「………」
涼太は泣かない…
「怖いよー!」
列を作って注射の順番を待つ間…
すでに翔太は恐怖に震えて泣いていたのに
「翔太、すぐ終わるから大丈夫…」
涼太は全く泣かなかった
◇◆◇◆
「先生、涼太君が転んじゃったー!」
号泣しながら伝えに来た翔太…
驚いた先生が救急箱を持って、駆けつけるが
「………」
躓いた翔太を庇って転んだ涼太は、膝から血が出ていたのにも関わらず…全く泣かない
誰もが、涼太の事を強い子供だと誉め…翔太も、そんな彼の事を自分の事の様に誇らしく思っていた
◇◆◇◆
ある日…帰りの会も終わり、後はお迎えが来て帰るだけとなった時…
2人の事を迎えに来た母親達と先生が、何やら話し込んでいるのが見えた
「そうなんですね…寂しくなるなぁ…」
「涼太も翔太君と仲が良いから寂しがるかも…」
そこで涼太君はピンと来た
『大変だ!翔太が何処かへ居なくなっちゃう!』
慌てて涼太は翔太に駆け寄り
「ねぇ翔太!翔太は何処かへ行っちゃうの?」
不安そうにそう聞くと
「うん。僕、ママと遠くへ行くんだよ」
何故か嬉しそうに教えてくれた
「………」
大好きな翔太と離れ離れになってしまう…涼太の小さな頭の中が不安で一杯になってしまい
「ママー!俺、翔太と別れたくない!!」
母親に走り寄って、しがみ付いて泣いてしまう
「えっ…ちょっと涼太!」
突然の出来事に、周りが騒然となる
「涼太君…」
先程まで笑っていた翔太も、そんな涼太を見て自分のママに泣きながら抱き付いた
「ママ!僕も涼太君と離れたくない!」
2人の泣き声が園内に響き渡る
「………」
そんな様子に2人の母親が、顔を見合わせ困っていた
「翔太、仕方ないでしょ…3日だけだから、ねっ」
慰めながら説得してみるが、泣いて興奮しているせいで聞く耳持たない
たった3日…
田舎に住む翔太の母親の友人が引っ越しをする為、そのお手伝いをしに行くという
その間、翔太の送り迎えが出来なくなる為…翔太も一緒にと言う事になったらしい…
「嫌だ!ママ!涼太君と一緒にいるのー!」
「ねぇ!お願い!翔太を連れて行かないでー!」
2人は、その後もしばらく泣き止まず…
結局、母親が家を空けているその間…翔太は涼太の家に、お泊まりする事となりました。
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