
〇〇は
気づいてない。
ただ普通に話してるだけ。
〇〇「じゃあここ削って…」
北斗「その代わりこっち足した方がいい」
〇〇「え、なんで」
北斗「流れ的に」
〇〇「……あー」
少し考える。
〇〇「たしかに」
普通に納得する。
その距離のまま。
自然に会話が続く。
(……これでいい)
北斗の中で
少しだけ手応え。
特別なことはしてない。
でも
“いつもと違う位置”。
ただそれだけ。
〇〇は気づかない。
いつも通りだと思ってる。
でも
北斗は
ちゃんと一歩踏み出してる。
小さく。
でも確実に。
誰にも気づかれないくらいで、
でも確実に、
距離が変わり始めてる。
ーーー
ピロン
静かな会議室に、
小さく通知音。
一瞬。
空気が止まる。
〇〇のスマホ。
テーブルの上。
画面、うっすら光る。
表示された名前。
なにわ男子の恭平
その瞬間。
後ろの空気が変わる。
ジェシー、ピタッと動き止まる
樹、視線だけ動く
慎太郎、無言で見る
きょも、ほんの少しだけ笑う
高地、完全に察する
そして
北斗。
目線は資料のまま。
でも
確実に見えてる。
〇〇は気づかない。
〇〇「で、ここなんだけど」
そのまま話し続ける。
風磨も一応合わせる。
風磨「うん」
でも
一瞬だけスマホ見てる。
全員、
“誰からか”を知ってる。
数秒後。
〇〇「……あ」
やっと気づく。
スマホ手に取る。
その動きに合わせて
後ろ、全員ちょっとだけ前のめり。
〇〇、ロック解除。
トーク開く。
恭平
「今日のインライさ」
恭平
「この時間でどう?」
〇〇「……いいじゃん」
小さく呟く。
そのまま打つ。
〇〇
「いいよー」
送信。
間、ほぼゼロ。
既読、即。
恭平
「はや笑」
〇〇、少しだけ笑う。
〇〇
「今見た」
テンポいい。
恭平
「じゃあそれでいこ」
〇〇
「おっけー」
終了。
スマホ、テーブルに戻す。
何もなかったみたいに。
〇〇「ごめん、続きいい?」
風磨「どうぞ」
すぐ仕事に戻る。
完全に切り替え。
後ろ。
ジェシー「(はや)」小声
樹「(迷いゼロ)」小声
慎太郎「(“楽”だな)」小声
高地「(日常すぎる)」小声
きょも、静かに北斗見る。
北斗。
無表情。
でも
手元のペン、
少しだけ止まってる。
(……早い)
分かってたけど、
想像よりも“普通”。
特別感がない。
だからこそ
入り込む余地がある。
でも同時に
簡単じゃない。
北斗、ゆっくりペン動かす。
そして
ほんの少しだけ
距離を詰める。
さっきより自然に。
〇〇の隣。
〇〇、気づかない。
ただ話す。
〇〇「この順番でいけばさ」
北斗「その方がいい」
自然に会話に入る。
さっきより
ほんの少しだけ距離が近い。
でも
違和感はない。
(ここからでいい)
北斗の中で
静かに決まる。
〇〇は気づかない。
ただ仕事してるだけ。
でも
確実に
距離は変わり始めてる。
誰にも見えないくらいで、
でも確実に。
ーーーーーーーーー
無事会議が終わった。
空気、一気にゆるむ。
資料閉じる音。
椅子引く音。
〇〇「はあ〜疲れた」
風磨「おつかれ」
そのまま
8人、だらっと残る。
ソファ移動。
ジェシー「腹減った〜」
樹「さっき食っただろ」
ジェシー「それはそれ」
慎太郎「意味わからん」
高地「平和だな」
きょも、静かに笑ってる
〇〇も混ざる。
〇〇「ほんとにね!」
完全オフモード。
雑談、ゆるく続く。
コンコン
ドア、ノック。
全員、少しだけ止まる。
風磨「はーい」
ガチャ
ドア開く。
「失礼しまーす」
入ってくる人。
高橋恭平。
一瞬。
空気、止まる。
ジェシー「おおー!」
樹「うわタイミング」
慎太郎、無言で笑う。
高地「来たね」
きょも、静かに状況見てる。
〇〇「え、なんでいるの?早くない?」
普通に言う。
恭平「近くで仕事」
さらっと。
恭平「で、ちょっと寄った」
〇〇「あー」
納得。
〇〇「ちょうど終わったよ」
恭平「ナイスタイミングやん」
そのまま普通に中入る。
距離、近い。
〇〇の近く、自然に立つ。
恭平「さっきLINEしたやつ」
〇〇「あ、うん」
恭平「このあと軽く打ち合わせする?」
〇〇「いいよ」
即答。
自然すぎる流れ。
後ろ。
ジェシー「(展開早)」小声
樹「(そのまま来るんだ)」小声
慎太郎「(強いな)」小声
高地「(ナチュラルすぎる)」小声
きょも、ちらっと北斗見る。
北斗。
無表情。
でも
視線だけ
一瞬、恭平に向く。
(……こっち来るタイプか)
想像より早い。
そして
〇〇は
何も変わらない。
〇〇「じゃあちょっとだけいい?」
風磨「どうぞどうぞ」
軽く手振る。
〇〇と恭平、
そのまま並ぶ。
距離、近い。
自然に隣。
笑ってる。
北斗、何も言わない。
ただ
ほんの少しだけ
視線が止まる。
でもすぐ外す。
(……別に)
そう思いながら
指先、少しだけ止まる。
空気は相変わらずゆるい。
でも
“外から来た存在”が
一気に流れを変え始めてる。
そして
〇〇はまだ
それに気づいてない。
ーーーーーーーーー
会議室。
〇〇と恭平、
「じゃあ行こ」ってそのまま出ていく。
ドア、閉まる。
残った7人。
一瞬、間。
ジェシー「……来たなぁ」
樹「想像より早かったな」
慎太郎「しかも普通に来るタイプ」
高地「ナチュラルすぎた」
風磨「しかもそのまま連れてく流れな」
きょも「〇〇、全然構えてなかったね」
ジェシー「“なんでいるの?”だもん」
樹「マジで通常運転」
慎太郎「だから強いんだよああいうの」
高地「距離も近いしね」
風磨「完全に“楽なやつ”ポジだな」
そのワード。
一瞬だけ空気が止まる。
全員、なんとなく北斗を見る。
北斗。
ソファに座ったまま。
北斗「……別に」
短く。
でも
完全に無関心ではない。
風磨「いやでもさ」
ジェシー「うん」
風磨「わかりやすすぎるだろあれ」
樹「テンポもな」
慎太郎「迷いゼロ」
高地「〇〇も即答だったし」
きょも、ぽつり。
きょも「対照的だね」
北斗、少しだけ目線上げる。
きょも「北斗は今、作ってる途中でしょ」
静かに刺す。
北斗「……」
否定しない。
ジェシー「どうするの?」
北斗「なにが」
樹「いやだから」
樹「そのまま見てる感じ?」
少し間。
北斗「……見てるだけじゃねぇよ」
低く。
慎太郎、ちょっとだけ笑う。
慎太郎「だよな」
風磨「とりあえずさ」
風磨、スマホ出す。
風磨「もうすぐ始まるだろ」
ジェシー「あーインライ?」
高地「見るか」
樹「見るしかないだろ」
全員、自然と集まる。
ソファ寄る。
スマホ覗く。
「始まった」
画面。
〇〇と
恭平。
距離、近い。
ジェシー「うわ近」
樹「近いなー」
慎太郎「距離バグってる」
高地「通常なんだろうな」
風磨「これが“楽”ね」
きょも、無言で北斗見る。
北斗。
画面見てる。
無表情。
でも
目、逸らさない。
〇〇、画面の中で笑ってる。
楽しそう。
自然体。
北斗「……」
小さく息吐く。
でも
視線はそのまま。
(……なるほどな)
現実、ちゃんと見てる。
その上で
“どうするか”を考えてる。
周りはわちゃわちゃ。
でも
北斗だけ
少し静かに、
ちゃんと戦い始めてる。
ーーーーーーーーー
別室。
スマホ、スタンドにセット。
ライト軽く当たってる。
〇〇「いける?」
恭平「いけるいける」
〇〇「じゃあ押すよ」
恭平「どーぞ」
配信スタート。
〇〇「こんばんは〜」
恭平「こんばんはー」
コメント一気に流れる。
「きた!!」
「距離近い!」
「またこの2人!」
〇〇、ちょっと笑う。
〇〇「早いってコメント」
恭平「早いってなにが?」
〇〇「もう来てる」
恭平「さすがやな」
顔近い。
肩、軽く当たる。
〇〇「近いって言われてるよ」
恭平「え、近い?」
わざとさらに寄る。
〇〇「ちょ、近いって笑」
軽く肩押す。
恭平「ええやん別に」
〇〇「よくない」
でも笑ってる。
恭平も笑う。
コメント欄さらに荒れる。
「イチャイチャやめて」
「最高」
「仲良すぎ」
〇〇「やめてって言われてる」
恭平「やめへん」
〇〇「なんで」
恭平「楽しいから」
即答。
〇〇「……まあ確かに」
普通に納得する。
そのまま自然に続く。
恭平「今日なにしてたん」
〇〇「会議」
恭平「仕事人やん」
〇〇「そっちもでしょ」
恭平「まあな」
テンポいい。
間がない。
〇〇、ずっと自然体。
笑うし、
軽くツッコむし、
距離もそのまま。
恭平「今日ちょっと時間あったからさ」
〇〇「うん」
恭平「顔出した」
〇〇「びっくりした」
恭平「タイミング神やったやろ」
〇〇「確かに」
また笑う。
距離、また近づく。
肘が当たる。
〇〇「ちょっと当たってる」
恭平「気にしすぎやって」
〇〇「気にするわ」
でも離れない。
そのまま。
コメント。
「ほんと仲良いな」
「空気感好き」
「付き合ってる?」
〇〇「付き合ってないです」
即答。
恭平「即否定やめて」
〇〇「事実」
恭平「まあ事実やけど」
2人とも笑う。
空気、軽い。
ずっと同じ温度。
〇〇の中。
(楽)
ただそれだけ。
ドキドキはしない。
でも
一緒にいて一番自然。
考えなくていい。
恭平「次なにする?」
〇〇「質問答える?」
恭平「いいね」
また距離近づく。
画面ギリギリ。
〇〇「近いってほんとに」
恭平「ええやん」
〇〇「よくないって笑」
笑いながら
軽く肩ぶつける。
でも
そのまま。
自然に、
当たり前みたいに、
その距離で続いていく。
会議室。
ーーーーーーーーー
ソファに固まる7人。
スマホ1台。
風磨が配信開いてる。
「こんばんは〜」
画面の中、
〇〇と
恭平。
ジェシー「始まった」
樹「うわ距離」
慎太郎「近いな」
高地「近いね」
きょも、静かに見てる。
風磨「これ通常なんだよな」
画面。
肩当たる。
笑う。
寄る。
ジェシー「いやこれさ」
ジェシー「ファンじゃなくても思うわ」
樹「思うな」
慎太郎「“仲良すぎ”」
高地「距離感バグってる」
コメントも流れる。
「付き合ってる?」
〇〇「付き合ってないです」
即答。
ジェシー「はやっ」
樹「即否定」
慎太郎「でも否定の仕方軽いんだよな」
高地「そう、それ」
風磨「重くない」
きょも、ぽつり。
きょも「否定しても距離変わってないしね」
そのまままた近づく2人。
ジェシー「ほら」
樹「説得力ゼロ」
慎太郎「いや逆にリアル」
笑い混じり。
でも
一人だけ。
北斗。
ずっと無言。
画面、見てる。
表情は変わらない。
でも
瞬き、少ない。
視線、外さない。
画面の中。
〇〇が笑ってる。
自然に。
楽しそうに。
隣には恭平。
距離も、
空気も、
全部“楽”。
北斗「……」
小さく息吐く。
風磨、ちらっと横見る。
何も言わない。
ジェシー「でもさ」
ジェシー「これさ」
樹「うん」
ジェシー「入りにくくね?」
慎太郎「入りにくい」
高地「完成されてる感ある」
風磨「だからこそだろ」
一言。
空気、少し変わる。
風磨「崩す余地あるの」
きょも、北斗見る。
きょも「どうするの」
静かに。
北斗、
数秒何も言わない。
画面の中の〇〇、
また笑ってる。
北斗「……別に」
一回、流す。
でも
そのあと、
少しだけ前に体乗り出す。
北斗「……ああいうのじゃねぇから」
低く。
樹「ん?」
北斗「俺のやり方」
それだけ。
また画面に戻る。
周り、少しだけ黙る。
ジェシー「……おー」
慎太郎、ニヤッとする。
風磨、軽く笑う。
きょも、優しく見る。
北斗は変わってない。
でも
“見てるだけ”ではなくなってる。
静かに、
ちゃんと動き出してる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
別室。
インライ終了。
〇〇「はあ〜」
スマホ下ろして、
そのまま椅子にもたれる。
恭平「おつかれ」
〇〇「おつかれ」
ちょっと沈黙。
そのあと
2人同時に笑う。
〇〇「コメントやばかったね」
恭平「毎回やばい」
〇〇「近いって言われすぎ」
恭平「だって近いもん」
〇〇「自覚あんの?」
恭平「ある」
即答。
〇〇「やめてよ」
恭平「やめへん」
〇〇「なんで」
恭平「楽しいから」
また同じ答え。
〇〇、ちょっと笑う。
〇〇「単純」
恭平「シンプルな方がええやん」
そのまま、
誰も帰ろうとしない。
空気が止まらない。
恭平、机に肘つく。
恭平「てかさ」
〇〇「ん?」
恭平「今日会議やったんやろ」
〇〇「うん」
恭平「ちゃんとしてるやん」
〇〇「ちゃんとするでしょ普通に」
恭平「なんか意外」
〇〇「どういう意味」
恭平「なんかもっと適当かと思ってた」
〇〇「失礼」
軽く肩ぶつける。
恭平、笑う。
恭平「いやでも」
恭平「今日見た感じさ」
〇〇「なに」
恭平「ちゃんと仕事してる顔してた」
〇〇「してるわ」
恭平「いや、なんか良かった」
さらっと。
〇〇「……なにそれ」
ちょっとだけ照れる。
でもすぐ誤魔化す。
〇〇「普通だよ」
恭平「そうなんやろうけど」
少しだけ間。
恭平「ちゃんとしてるとこ好きやで」
軽く言う。
重くない。
〇〇「……軽」
笑って流す。
でも
嫌じゃない。それだけ。
沈黙。
でも気まずくない。
恭平「帰る?」
〇〇「うーん」
少し考える。
〇〇「もうちょいここいる」
恭平「俺も」
即答。
また笑う。
何の意味もない時間。
でも
それがちょうどいい。
スマホいじるでもなく、
ただ話すでもなく、
なんとなく同じ空間にいる。
〇〇、ふと天井見る。
〇〇「……今日さ」
恭平「ん?」
〇〇「なんか一日長かった」
恭平「濃かったんやろ」
〇〇「かも」
でも
今は落ち着いてる。
隣にいるのが恭平だから、
じゃなくて
“こういう空気だから”。
〇〇「……楽だね」
ぽつり。
恭平、少しだけ笑う。
恭平「やろ?」
〇〇「うん」
それ以上でも以下でもない。
ドキドキはしない。
でも
ずっとこのままでいられる感じ。
時間、ゆっくり流れる。
ドアの向こうでは
まだ誰かいるはずなのに、
ここだけ別世界みたいに静か。
そして
2人とも、
それを壊そうとしない。
ーーーーーーーーー
一方その頃
別室。
〇〇と恭平、並んで座ってる。
特に話してるわけじゃないけど、空気はゆるい。
〇〇「なんか静かだね」
恭平「さっきまでうるさすぎたからな」
〇〇「確かに」
軽く笑う。
コンコン
〇〇「はーい」
ガチャ
風磨「お邪魔しまーす」
ジェシー「やっぱまだいた」
樹「だと思った」
慎太郎「長いって」
高地「いい空気だね」
〇〇「なに急に」
恭平「びっくりしたわ普通に」
風磨、部屋見渡して
風磨「そろそろ飯行く?」
ジェシー「それな!」
樹「腹減った」
慎太郎「俺も」
高地「ちょうどいい時間」
〇〇「行く」
即答。
恭平「俺もいいで」
風磨「決まりな」
ジェシー「何食う?」
樹「肉でよくね」
慎太郎「肉いいな」
高地「安定」
〇〇「なんでもいい」
恭平「じゃあ肉やな」
全員立ち上がる。
〇〇も立つ。
恭平、自然に横に来る。
距離そのまま。
北斗、少しだけその動き見る。
でも何も言わない。
風磨「じゃあ移動するか」
〇〇「はーい」
ぞろぞろ部屋出る。
廊下。
並びがなんとなく決まる。
前にジェシーと樹。
その後ろに慎太郎と高地。
〇〇と恭平、その後ろ。
北斗、風磨が少し遅れて後ろ。
歩きながら
恭平「今日普通に楽やったわ」
〇〇「なにが」
恭平「全部」
〇〇「ざっくりすぎ」
恭平「でもそうやろ」
〇〇「まあね」
軽く笑う。
その距離のまま進む。
北斗、後ろからその背中見てる。
でも歩幅変えない。
ただついていく。
コメント
1件
やばやばい、!!楽しすぎる…‼️