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アイラ「紅葉山、見に行かない?」セレン「いいね!」
私たちは、河川敷の広場で気球の準備をしている人と合流した。
男性「アイラお嬢様、準備は整いました」
アイラ「ありがとう」
かごに乗り込み、アイラが操縦を始める。
気球はふわりと浮かび上がった。
セレン「うわ〜、きれい…」
アイラ「ええ、本当に」
ピシッ、パチッ…
セレン「……ねえ、アイラ、バーナーの音が変じゃない?」
その瞬間、穏やかな空気を切り裂く鋭い破裂音が響いた。
パツンッ――!!
白い霧が噴き出し、気球は猛スピードで落下を始めた。
ゴォォォッ!
炎の色が赤から青に変わり、煙が渦を巻いて上空に吸い込まれる。
アイラ「しっかり捕まって!」
セレン「うわ〜!」
噴出したガスは種火に触れ、一瞬でバスケットを火炎が包み込む。
通常ならパニックで飛び降りる場面だが、アイラの目は冷静だった。
加速する気球。状況は最悪だった。
アイラは燃え盛るロープを素手で掴み、気球頂部の排気弁を引き絞った。
火の粉が皮膚に触れるとチリチリと痛むが、魔力が瞬時に傷を塞ぎ、まるで何事もなかったかのように皮膚が蘇る。
火炎の光と煙で、視界が揺れ、周囲の景色が波打つ。足元のバスケットがグラリと傾くたび、心臓が喉まで跳ね上がった。
アイラ「あと10メートル…! 衝撃に備えて!」
アイラの目は一点を見据え、呼吸を整えていた。恐怖よりも、制御の感覚が勝っていた。
私たちは膝を曲げ、バスケットの内壁に身を押し付けた。
――ドォォォォンッ!!
衝撃が去ったあと、しばらく世界は静寂に包まれた。遠くで水面がわずかに揺れる音だけが聞こえる。私は深く息を吸い込み、生きていることを噛み締めた。
着陸の衝撃は通常の何倍も強く、籐(ラタン)のバスケットは粉砕。
私たちの足首からは骨が砕ける嫌な音が響く。
だが、アイラが気球の浮力をギリギリまで制御したおかげで、火炎爆発は免れ、バスケットは横転しながら停止した。
男性「アイラお嬢様! ご無事ですか!」
アイラ「ええ、大丈夫よ」
私はしばらく立ち上がれなかった。
心臓が口から飛び出しそうで、全身が震えていた。でも、魔女としての誇りと生きたいという思いが、私を立たせた。
焦げた匂いと冷たい風がまだ鼻をくすぐる。けれど、私は確かに生きていた。
生きていることが奇跡のように感じられた。
この経験は、私たちの絆と、魔女としての私の力を試すものだった。二度と忘れられない、空の恐怖と生の喜びだった。