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 マッドハッター 〜 白幻の森にて 〜

 白幻の森。ここエスタエイフ地方で一年中雪の降る地域にて存在する雪に覆われた森。もみの木々が巨大樹のように大きくそびえ立ち、鋭利な柱のように見えることから、地元民の間では<とんがり帽子の森>と呼ばれている。

 私も様々な森の木々を見てきているが、この白幻の森のように大きく成長したもみの木は見たことがない。以前、このもみの木を調べたことがあったが、何度調べてもただの木なのだ。

 では、何故。ただのもみの木がここまで大きく成長したのか? 

 古より用いられた科学技術が原因なのか。それとも、春夏秋冬がない変わりに、寒帯、温帯、熱帯のような様々な地帯に区切られていることに関係があるのか。

 それは私にもわからないのだ。

 「ハッター! 雪が冷たくて気持ちいいね!」

 私の前を歩いている道化人形のスパイキーとスパイク。子供のようにはしゃぎながらふわふわの綿が詰まった足で雪を踏みしめていた。

 「あんまり遠くに行ってくれるなよ? 団員一人をこんな寒い場所に置き去りなんてしたくないからな。」

 帰ったら、魔法で乾かしてやらねばならないだろう。だいぶ森の中を歩いてきてから、スパイキー達にブーツを履かせなかったことを後悔した。

 「ハッター! ハッター!」

 少し遠くの方でスパイキー達の声がしたので顔を上げてみると、スパイキー達は両手で何かを持っていた。目を細め、よく見てみると白い雪のようなものだった。

 「ははん? スパイキー・スパイク! 私に雪合戦を申し込もうというのか。いいだろう、受けて立つ!」

 「ふええ?! ち、違うよ! みてみてこれ!」

 スパイキー達が近づいてきたので、手に持っていたものの正体がわかった。雪のように白く、そして雀よりも小さい体。これは。

 「シモドリじゃないか。」

 「シモドリ?」

 シモドリとは、ここ白幻の森のように雪に覆われた森に住んでいる鳥。大きさは雀よりも小さく、シマエナガのような見た目をしている霜の魔物だ。そして、素手で触ると手が凍傷のように傷ついてしまうほど、体が冷たい。集団行動をし、ある一定の時期まで木に作った巣で過ごすのだ。

 「スパイキー・スパイク。こいつは見た目こそ愛らしいが危険な魔物だ。元いた場所に返してきなさい。」

 「でも、この子怪我してるみたいなんだ。巣から落っこちたのかも。」

 私は周りの木々を見回して見たが、巣らしきもの、穴は見当たらなかった。ここよりもっと遠くに巣を作っていたのかもしれない、と遠くの木を眺めていると、何かが動くのが見えた。

 「スパイキー・スパイク。ここを離れよう。その子は残念だが、おいていくしかない。」

 「え!? で、でもぉ!」

 「急げ、ツリーテイルが近くにいるかしれない。」

 ツリーテイル。木のように長く細い足をもっている蜘蛛の魔物で、そびえ立つ木や枝に擬態して獲物を襲うのだ。さっき見えたものがそのツリーテイルの足だとしたらかなりめんどくさい。

 ギギギ…。

 「まずい、行くぞ! スパイキー・スパイク!」

 傷んだ木の板が軋むような音が近くで聞こえた。私はステッキでスパイキー達を引き寄せて、肩に乗せた。置いていくように言ったシモドリを大事そうに抱えながら必死にしがみつくスパイキー達。この時、シモドリは目をきゅっと閉じて痛みに耐えているようだった。

 「くそ、ホリデー前にとんだ拾い物をしてしまったな!?」

 「うわーん! ごめんなさーい!」

 私はスパイキー達を連れて森の外へと全力で走ったのだった。

 マッドハッター 〜 アルマロス内部にて 〜

 森の外に無事に脱出し、アルマロスの中に入ると団員たちに驚かれた。何故なら、スパイキー達によって抱えられていたシモドリに、身の危険を察知したのか、体内の冷気を放出し、スパイキー達の体と私の肩をカチンコチンに凍らされたからだ。よって、帰宅するや否や、団員たちに騒がれた。

 「我が主!? その氷は!?」

 「はぁ、はぁ…、話は後だ。冷凍ケース、もってこい。暖炉の火は強めろ!」

 クロウとその団員たちの働きのお陰で凍らされた箇所を溶かすことができ、シモドリは冷凍ケースへと入れることができた。火のトカゲ、サラマンダーを膝に乗せ、カラスのクロウが淹れてくれた紅茶を飲んでやっと落ち着くことができた。

 「なるほど、あれがシモドリですか。」

 カラスのクロウが冷凍ケースの中にいるシモドリをじっと見つめる。団員の中には興味を示すものがちらほらいるが、中には興味がないものもいる。

 「スパイキー達の容態は?」

 「ただ凍らされただけですが、体力の消耗が激しかったのかまだ眠ったままです。」

 「だろうな。凍傷を負わないとは言え、素手でシモドリを抱えていたんだ。しばらくは寝かせてやれ。」

 「はい。」

 私はクロウに下がるように手をプラプラと振ると、入れ違いで梟のエヴァンが部屋に入ってきた。

 「ハッター、ちょっと話があるんだけど。」

 クロウとエヴァンは同じ鳥類の魔物なのだが、仲が一番悪いことを思い出した私は、その場に居続けようとしているクロウに睨みを効かせた。すると、クロウはしょんぼりした顔で部屋を退出した。

 「…いいぞ、なんだ話って。」

 「あのシモドリのことなんだけど、三日以内に野生に返したほうがいいわ。」

 優雅に机に着地した現在、過去、未来が視える梟の魔物エヴァン。私は膝にいるサラマンダーの顎の下を指で撫でながらエヴァンの話に耳を傾ける。

 「あのシモドリの未来が視えたの。あれは…。」

 「知ってるさ。エヴァン、お前の能力に頼らなくてもあの子の未来はすでにわかってる。」

 「なら、早く。」

 「拾ってきたのは私じゃなくてスパイキー達だ。この先どんな目にあってもそれはあの子達の代償ってやつだ。」

 私は座っている椅子に背中を預けた。ホリデーを団の皆で過ごすためにもみの木を採りにいっただけなのにかなり疲れた。

 「疲れてるのね。まぁ、いいわ。私は伝えたからね?」

 「ん、親切にどうも。…少し寝る、各自好きに過ごすように伝えてくれ。」

 エヴァンは「はいはい…。」と返事をすると、翼を広げ、足を器用につかってドアノブをひねり部屋を退出した。私は、サラマンダーの暖かさで睡魔に抗えずにそのまま眠ってしまった。

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