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「本当に何もいない…」
一階を粗方探索し終えたイッサが言う。
「もしかしてもういないとか?」
「いや、それは無いだろうな。」
楽観的に言うまんじゅうに対し、鼬が冷静に答える。
「どこかに潜んでいるはずだ。」
「妙に静かだ。」
「嵐の前の静けさ、と言うべきでしょう。恐らく、5体以上の異形が潜んでいる可能性が高いです。」
いぬいぬこと 11 も4階の廊下を進み、少し開けた広場のような場所についた。
ドゴォッ
「何!?」
前と後ろ、両方の廊下が爆煙によって封じられている。
「前方、後方より敵影接近!」
「挟まれたかッー!」
爆煙の中からうごめく異形の影が次々と姿を現す。長い手足を持つもの、甲殻に覆われた巨体を持つもの、それぞれ異なる姿だが、共通して狂気じみた眼光を放っている。
「数は……1、2、3……7体です!」
いぬいぬこは咄嗟に腰に挿した太刀を抜刀する。イッサが錬金術で作り出した物だ。
「数が多すぎる、正面からの3体を突破して逃げる!後ろの4体は無視だ!」
「作戦、了解」
11 も背中に背負った大斧を軽々しく構える。
「やってやる、殺ってやるよこの位ッー!」
いぬいぬこと 11 はタイミングを合わせ、勢いよく突撃していった。
同刻、一階。
ドゴォッ
「何!?」
「上からだッ――」
上階から響く凄まじい轟音と衝撃に大きく動揺する。
「いぬいぬこ、 11 ッ!」
まんじゅうが上の階へ向かおうと走り出したその時、
「おいっ!待て―――」
曲がり角から異形が姿を現した。その数4体。
「くそっ……どうすれば!?」
まんじゅうが双剣を構えながらイッサに向かって叫ぶ。
「落ち着いて!」
イッサは周囲を見渡しながら鋭く指示を飛ばす。
「一度後退して敵を狭い場所に誘導するわ!それに、この子たち相手に真正面から挑むのは無謀よ!」
そう言ってイッサは腰のベルトから一本の瓶を取り出し、異形の足元に向かってぶん投げた。
床に叩きつけられ、割れた瓶から流れ出た液体は一瞬まばゆく光を放ち…
ズドォォォン
「うわぁぁぁぁぁあ!?」
「うおッ!!?」
まんじゅうと鼬は予想外の爆破と衝撃に驚きながらも、イッサの背中を追って裏口付近まで走った。
11 は軽々しく大斧を振り回し、異形を一体両断した。
「すげぇなッ流石ロボッ娘ー!」
などと言いながらいぬいぬこも太刀で異形の頭部を貫き、そのままの下に切り捨てる。
「あと一体です。畳み掛けましょう。」
「OKー!」
ズバッ
綺麗に二人の交差切りがきまった。
「ふぅ…あとは逃げる!」
いぬいぬこと11は、背後に異形の接近を感じながらも廊下を駆け抜ける。
「ちょっと待て!」
いぬいぬこが足を止め、前方を見据える。
そこには、さらに大きな異形――甲殻に包まれた巨大な四足の獣が立ち塞がっていた。
「また新手かよ!しかもデカすぎるだろ!」
11は冷静に分析を始める。
「甲殻を持っています。先ほどの異形より格段に厄介と思われますが、局所を狙えば突破可能と判断します。」
「局所って、そんなの狙う暇があるかっての!」
いぬいぬこは頭を掻きながら、次の瞬間には戦闘態勢に入る。
が、大型の異形が突然床に強烈な打撃を叩き込んだ。
「マズいっ!床がー!!」
床が崩れ落ち一階まで吹き抜けになりかけている。
「いぬいぬこ、私に掴まってください。」
焦るいぬいぬこに 11 はそう指示をし、いぬいぬこの腕を掴んで凄い力で引き寄せる。
「うわッーちょ、どうするつもりだ!」
「本機は戦闘用の人造ユニットです。生身の人体よりも耐久性は優れます。」
ドッガシャーッ
鈍い痛みが全身を襲う。 11 は、一階を探索していたみんなは無事だろうか。
全身が痛く、視界もぼやけている。しばらく動けそうにもない。