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好きだ…ッ!(渾身の叫び)
安定の神作
※死ネタ注意
……春。
あなたが消えてしまいそうだと、思った。
夏。
あなたの落とす影が好きだった。
秋。
あなたの記憶が視えるようで泣きたくなった。
冬。
あなたは、約束を、おぼえていた。から。
「……俺は、あんたの為には、死ねないよ。…」
うそ。
ぜんぶうそだ。
「…………。」
ねぇ、おんりー。
俺だって約束憶えてたよ。
ナメんじゃねぇよ。どんだけ、声のひとつひとつ、好きで好きで大切にしてるって思ってるんだよ。
『おらふくんの、死ぬ前の日に、しにたいな。』
………俺だっておんりーの前の日がいいよ、って言った。
『はは、じゃあその前のひ。』
じゃあその、前の日、
どんどん早うなってまうやん、って返した。
「…………そっか、」
…叶っちゃったかな。
早くなって早くなって、
時計が反対に廻って、巡って、
あなたの脆い身体が二酸化炭素を吐くのをやめた日が、その、昨日?
「…そっかあ、」
じゃあ同時なら、くるしくないなあ、って、
朝の寝惚け眼でも、夜の酩酊でもなくて、
さびしい、くるしい、素面の昼下がりに、約束したの。
約束、守れんかったなあ。
ちがうよ。おんりーが、破ったんよ?
「…ずるい、………ずるいやん、…」
こんな、一生忘れらんないような傷、残すだけ遺して自分だけ先に出掛けちゃうなんて、ずるいやん。
あなたが死んだ。
はるのひだった。
はれのひだった。
今思えば、桜みたいなひとだったなあ。
昨日まで、あんなに確かに、隣にいたのに。
あなたの、ちょっと曇り空の声が、好きだった。
あなたの、春の綺麗なとこぜんぶ詰め込んだみたいな目が、好きだった。
まぶたを腫らしていた夜に、重ねてくれた手があったかかったのが、好きだった。
「……、」
でももう戻らない。
戻らないよ。
最後に眼に焼き付けた、呼吸をしなくなった白い皮膚を見て、
どっと溢れるみたいに一切をこわして死にたくなった。
こんなに実体の心臓が憎たらしくなった。
「…………やくそく、まもれなかった、ね、」
まだ、まだ、取り返せるかな、あ、
「なあ、おんりー、?」
ゆびきりげんまん。
「……今からでも、間に合う?」
ああ、たしか、
おらふくんが死ぬ前の日に、だったっけ?