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のんの
828
恋に沈んでゆく月の水面が照らす
泡になって溢れる想いが浮かんで
言葉には出来ない愛を抱きしめて
ひとり海の底で
何も手につかずに
抑えられぬ思いが
滲ませる涙も誰にも知られず
光さえ届かない この海の底で
「あなたを愛している」
波の音がやけに近い。
いつも通り何も変わらない。
でも、俺は……
水面が、揺れている。月の光が、砕けて、滲んで、
まるで全部、泡になって溶けていくみたいで。
今にも泣き出しそうで。
痛いくらいに美しくて。
……結局俺は何も言えないまま終わったな。
もう、なんだか疲れた。
重たい脚を、一歩。冷たい水が、足元に広がる。
まだ、話したかったなぁ。
勇斗は俺がいなくなったらなんて言うかな
何も言わないかもしれないけど
苦しいはずなのに、苦しくない
泡が、ゆっくりと視界を埋めていく。
……ああ、ほんとに。上から見たそのままだ。
恋に沈んでゆく。
月の水面が照らす
泡になって溢れゆく。
想いが浮かんで
言葉にはもう出来ないけど。
あなたへの愛を抱きしめて。
ーーひとり海の底でーー
もう何も手につかない。
抑えられない思いも、
滲んだ涙も、
この海の底なら。
誰にも知られない。
もう、聞こえない。
大好きだった勇斗とはいられない。
今更遅い。
遅過ぎた。なにも、かもが。
「……もう残ってるのは、これだけだ。」
光さえ届かない。
「でも、この想いは届いて欲しい。」
この海の底で
「あなたを愛している。」
コメント
1件
読了しました…。この第7話、すごく重くて、でも綺麗で、胸が締め付けられました。詩的な文体と、海の底でひとり「あなたを愛している」とだけ呟くラスト、涙が出そうだった。勇斗に届いてほしい、でももう届かない――その切なさが静かに刺さります。言葉にできない愛を抱えたまま沈んでいく主人公の気持ち、私にもわかる気がする。丁寧に描いてくれてありがとうございます。