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#創作
ゆずき
246
160
耀聖(ようせい)
725
#ロマンスファンタジー
花月夜れん
456
. .。 .:・.。. .。.:・
【メビウスビル社長室】
「そうか!目覚めたか!」
文也からの吉報の電話に、思わず涙が込み上げてきた宗一郎が立ち上がった、その後ろで事務仕事をしていた真希も涙を溜めてティッシュの箱を宗一郎に手渡した
「ありがとう」
真紀に背中を向けたまま、肩を震わせている宗一郎がぶっきらぼうに言い、真紀にスマホを渡して、そのまま窓の隅に歩いていった
今は一人にした方が良いと思った真希は、宗一郎の代わりに文也の電話に出た
「もしもし?文也君?ジェニさんは・・・どうしてる?うん・・・うん・・・」
真希が電話を切った後、目を赤くして少し落ち着いた宗一郎がやってきて、照れくさそうに聞いた
「・・・元気なのか?」
部屋をウロウロしながら言う、どうやら嬉しくて落ち着いていられないみたいだ、真希はうなずいた
「さっき軽い流動食を食べたんですって、でもまだ、これから沢山検査して・・・場合によっては肺の蘇生手術をしないといけないらしいけど・・・」
真希がノートパソコンのスケジュールを確認している
「回復していくんだな?」
希望に満ちた声で宗一郎は言った、雨雲からようやく、日差しが自分に射したような顔をしている
「私達は明日行けばいいわ、今は二人っきりにしてあげましょう」
すると真紀の携帯がけたたましく鳴った
「もしもし?藤子さん?今出先なの?ええ!そうですよ、竜馬さんが意識を取り戻しました!」
そう言って真希が藤子と嬉しい報告話に盛り上がっている、とにかくよかったと宗一郎も安堵して、コーヒースタンドからカップに注いだ
そこで気が付いた、カップを持つ手が震えている、真希も会話の途中、思わず声が詰まる時が何度かあったが、今は嬉しそうにケラケラ笑いながら話している
クスクス・・・「ええ・・・そうみたい、文也君いわく、ジェニさんが大騒ぎして守護神のように竜馬さんに張り付ているみたいなんですって」
フッ・・・「想像できるな・・・」
真希の藤子との会話のこぼれ話を聞きながら、宗一郎は微笑み熱いコーヒーを啜った
. .。 .:・.。. .。.:・
「検査お疲れ様!」
ストレッチャーから看護婦さんの手を借りて、ゴロンと寝返りを打って、竜馬がベッドに移動する様子を、ジェニはハラハラと見守った
長い時間がかかった検査で竜馬の体力がひどく消耗されているのがわかる、今はひどく疲れて仰向けに寝転がって、ハァハァ言っている
引き締まった体を手術着に包み、手足と右の頬は火傷の保護シートをべたべた張り付けられている、そんな竜馬を見て、ジェニは心配でたまらない
「汗をかいているでしょ?お着変えする?病院用の術着なんて、もう見たくもないでしょう?」
ジェニはいそいそとシルクのパジャマと真新しいボクサーブリーフを紙袋から取り出した、竜馬が起きたら着せてあげようと、沢山用意しておいたものだ
彼が目覚めるのを待つには、あまりにも長い沢山の準備時間があった、ジェニは竜馬の掛け布団をめくり、体に手を伸ばして合わせ目の紐をほどこうとした
そこで竜馬の異変に気付き手を止めた、彼はジェニを見つめ・・・頬が赤くなってる
「ちょっと・・・部屋を出ててくれる?自分でやるよ・・・」
竜馬がもじもじして言う
「まぁ・・・構わないわよ!一人ではまだ難しいでしょう?」
ジェニも頬が火照るのを感じた
「私達夫婦ですもの・・・」
そう言って婚約指輪が見えるようにした、なんだか息苦しくて下を向いた
「少なくとも私はそう思っている・・・」
不安な気持ちがよぎる、彼は違うのだろうか・・・ジェニの薬指には婚約指輪が光っている、なぜか二人は恥じらいと親しみを感じて、戸惑っていた
竜馬はそっとジェニの手を取り、小さなダイヤが散りばめられているルビーの婚約指輪を親指と人差し指で軽く摘まんだ
「外したことないの」
思わすジェニが囁いた、返してくれと言われても返す気などさらさらなかった、この指輪はもうジェニの一部だ、なくなったら変な違和感に襲われるだろう
彼は長い間じっとジェニを見つめていた、そして花が咲きほころぶ様な笑顔を見せて言った
「着替えを手伝ってくれるかな・・・奥さん」
ジェニは切なくて心臓が痛かった
ああ・・・また涙が出そう
彼の傍で彼のお世話が出来る事が嬉しくてたまらない、ジェニはいそいそと竜馬の術着の前をはだけた、そして息を飲んだ
―なんてひどい・・・―
術着の下は全裸だった、彼の美しい体がどこもかしこも火傷の水ぶくれ後だらけで、変色している
改めて事故の恐ろしさに身が震える、よく無事でいてくれた、体のあちこちに火傷の保護シートが貼られ、まるでつぎはぎされているフランケンシュタインだ
あまりの酷さにジェニが言葉を失った、本当に彼が意識を取り戻してくれてよかった
―生きているだけで奇跡の人―
ジェニは彼を生かしめるすべてのものに感謝した
. .。 .:・.。. .。.:・
竜馬が意識を回復した後、ようやくICUからVIPルームの一つである個人用病室に移動することができた、部屋にはクリーム色と薄緑色の壁紙が貼られ、装飾が施された上等の姿鏡に、大型の壁掛けテレビがかかっている
そして、今そこではベッドで寝ている竜馬とジェニとの熾烈なにらみ合いが勃発していた
ジェニが言う
「今まで看護婦さんがやってたのを全部見てるから大丈夫だっていってるじゃない、さぁ!遠慮しないでやってちょうだい、竜馬さん!」
竜馬が眉に皺を寄せて、これまたジェニを睨む
「いや本当にそれはいい、頼むから看護婦さんを呼んでくれ、僕にもプライドというものがあるんだ、可愛い彼女にそんなことは絶対させられないっ!!」
脅しが聞かないとわかったジェニは、今度は泣き落とし戦法に走った、みるみる間にジェニの瞳が涙でうるむ
ヒック・・・「だって・・・ずっと動かないあなたを三週間もじっと見てたのよ・・・沢山水分とって沢山出してくださいって先生も言ってたじゃない・・・どうして私にお手伝いさせてくれないの・・・」
―うっ・・・―
くすんくすん泣くジェニを竜馬は困った顔でじっと見つめた
―数分後―
バタンッ「これトイレに流してくる~(嬉)」
竜馬の尿がたっぷり入った尿瓶を持って、意気揚々とジェニがスキップしてトイレに向かう、一方、竜馬は横向けにクの字にベッドに横たえ、両手で顔を覆って、恥ずかしさに全身を真っ赤に染め上げていた
ジェニが泊まり込みで傍にいてくれるのは嬉しいが、そのおかげで動けない竜馬には、まったく尊重するべくプライバシーがなくなった
明日ジェニが仕事に行っている間に、何がなんでも一人でトイレに行けるように起き上がって訓練しなくてはと竜馬は固く決心した
出来ればジェニがいる間に(大)だけは絶対催したくない、この勢いならジェニは絶対自分が介助すると言い張るに決まっている、そしてあの強情な瞳で睨まれたら・・・竜馬は何でもジェニの言うことを聞いてしまうのだ
ああ・・・「いってらっしゃいのキス」を忘れて彼女に学校から呼び出された時を思い出す
彼女の「強情」は、今に始まったことではない、こうと一度決めたら絶対意思を曲げない
こういうわけで、お節介にもお世話したがり屋のジェニのおかげで、竜馬は自立心を煽られ、模範患者となって気力でどんどん回復していった
それでも肺の手術を一度受けて右耳の聴覚検査では何度か引っかかった、耳鼻科医は耳の鼓膜の蘇生手術はもう少し待ってみて自然に回復出来たら手術はしなくてもよいだろうと判断し、要経過観察になった
そして退院の日
「あのブラックバスを捕り逃がしたのだけが心残りだ」
竜馬がそう言うと、ベッドの傍の文也が怖い顔で睨んだ
「笑えないぞ!」
看護師に退院前の最後の点滴の針を刺されテープを貼られている竜馬を、宗一郎、ジェニ、文也が見つめていた
「意気地のないやつだ」
竜馬が愛情のこもった声で文也をからかう、それでも二人はもう当分琵琶湖には近寄りたくないと意見が一致していた
竜馬が意識を取り戻してから、様々な出来事が起こり、病室には毎日ひっきりなしに花が届き、日曜日は朝から晩まで、会社関係の見舞人達の対応に追われた
それでも決まって竜馬の傍にはジェニが終始張り付き、彼が気に病む質問や、仕事の話を熱心にし出す社員を、とっとと追い出した
警察の事情聴取もこの病棟で行われ、貸しボート会社からは完全にこちらの業務上過失で謝罪の書類と同時に竜馬側が告訴するならば、それにも甘んじて受けると書かれていた
この件に関しては竜馬は弁護士に全託した、そして退院の本日、退院手続きを終えたジェニが山のような書類と火傷の治療の処方箋の詰まったファイルを抱えて、事務室から戻って来た
竜馬は火傷の傷が当たらないようなゆったりとしたスゥエットのセットアップに着替え、文也の車に全員が乗り込んだ、玄関でお世話になった看護師達に見送られ、花束までもらって感激したジェニは涙を浮かべた
「いくら花束をもらっても、もう二度と来たくないな、アイツらは僕に容赦なかった」
「治るための治療をしてくださったのよ、竜馬さんの方こそ、点滴を引きちぎって帰ると大騒ぎしたじゃない、向こうもこんな面倒を起こす患者はもう来てほしくないって思ってるわよ」
クスクスジェニが笑う
「お互い様だな」
文也も運転しながら笑った、懐かしいメビウスビルのペントハウスのエレベータ―に乗り込む、部屋に上がる間も、竜馬はどことなく無口だった、いくら病院で休んで回復したとはいえ、長い車の移動で疲れているのは確かだった
竜馬が部屋に入るとハナはいなく、リビングはシン・・・とし、ジェニが静かにドアを閉めた
竜馬はまるで初めて見る場所のようにあたりをぼんやりと見回した、そしてしばらくそこに立ち尽くした
「ハナは兄の所にいるわ・・・とっても元気よ、寂しいなら、あとで迎えに行きましょう、でも今日ぐらいは二人きりもいいかなって思ったの・・・」
気を楽にしてあげなければと思い、ジェニが忙しく動き出す竜馬をソファーに座らせ、テレビをつけて賑やかにし、持って帰って来た荷物などを整理した
「ジェニこっちきて、キスしたい」
こわばった声で呼びつけられ、いそいそとソファーに座っている彼にキスをする
チュッ・・・「これでご満足?」
片付けの最中に呼びつけられ、コツンとおでこを合わせて聞くと、竜馬が不満そうに言う
「まだ!全然足りない!舌も吸ってない!」
彼の息遣いは思ったより早かった、体は張り詰め、あらゆる筋肉がこわばっている、ジェニは切なくなった、常に自信たっぷりだった彼がこんなにも途方に暮れ、不安そうにしているのを見るのは初めてだった
彼が安らぎを得るなら、なんでもするとばかりに、ジェニは彼に熱烈なキスをした
すぐに彼が口を開けて二人の舌は絡み合う、彼の舌は熱く切羽詰まっていた
ハァ・・・「病院だから・・・どうすることもできなかった・・・君が傍にいて髪を揺らし、僕に笑顔を向け、その可愛いらしい胸と尻を一日中見せびらかされてたんだぞ・・・」
そう囁かれながら、ジェニの服をはぎ取っていく
「り・・・竜馬さん・・・もうちょっと後の方が・・・」
「ダメ」
竜馬がジェニの手を取って寝室に引っぱっていく
「今すぐ君の中に入りたい」
自分のスウェットを荒々しく脱ごうとして、引っ張ったら火傷の保護シートに引っかかり、竜馬が顔をしかめて痛みにびくっとする
「わかった、わかったから、焦らないで・・・」
ジェニは彼が傷を悪化させることが心配だった
「竜馬さん・・・ゆっくり・・・ね」
「無理」
竜馬はうなり、ジェニのジーンズもパンティもはぎ取っていく
「自分で脱ぐから――あんっ」
そういっても竜馬にすべてをはぎ取られ、床に放り投げられる、彼のいつもの優しい自制心は消え、切羽詰まったような彼を見て愛しく思う
ジェニは彼に慰めを与えられるなら乱暴にされても全然かまわなかった、彼の言うことならなんでも聞いてあげたい、竜馬は膝でジェニの太もも押し開き、その間に前戯もなしでねじ込んで来た
ハァ・・・ハァ・・・「・・・長くは・・・持たない・・・」
「いいのよあなた・・・」
優しく両手で背中を撫でさする、コツンと竜馬がジェニとおでこを引っ付け、二人は見つめあった
「すぐにイクのなんかカッコ悪いよ・・・」
「私は嬉しいよ・・・」
ジェニの方こそどれほどこの時を待ち望んでいたか、嬉しくて涙が溢れてくる、ジェニは気づかれないようにそっとシーツで涙を拭った
大勢の人が行きかう病棟で、美しい彼の体に触れながら、切ない欲望を持て余していたのは、ジェニも同じだった、やっと彼の心も体も自分のもとに戻って来た感動で終始震えた
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夜になって、二人で風呂に入るためにジェニは竜馬の体中に張り付けてある保護シートを一枚一枚丁寧に剥がす、竜馬が申し訳なさそうに言う
「その・・・医者が言うには、火傷跡が綺麗になる整形手術を受けることも出来るって・・・そりゃ完璧にもとには戻らないとしても、今よりかは見た目ずいぶん良くなるって・・・君が嫌なら・・・」
「まぁ!何を言うの?竜馬さん」
ジェニは竜馬の体を抱きしめて、なだめるようにさすった
「わざわざ、あなたが私がキスをするポイントを作ってくださったのに、私は毎晩この傷にキスをするって決めているのよ」
「ええ?」
竜馬はおかしくなって笑ってしまった
・.。. .。.:・
「三週間も眠っていた間、意識はあった?私、毎日あなたに話しかけてたのよ・・・」
ベッドボードに淡いランプの光が揺れている・・・ジェニは竜馬を抱きしめたまま彼の髪をいじっていた、まだ少し爆風をうけた所の髪が縮れて、パサパサしている箇所がある、後でトリートメントしてやらなければ
「う~ん・・・意識っていうか・・・ずっと夢を見てたんだ・・・」
竜馬はせっかく着たジェニのパジャマの前ボタンを全部外し、ジェニの胸の谷間に鼻を突っ込んみながら言った
「どんな夢?」
「アメリカにいた頃の夢」
「・・・そうなの」
ジェニは驚いてなんとか言葉を発した、今までどういうわけか、アメリカにいた頃の話は一切してくれなかったのに
「どんな夢か知りたいわ・・・あなたさえよかったら・・・」
彼にくつろいでほしくてジェニが用意したアロマが焚かれた寝室は、まるで天国のようだった、病室のリネンのシーツなど比べ物にならないぐらい、ファー素材のシーツは心地が良く、そして抱き枕にはジェニがいる・・・
竜馬は夢見心地でポツリポツリと話だした
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「カルロスは性根の腐ったクソやろうねっ!」
ジェニは最初のホームスティ先の話をすると、怒りに声を低くして言った、そんな人間の家で暮らすのがどんな感じかジェニには想像もつかなかった、胸がムカムカしてくる
「うん・・・おぞましかった・・・」
ジェニはそのカルロスについてもっと詳しいことを知りたかった、父は彼の事はあまり多くは語らなかったけど、ホームファミリーから彼がいなくなったと聞いたとジェニに言った
おそらくその父に連絡してきた男がカルロスとか言う人間なのだろう、親族や知人友人から切り離され、言葉も通じない場所にいきなり送り込まれ、頼れるホームファミリーは最悪で・・・寂しそうにしている少年の姿が目に浮かぶ
「でもある日・・・」
「ある日?」
真夜中のような色の竜馬の瞳がうるっときらめいた、今は彼の手はジェニのお尻に置かれている
「神様が僕に天使を遣わせた」
「天使?」
「うん・・・」
ジェニは起き上がって彼の顔を覗き込んだ、この会話がどこに向かうのだろう・・・じっと天井を見る彼の心はここにはなく、遠い記憶の雲に覆われているようだった
「その天使は僕の目の前でピッド・ブルを蹴り上げたんだ」
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うわあ、222話……ようやく竜馬が目覚めて、ジェニと再会できた場面、本当に待ち望んでいただけあって胸が熱くなりました。特に「着替えを手伝ってくれるかな…奥さん」のやりとりは、恥じらいと愛情が滲んでいて、切なくて大好きです。 でもその後の尿瓶の介助シーンで、ジェニが「トイレに流してくる〜(嬉)」ってスキップする姿と、竜馬が顔を覆って真っ赤になる対比がもう……シリアスの中にちゃんと笑いと温かさがあるのが、この作品の魅力だなって改めて思いました。そして最後に竜馬が語り始めた「天使」の話。カルロスの存在やピットブルを蹴り上げたっていう一文に、ゾッとするような緊張と、この先の伏線を感じました。次が気になります!