テラーノベル
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夏休みは最高だ。好きなだけ寝れるし、のんびりできる。
時計の短針が十一を指しても、ベッドの中でごろごろとしていた。
心地よくて二度寝してしまいそう。
考えないといけないことはたくさんあるのに、強烈な眠気が……
「わっ!」
突然スマホが私の枕の横で大きく振動した。
で、電話……?
「え……」
表示されている名前に驚く。通話の文字をスライドさせてスマホを耳に当てた。
「あ、もしもし? せんぱい?」
「実里くん、どうしたの?」
会話をしながらベッドから起き上がる。寝起きのせいか体が重たい。
「今から家に行ってもいい?」
実里くんの柔らかい声が、電話越しに私に囁くように聞こえた。
「え? 何? い、今? えっと、いいけど」
まずい。早く準備をしないと。顔すら洗っていないのに。
「あと二十分くらいで着くから、準備しておいてね? せんぱいっ」
動揺する私に対して楽しげに実里くんは言うと電話を切った。
虚しく響く通話終了の音に聞き入り、呆然と床を見つめる。
実里くんが家に来るっ!?
「か、顔洗わないと! 着替えも! ああ、片付けもしなきゃ!」
やるべきことが頭の中でぐるんぐるんと回りだす。スイッチが入ったように大慌てで洗面所へ駆け込んだ。
***
約二十分後、目の前には二ッコニコの笑顔の実里くん。
少し外で待ってもらってしまったけれど、なんとか準備は間に合った。
「おじゃましまーす」
「どうぞ」
実里くんを部屋に案内して冷蔵庫で冷やしていた麦茶をいれる。目の前に座っている実里くんの様子は普段と変わらないので、潤たちと揉め事があったわけではなさそう。
どうしていきなりうちに来たんだろう。何か事情があるのかな。
「せんぱい」
麦茶を一口飲んだ実里くんが、私に視線を向けてきた。
「俺の暗闇克服につき合ってくれない?」
「え?」
「まぁ、すぐには無理だろうけどさ。コレ持ってきた」
そう言って実里くんが袋から箱を出した。
「……星?」
その箱には夜空の写真が印刷されていて、大きな文字で部屋用プラネタリウムと書いてあった。
「そう。これならいけそうかなーって」
そっか。実里くんは、これを試すために私の家に来たんだ。
「それにさ……ましろせんぱいとなら平気かもしれないって思ったんだよね」
「どうして?」
実里くんが砂糖菓子のように甘く、優しげに微笑む。最初はからかってくるだけだった実里くんが、私にこんな顔を見せてくれるようになってくれたのが嬉しい。実里くんが頼ってくれるなら、私の精一杯で手伝いたいな。
「せんぱいは救世主だからだよ」
「え……私?」
「そうだよ。だから、一緒に星観てくれる?」
「うん!」
そういってもらえるのは、なんだか照れくさいけど嬉しい。それに実里くんの場合、潤には素直に手伝ってなんて言えないからこそ私のところに来てくれたんだろうな。
早速星を観ることになり、カーテンを閉める。
それだけでは部屋が明るいため、掛け布団をふたりで被る。
そしてプラネタリウムの機械のスイッチをいれた。
「実里くん、大丈夫?」
「……うん」
声が強張っていて、実里くんが不安そうなのがわかる。
いくら星の光があっても暗いことにはかわりないし、今までずっと苦しめられてきた記憶がすんなり消えるわけもない。
「やっぱ……ちょっと怖い……」
「もう少し落ち着いてからにする?」
「んーん、平気。せんぱい……手離さないでね?」
「うん、離さないよ。傍にいるからね」
「ありがと」
安心させるために実里くんの手を強く握った。
少しでも彼が抱いている恐怖をなくしてあげたい。繋いだ手から実里くんの恐怖や不安が私の方に流れ込んで、痛みを半分こできたらいいのに。
「大丈夫?」
「うん……もう少し、頑張る」
微かにだけど手が震えている。どうにかして不安や恐怖を少しでも拭えないかな。
「あ!ほら、見て……すごく綺麗だよ」
無数の星が、掛け布団の中で煌く。偽物でも綺麗なことには変わりない。
……不思議。全く別の空間にいるみたい。とても部屋の中だとは思えない。
吸込まれそう。
「人工的なものでも星ってこんなに綺麗なんだ」
隣の実里くんの声が先程よりも少し落ち着いて聞こえる。
実里くんはあの出来事があってから星空をちゃんと見たことなかったんだろうな。
きっと夜は怖いってことが先に頭にあって、星を見ている余裕なんてなかったんだと思う。
「俺さ……あの日、せんぱいが一緒でよかった。きっとひとりだったら、怖くてしばらく動けなかったと思う」
私の手を握る力がぎゅっと強められる。
「それに潤とも……前よりは話をするようになったんだ」
「そっか……よかった」
「せんぱい、ありがとね」
きっと実里くんも潤も不器用で、本当はお互いが大事なのに上手く歩み寄れなかっただけだ。
実里くんの過去はすぐには乗り越えられないほど大きなことでも、少しずつ二人が歩み寄っていけることの後押しが私にできるならしていきたい。
実里くんだって本当は潤の気持ちに気づいていると思う。
閉じ込められた日、一目散に駆け寄ってきたのは潤だった。潤は誰よりも実里くんの幸せを祈っていて、大切に思っている。
「実里くんの力になれていたならすごく嬉しい」
「……うん」
「あのね! 私も家のことで実里くんたちに助けてもらったし、すごく感謝してる。だからその、これからも傍にいさせてね。私にできることがあれば力にならせて!」
突然のことだった。
実里くんに腕を引っ張られ、掛け布団が外される。
「み、実里くんっ!?」
「……」
私を押し倒すような体制で上に実里くんがいて、目を見開く。
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みいちゃん