テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第三話「ホテルZにて」
「ここか…」
私の目の前には、ホテルZがある。
私とカラスバさん以外にも、記憶を持っている人がいないかを確かめに来た。
なぜホテルZなのかって?
それは、本来のストーリーでも重要な場所だからだ。
重要な場所なら、何かあるかもって、思ったんだ。
「ごめんくださーい…」
中に入っても、誰もいなかった。
「すみませーん、誰かいらっしゃいますかー?」
すると、カウンターの奥から大きな男の人と、小さなポケモンが出てきた。
「きゅる?」
小さなポケモン…フラエッテが不思議そうに鳴く。
「…!君は…」
大きな男の人…AZさんが何かに気づいたようにつぶやいた。
「…記憶を持つ者か」
「え、何で知って…」
「私も、時が戻る前の記憶を持っているのだ。そして…サビ組の彼もだろう?」
ほんとに、なんでそこまで知ってるんだろう?私たちは、他に記憶を持っている人が
誰かなんて、知らなかったのに…
「話がしたい。彼を呼んでくれないか」
「あ、わかりました…」
私は、カラスバさんに電話をかけた。
「何でオレが行かなならへんねん…そっちが来いや…」
「いや、AZさんもあまり動けないから、仕方ないですよ…」
「そうやけど…」
文句をぶつぶつ言いながら来たカラスバさんは、ふと気づいて、言った。
「エムゼット団のやつらは、どこ行ったんや?」
「皆、それぞれで暴走メガシンカを鎮めに行った。
…本来、いるはずだった少女はいないが」
その言葉を聞いて、一瞬固まる。
そんな私を横目に、カラスバさんはAZさんに聞いた。
「で、話したいことって、何や?」
AZさんは、私たちにしっかり向き直り、言った。
「今、この世界の現状と、これからの対策についてだ。まず…私のことを話そう」
そう言って、AZさんは静かに語り出した。
「私は…タワー騒動の後、一度死んでいたはずなのだが、
気がつけばこのカウンターに立っていたのだ。私もはじめはかなり混乱していたよ」
AZさんはフラエッテに目線を向ける。
「しかし、フラエッテだけはすでにすべてを理解していたようで、
それを私に伝えてくれた。そのおかげで、わたしも落ち着くことができた」
「…きゅるる」
フラエッテがそうだよ、と言うように鳴いた。
「じゃあ、フラエッテはオレらのことも知ってたってことやんな」
AZさんはうなずき、続けた。
「フラエッテから、記憶を持つ者は他にもいると伝えられ、
その者を探しに行きたい気持ちもあったのだが、なんせこんな体だ、
探しになど行けるわけもなかった。そうやって悩んでいるところに、
君がやってきたというわけなのだ」
「…不思議なこともあるもんやな」
カラスバがそう呟く。
「次に、君たちのことについて聞こう。まず…」
「あ、ミラです」
「ミラ」
「は、はい」
「君は、どこから来たのだ?」
私は、一瞬考えてから、言った。
「私は…別の世界から来たみたいなんです。朝起きたら、この世界にいて…
戻る方法もわかりません」
ほかにも、詳しいことを話した。
「そうか…ジカルデが、呼び寄せたりしたのだろうか…?」
AZさんが、今度はカラスバさんの方を向く。
「次に…君」
「カラスバや」
「カラスバ。君は、どういう状況だったのだ?」
「ミラとは違って、時が戻ったってのが、オレの感覚やな。
タワーの暴走をたしかに鎮めた記憶はある」
「…私と同じような状況だったのだな」
「そういえば、ガイたちは記憶を持ってたりはしなかったんですか?」
「ああ…わたしたち以外で、記憶を持つ者はいないようだ」
本当に、どうしてこんなに不思議な状況になっているのだろうか?
こうなったことに、何か意味はあるのだろうか…?
話を聞いている間、私はずっとそう考えていた。
「君たちの話から、この世界の時が戻っているというのは確実だろう。
なぜ、ミラがこちらの世界に来てしまったのかは分からないが」
AZさんは、突然深刻そうな顔をした。
「そして…今のこの世界は、時が戻る前の世界とは少し違う進み方をしている。
…どこかで、何かがゆがんでしまったように」
「歪んだ…?」
カラスバが聞き返す。
「それって…あ」
私も一緒に聞き返しかけたが、やめた。
もう、この場にいる全員が薄々気が付き始めているかもしれない。
その歪みは…私、ミラだろう、ということに。
ぴかわど
258
217
360
コメント
3件
一度読んだ後でもまたワクワクできて好き。久しぶりだからっていうのもあると思うけど、
第3話、読み終えました……!AZさんも記憶を持ってたんですね、しかもフラエッテが全部理解してるっていうのが可愛くて切ない……。それに「歪みはミラ」っていう終盤の流れ、胸がぎゅっとなりました。自分の存在が世界の違和そのものかもって気づく瞬間、すごく重くてでも目が離せなかったです。続きが気になります……!