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「ところで…何すんの?」
レイカ「アオハル!」
「だから…その「アオハル」で何すんの?」
レイカ「えっとねー!夏祭り!」
「地区の夏祭りならもう終わってるけど」
レイカ「なら勉強会!」
「それって青春なの…?」
レイカ「海行く!」
「私泳げない」
レイカ「文句ばっかだな!君は!」
「仕方ないじゃん、祭り終わってるし勉強会はただの課題地獄だし泳げないんだし…」
レイカ「ど~しよ~!」
どうにかしないと私の耳が終わる。その危機を感じスマホで調べてみる。
「…あっ」
レイカ「なに!?」
「これ見て」
【伝統!AB町なつまつり!】
【毎年恒例の夏祭りが今年もやって来た!
去年はできなかったいくつもの屋台が登場!!】
レイカ「ねぇねぇるうちゃちゃ!これ行こ!ねぇこれ行こ!」
レイカはまるで付き合いたての面倒な彼女のように腕に巻き付いてきた。ただでさえ暑いのに抱きついてくるせいで更に暑い。
「邪魔なんだけど…暑い。」
レイカ「一緒に行くって言うまではなさーん!」
「わかったわかった…行くから離して、ただひたすら暑いから」
レイカ「やったぁ!」
私達は高校生だと言うのに小学生、もしくは幼稚園生のようにはしゃぐ。その元気はいったいどこから沸いてくるのだろうか。こんな癖もあるがクラスのムードメーカーにでもなれそうな人なのだから友達の一人や二人いるような気もする。会って数分の私より友人に頼んだ方が断然良い気がするが、なにか事情があるのだろう。そんなことを頭のすみで考えながら詳しく見る。
「あれ…でもここかなり遠いみたい」
レイカ「えぇー!?」
「多分行って遊んで帰ってくると真夜中になるね」
レイカ「う~ん…それじゃお泊まり会しよ!」
「二人で?」
レイカ「うん!」
「…まぁいっか…」
もう首を突っ込むの早めよう。私が疲れるだけで誰も幸せにならない。私の友人を呼ぼうとも考えたが、人付き合いが嫌いで話し掛けられたら返す、話すことを強要されたら話すぐらいの私には友達と言う友達はいない。何だか言ってて虚しさが襲ってきた。
「スケジュールとか早めに決めたい?」
レイカ「うん!」
「予定は?」
レイカ「空きまくってる!」
「なら私の家きて」
レイカ「もしかして…おうちデートに誘われてる!?」
「予定立てるんだよバカ」
レイカ「ちぇっ…」
レイカ「でも予定立てるとか楽しそう!」
都合よく口うるさい家族は今ハワイへ旅行中だ。あの人達だから私が勝手に家を留守にしても何とも言わないだろう。
レイカ「わ―!ひろーい!!!」
「そんなにはしゃぐ?」
レイカ「私のいるところってでっかいけどね?私の部屋はすごーい狭いの!」
おそらくアパートに住んでいるのだろう。アパート住みの人からとって一軒家はかなり大きいのだ。
実際私の家はその中でも広い方で今は、というより普段家族がいることがないから余計に広く感じる。
「お菓子とか持ってくるからそこ座ってて」
人を呼んだりもしないから余り中身のないお菓子箱を取りだし、ずっとキョロキョロしているレイカを見ながらジュースを注ぐ。
「そんなに珍しい?」
レイカ「私の住んでるところはねー?すごい騒がしいの。そしてみ~んなすごい優しいの!…たまに酷い子もいるけどね…あと遊ぶものとかそんな無いからつまんない!」
「ゲームとか買えば良いじゃん」
レイカ「皆と共有なんだよね~…」
「共有?」
もしかして施設に住んでいるのだろうか。親の関係で施設に住む人は案外いたりする。
ただ、人の諸事情だから深く関わるのはよくない。そして私は考えるのをやめた。
「まず行くのに乗るバスなんだけど…」
~話は順調に進み、雑談も多く含んだせいか空は紅葉のようなオレンジ色に染まっていた。
レイカ「じゃあ大体決まったかな?」
「うん、また明日の8時に」
レイカ「ばいばーいるうちゃちゃ!!」
夕暮れ時で、少しずつ暑さも引いてきた。
私は明日の持ち物と予定を確認し、寝かせる気のないセミの音を聴きながらそっと目を閉じた。
~翌日~
『ピンポーン!』
「はーい」
時刻は7時50分、レイカが来るにはまだ早い時間のようにも思える。
『ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!』
訂正する。この連打をするバカはレイカと考えて良いだろう。
「今行くから…」
レイカ「やぁるうちゃちゃ!楽しみすぎて早くきちゃった!ごめんね?」
ドアを開けると案の定レイカがいた。よほど楽しみにしていたのかうっすらと隈が見える。
「大丈夫?荷物持った?」
レイカ「あったり前よ!」
「後で「着替え忘れちゃったー!(裏声)」何て言われても困るからね?」
レイカ「えまってるうちゃちゃってそんな裏声出せたの???」
「今はそこいいでしょ…」
私達は下らないことをしゃべりしながら駅まで歩いた。昨日の夜、ドキドキと心配で寝られなかったこと。結局私もなんやかんやで即効用意をしたこと。用意した弁当とか、とてつもなく下らなかったけど、同時にとてつもなく幸せに感じた。