アンドレアはそう大声で言って、イーゼルごと少女の方に絵を向けて見せた。年上の少女はうれしそうに、同時に何かさびしそうににっこりとほほ笑んだ。東の空が白み始めていた。夢中になって朝まで絵に没頭していたらしい。
「おねえさん、今度は違う服のおねえさんを描こうよ。パーティドレスとか持っている?」
だが年上の少女はさびしそうに微笑みながらも首を横に振った。
「次はないの。あなたはもう私なしでも生きていけるから。もう私の事は忘れなさい。でも私たちがここにいた事は、忘れないでいて」
「え? おねえさん、何を言っているのか分からないよ」
アンドレアは不意に気づいた。少女の体が朝の光の中で、陽炎のように透けて見え始めた事に。少女は背筋を伸ばして立ち、両手を腰の高さで広げてアンドレアの方に差し出すような格好で最後の言葉をかけた。
「あのナゾナゾの答を教えてあげるわね。私たちが持っていなくて、あなたが持っている物、それは……」
愛おしむような優しい目と声で、年上の少女はそれを言った。
「それは、未来」
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