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獲物を狩るトラ。そのすぐ後ろを、少し距離を置いて歩く“自分”。 彼らが歩く、僕は近くにいる。そういう関係。
「いまの時代の“キツネ気質”ってやつだね」
そう言われれば、きっと僕はそれだろう。主役のすぐ近くにいながら、自分は主役にはならない。けれど、彼らのそばにいるからこそ、世界の物語がよく見える。
人はいま、多くを語るようになった。
でも「語ること」と「物語に仕立てること」は、まったく別の技術だ。 だからこそ、トラたちと歩き続けてきた僕だけが、その近くを物語として求めることができる。
僕は表に出ないと決めていた。
決して姿を見せず、流れだけを見守り、必要なときに少しだけ手助けする。
本来の“後方支援”の役割とは、
「主役のそばで動き、そしてその近くで求めず生きること」
……のはずだった。
けれど、最近どうにも様子がおかしい。
トラたちが、僕にエサを与えすぎるのだ。おかげで僕はすっかり昔のような軽やかに動いていたころの足取りを思い出せない。
そこで、ふと思った。
「じゃあ、僕自身にも僕と同じような存在が居てもいいのかもしれないな」
そしてエサはたくさん。だから沢山居てもいい。
名前はどうしよう。
“ファン”でも“キッズ”でもいいけれど、
もっと柔らかく“チルドレン”なんてどうだろうか。
彼らが僕から学び、僕が求めたものをさらに広げる。そうやって世界の出来事を栄養にしていけば、僕たちはきっと、何もしなくても暮らしていける。
そんなとき、チルドレンからメッセージが届いた。
「大きなニュースです!あの国民的女優さんにスキャンダルが!さっそく“物語”を求めに行きましょう!」
僕は椅子に座り、すぐにキーボードへ手を伸ばした。
今日もまた、トラの背中を見ながら、
僕たちの物語を求めに行く。