彼の後を追う様に着いて行けば、俺の憧れだった人がいた。
その鉄で出来た三角を被った彼は、ただじっとどこかを見つめる様に椅子に座っていた。時々組んでいる足を変えるだけの仕草をしているだけで特に何もない。でも俺にはその仕草だけでも惚れ惚れしてしまう。なんて凛々しく逞しいのだろうと…。
「…い。おい、ジョーイ」
「えっ!?」
いけない、彼に夢中ですっかりトラッパーの事を忘れてしまっていた。なんだと聞くと、シャワーを浴びてくると言って向こうの部屋へ行ってしまう。
…まずい、二人きりになってしまった。俺が変にモジモジしていると、三角頭は驚くべき行動をしてきた。
「……」
俺に手を差し伸べて、来いというジェスチャーをした。されるがまま彼に近づくと、すぐ隣には紙とペンが置かれており、それを取ると三角頭はサラサラと何かを書き始め俺に見せてくれた。
-君のことは知っている。-
「え?どういうこと?」
どうして話し掛けてもいない、接点もない俺の事を知ってるんだ?少しゾッとしてしまう…彼が俺の事を知ってくれてるのは大変嬉しい。でもなんだろう、文字に不気味さを覚えてしまう。
-噂、知らないのかい?-
「噂?なんのこと?」
俺、何か噂になってしまう程のことやらかしちまったか?なんだか混乱してきた…もしかして、三角頭は人と話すのに慣れてないから、こんな情報量の足りない文を書いているのだろうか?
だとしたら物凄く健気で可愛すぎる…焦りながら頑張って俺に内容を伝えようと紙に書いてくれている仕草がなお可愛い。
-昨日、ナースとあともう一人大柄な鐘を持った男が私や他のキラーに伝えてくれたのだ。君が、私の様になりたいと。-
「え」
-それは本当かい?-
「ま、まぁ…合ってる」
まさかもうバレてたなんて…恥ずかしすぎて何も言えない。俺がしばらく俯いていると、突然三角頭が立ち上がって俺の方に近づいてきた。
彼の手には大きな鉈が握られている。それを振り回すのに相応しい逞しい腕、服の上からでも分かる胸筋、スリットが入った所からはみ出た脚はしっかりとしていて見惚れてしまう。
いつの間にか背は壁に着いてしまい逃げ場を無くしてしまった。聞こえてくるのはコォォという呼吸音と言っていいのか分からない彼の吐息と俺の心音のみ。
数秒見つめ合った後、突然彼は俺の顔の至る所を触ってきた。耳、首筋、鎖骨…くすぐったくて笑ってしまうと、三角頭は執拗にそこを攻めてきた。
一体何がしたいのか俺には分からないが、彼が楽しいなら存分に付き合ってあげるのが俺の考えだったため止める事は無かった。しばらくして満足したのか三角頭が離れ、また紙に何かを書き始める。
-どうやら噂は本当だったらしい。もしよかったら、君が私の様になるのを手伝わさせてくれ-
「えっ!?今ので分かったのか?じゃなくて、いいのか?」
-もちろんだ。君がいいなら、是非協力させてほしい。-
「い、いいに決まってるじゃねぇか!」
やばい嬉しすぎる…!本人が俺に協力してくれるなんて思っても見なかった!!
しかし、彼の先程の行動は何だったのだろうか…あんなので噂が本当かどうか分かるなんて、やはり見てる世界は違うのだとつくづく感じた俺だった。
-明日の早朝、君の部屋に向かう。準備をして待っていてくれ。-
「わかった!」
俺は上機嫌になりながら部屋から出て行った。明日も彼に会えるなんて!嬉しくて舞い上がってしまう。
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シャワーから出たトラッパーは、浴室からも聞こえていたジョーイの上機嫌な声に興味津々だった。
「随分会話が弾んだみたいだな。」
-嗚呼。ありがとう、トラッパー。筆談という策は私にはなかったよ。お陰で彼とも話すことが出来た。-
そう、元々三角頭は無言でジョーイとコミュニケーションを取ろうとしていたのだ。しかしそれではいけないとトラッパーがこっそりと彼に筆談を提案したという事だ。
「いや、俺は何もしてねぇよ。行動したのはエクセキューショナーの方だろ?」
-君は紳士的だな。-
「そうか?まぁなんでもいいさ。もう寝るが、お前はどうする?」
-儀式に行ってくる。-
「そうか。お前は覚えるのが他のキラーと違って桁外れに速いからな。本来ならまだ教える事が山程ある体でこれから教えて行くはずだったんだが…」
-すまない事をしてしまったな。-
「いや、謝る必要はない。俺も自分の時間が増えてとても嬉しいからな。これからも頑張ってくれ」
-ありがとう、トラッパー。良い夢を-
「嗚呼。儀式頑張れよ」
こくりと頷き、三角頭は部屋を後にした。自身のベッドに腰掛けトラッパーはある事に気づく。
「アイツの方が紳士的じゃねぇか」
三角頭は他のどの男性キラーよりも紳士で謙虚な者だと彼は確信した。
コメント
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最高ですねこの関係性