テラーノベル
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出水は、教室の窓際から見える空を、ぼんやりと眺めていた。
ナマエの姿は、そこにない。
あの日から、ずっと。
教室に響いた怒鳴り声も、顔を伏せて泣き叫んだ姿も、忘れられるはずがないのに。
周囲はもう、その話題を避けるようにしていた。
「あいつ…今、どうしてんのかな」
呟いた声は、誰にも届かない。
彼女の席だけがぽっかりと空いたまま、もうすぐ一週間が経とうとしていた。
その間、出水は毎日メッセージを送っていた。
「無理してない?」
「今日はちゃんと寝れた?」
「…返事いらないから、読んでくれるだけでいい」
でも、どれも未読のまま。
既読すらつかない。
それでも止められなかった。
どこかで、心を閉ざした彼女がその画面だけは開いてくれるんじゃないかと期待してしまう。
返事がほしいんじゃない。
ただ――あの子が、もう一度笑ってくれるなら。
(……俺、何もできなかったな)
机に置いたままのスマホを見つめる。
通知は来ない。
ナマエからの返信も、声も、気配も、何も。
彼女が発した、いつもの軽口とは違うかしこまったあの言葉が、未だに耳に残っていた。
あの一言で、確かに距離を置かれたんだと思い知らされた。
でも――それでも。
(俺があいつを諦めたら、本当にナマエは全部一人になる)
教室の喧騒の中にいても、心はそこにいなかった。
彼の中には、返事のない会話と、沈黙の痛みだけが、静かに積もっていた。
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