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羽海汐遠
11,729
#創作BL
灯依
590
ㅤ⠀ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ㅤㅤㅤㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀流
1枚のコインを握り締め
ふらふらと歩き続けて3時間くらい経った 。
行く宛もなく 、何も考えずに進んでいると
いつの間にか海に着いていた 。
結生さんと出逢ったあの場所に 。
あれから結生さんとは一度も会うこともなければ 、話すこともなく今日になってしまった 。
約束を破ったまま謝れていないせいで
ずっと申し訳なさを消費出来ずにいた 。
ただ、今は頭が働かず
思考が水底に沈んだまま 、波際まで来ていた 。
ここに立ち 、広い海を眺めて1番に思ったことは
「 … 鯨 。 」
もしかすると 、今この海を泳いでいるかもしれない 。
行けば 、会えるかもしれない 。
一度思いついてしまうと 、もう留まることは出来なかった 。
「 僕も 、泳げるかなあ …! 」
そう口に出すと同時に 、僕は走り出していた 。
足が水に浸かった途端 、一気にスピードが落ちるのに反して 、僕の気持ちは高まっていった 。
身体を思い切り動かすと 、今まで動いていなかった反動ですぐに息が上がってしまう 。
それでもそんなことがどうでも良くなってしまう程に
僕は幸せを感じていた 。
体が胸部まで浸かった時
まるで僕の心情を表しているような波が
一瞬で僕を覆い隠した 。
ㅤ⠀
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎結
ルカとの約束から2週間が経った 。
いい加減諦めようと考えていた土曜日の朝
何故かいつもより早く起きてしまった 。
家族も全員眠りについていて
薄暗く静かだった 。
寝ぼけ眼を擦りながらリビングへ入り 、身体を起こす代わりにテレビをつける 。
最初についたのはニュースだった 。
そこに報道されていたのは
━━━ 速報です 。昨夜〇〇海の海岸で遺体が発見されました 。身元を調べたところ 、
藤田 流枯くん 14歳 ということが判明しました 。警察は ━━━
ルカだった 。
目の前に流れている映像が信じられず 、ただ立ち尽くしてテレビを見つめることしか出来なかった 。
その速報が終わって
しばらくして我に返る 。
1番に思い立ったのは 、あの海だった 。
⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀⠀ ㅤ⠀⠀
ㅤ⠀ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ 流
波にのまれた瞬間死を覚悟した 。
やはり僕が泳ぐなんて出来ず 、行き過ぎた思い込みだったことを後悔する 。
まだ結生さんに会えてない 。
まだ結生さんに謝れてない 。
まだ結生さんに話してない 。
名前の漢字 。
結生さんが自分の名前を説明してくれた時
初めて笑顔を見た 。
あまりに幸せそうに説明する姿を見て 、何故かこっちまで嬉しくなれた 。
それだけ自分の名前に誇りを持っているんだろうと
温かい気持ちになったが 、
自分の番になった途端 、その温かさはすぐに消えた 。
流れて枯れると書いて流枯 。
まるで僕の終わり方を予知していたかの様な名前に苦笑することしか出来ない 。
こんなに汚い名前を 、説明出来る筈がなかった 。
結生さん 、ごめんね 。
ちゃんと説明出来なくて 。
ちゃんと謝ることだ出来ずに終わっちゃって 。
「 結生さん … 」
聞こえない声で 、貴方を呼んだ 。
ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ㅤ⠀ㅤ⠀ㅤㅤ 結
速報が終わって三分後
ようやく我に返った時 、 私は家を飛び出していた 。
何も考えられずただ足を動かした 。
疲れなんて感じる暇もない程に
流枯のことしか考えられなかった 。
流枯 。
どうして死んでしまったんだろう 。
私に何も言わずに
それほど流枯にとって私は小さい人間だった?
生きる意味にはなれなかった?
流枯が苦しんでいることは 、話を聞いて気付いていた 。
なのに私は見てみる振りをして 、ただ話を聞くしかできなくて 。
助けることなんて出来なかった 。
私には流枯の抱える悩みを解決出来る程の能力も才能もないから 。
それでもそんな流枯を見て 、死んじゃダメだと思った 。
流枯をおいて死ぬなんて私には出来なかった 。
流枯が居なくなった今 、沢山の後悔が襲ってくる 。
もっと話しておけばよかった 。
もっと話しを聞けばよかった 。
もっと 、もっと 。
今更なのに気付いたところで
涙が止まることはなかった 。
流枯 、ごめんね 。
流枯から見た私は 、愛想も悪くて
その癖嫌味みたいに自分の前を言ってしまった 。
なんて恥ずかしい人間なんだ 。
もうどうにもならないことを考えながら 、我武者羅に走った 。
「 流枯 、流枯 … るか 、っ! 」
沢山名前を呼んだ 。
返事を待った 。
二度と返ってくることのない返事を 。
ようやく海に着いて足を止めた時
一気に疲労に襲われた 。
必死に呼吸を落ち着かせようとしながら足を運ぶ 。
波際まで辿り着いて気付く 。
ここに流枯は居ない 。
ここから流れて消えたんだった 。
私の見つけた唯一の光 。
その光が死んだ時 、私の中は真っ暗で 、死んだも同然だった 。
もう一度 、光を取り戻したい 。
「 流枯に会えれば … 。」
流枯に会うには 。
方法はひとつしか思い付かなかった 。
足を沈め 、波に身を委ねる 。
そして鯨に会いにいく 。
きっと流枯もこうしたはずだ 。
これでやっと流枯に逢える 。
やっと謝れる 。
流枯 、待ってて 。
「 流枯 … 。」
泡となって消える音で 、貴方を呼んだ 。
fin .
短い様で長い 、長い様で短い物語を最後まで読んで下さりありがとうございました ⋆.✩
ずっと書きたいと思っていた題材 、題名だったので完結できて良かった!!
頑張って書いたので沢山の♡+💬待ってますꕀ꙳
コメント
8件
溺れ死ぬのって絶対苦しくて絶対こんな冷静でいられないのに尚その辛さを見せないのが狂った愛すぎてどうしようって感じですほんとなにこれ 鯨罪深すぎんか??????
流枯でるかなんだね 波に飲まれて流れて死んで枯れてるのさすがにえぐすぎてスクロールする手が止まりました 2人共環境が辛すぎるしエンドも辛かったですでもなんか幸せそうでぼれは複雑です