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また季節はすぎ、冷たい風が肌を刺す。
もう季節はすっかり冬だ。
生徒たちがいつものように報告にきていた。
曰く、両親を暗黒シンジゲートから助け出した。
曰く、国と、幼なじみの姫を助けた。
曰く、マフィアに囚われていた家族を助け出した。
曰く、行方不明だった両親を助け出した。
曰く、自分の母親を見つけた。
曰く、ブラックホールの研究に成功したという報告だった。
だが、その報告を聞いて1番に嬉しそうに笑い、喜んでくれるすまない先生はまだ眠ったままだった。
やはり、生徒達も不安になっているらしく、廊下で泣いている声も聞こえた。
正直に言うと、もう起きないのでは。と思ってしまっている自分がいた。
何ヶ月経っても、すまない先生は一向に目を開けてくれない。あの快晴のような瞳が見えない。楽しそうに笑う声も、怒る声も、未だ記憶の中でしか聞くことが出来なかった。
エウリは、すまない先生の手をただ握ることしか出来なかった。
「・・・ッ・・・すまない、さん、はやく・・・目を覚ましてください・・・」
エウリの涙が、頬をつたい、すまない先生の頬に落ちた。
「お客様、そろそろ面会終了です」
と、看護師がそう伝えに来た。
「分かりました」
と、エウリは立ち上がった。
「・・・また明日、来ますね。すまないさん」
そうエウリは言い残し、病室のドアをゆっくりしめた。
ゆらり
エウリが持ってきた白い花、鈴蘭がゆらりと揺れた