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開演
ゆっくりと目を開く。
長い長い、夢を見ていたようだった。
視界がっきりしてくるにつれて、私の頭の混乱が膨らんでいく。
どこだ、ここは。
見知らぬ場所で目が覚めてしまったらしい。
でもどうして?ここは夢?
答えが出ることはなく、疑問ばかりが頭に浮かんでは溜まってゆく。
とにかく、誰か、助けてくれる人を___
「おや?あなたは…。」
その声にハッとして、後ろを振り向く。
そこには、スーツに身を包んだ女性がにっこりと笑ってこちらを見つめていた。
私は彼女に名前を尋ねてみた。
「あぁ、私ですか?以前からお慕いしていたと思うのですが…。改めまして。」
咳払いをした後、彼女は胸に手を当て小さくお辞儀をした。
「私、かわずと申します。よろしくお願いしますね。」
かわず、彼女が言った名前にはまったく聞き覚えがなかった。
「以前お慕いしていた」と彼女、かわずは言っていたけれど、きっと何かの間違いなんじゃなかろうか。
「ようこそ、お越しくださいました! 我が劇場へ!わたくし、この劇場のフロント兼ガイド兼清掃兼オーナーを務めております!」
一息でそう言い終わった彼女は、肩で息をしながら話に手を差し出した。
これは、かなり面倒くさい人に当たったかもしれない。 呼び掛けに応えてしまったことを、少し後悔するのだった。
「では、チケットを拝見。」
かわずは、私に向かって手を差し出す。
チケット?
そんなもの持っていない。やっぱり人違いなんじゃないかな。
何も言えず、オドオドする私にかわずはハッとして「わっ、ごめんなさい!」と謝罪した。
良かった、ようやく気づいてくれた。
早速、彼女に帰る道を___
「失礼いたしました! チケットなら、もう手にお持ちですね!」
彼女は、しょんぼりとした顔から、パッと笑顔になり、私の手から“チケットを受け取った”
どういう訳か、私の手にはキラキラと光るチケットが握られていたのだ。
「それではご案内します。 中へお入りください!」
かわずは、私に手を差し伸べて光り輝く劇場の中へと案内した。
*🎭*
案内されたロビーを見て、思わず息を飲む。
赤色と、金色を基調とした部屋は、絵に書いたような劇場だった。
壁には、過去に上演したものだろうか。いくつかのポスターが掛かっている。
「こちら、ロビーになります。 いつもならお客様はこちらで待機するんですよ。
今回ばかりは特別です。」
そう言って、私にウィンクするかわず。
だいぶ愉快な人らしい。
「では早速、劇場内へ向かいましょう!」
そうして彼女は、踊るような足取りで劇場への扉を潜って行った。
私も少し早足な彼女に置いていかれないように、必死で後を追う。
**
ロビーも十分に美しかったけれど、劇場内はロビーとは比べ物にならないほどに美しかった。
これを作るのにどれだけの費用がかかったんだろう。
かわずは、私の心を読んだかのように、にっこりと笑う。
「えへへ、すごいでしょう?
私の貯金と、この街の住民方の寄付で作られた場所です。この街の人々は皆、演劇を愛していますから。」
寄付…。
実際の住民たちに合わずとも、この劇場を見れば彼、彼女らがどれだけ演劇を愛しているか十分に伝わってしまう。
それだけ美しい空間だ。
ロビーのような黄金の装飾はなく、深い赤色のカーペットと、暖かい木材で構成された空間だけど、ロビーの何十倍も美しく見えた。
「お席は…こちらでいいですかね? 良く見えます?」
私は小さく頷いた。
「それは良かったです! それでは開演まで、今しばらくお待ちくださいませ!」
そう言うと、かわずは駆け足で立ち去ってしまった。
【続く】
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開演をお待ちして頂いているところ、申し訳ありません。
皆様お久しぶりです、Kawazuと申します!
これならしっくり来ますかね…?
もしかして、忘れられてます?!そんなまさか?!
開演を待つ間、少々退屈かと思いますので、私からささやかな贈り物を…。
📕
パンフレットです!劇場にはパンフレットが付き物でしょう?
ではもうまもなく開演です!
上演中は、大きな音、強い光が厳禁ですので、携帯電話の電源を切って、小さなお子様からは目を離さないようお願い申し上げます。
あと、座席の移動は禁止ですよ!
それでは、楽しんで! また、休憩時間にお会いしましょう!