コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ここは吉原、色を売る街遊郭
3000人以上の遊女陰間が暮らすこの街では
その中にひと際輝く花が咲いていた
陰間ながらも花魁と同等の知名度、
地位、金を持つ、者
その花を人はこう呼ぶ
藍色の花、聖来と
客が来るまで待つこんな時間に私はいつもどうり煙管で煙を吸いながらゆっくりと窓の外を眺める
この時間だけは私を癒やしてくれる
「聖来!お前はいつになったらちゃんとした髪結いをするのかね…!」
はぁと深い溜め息をつきながら後ろを振り向きそう怒鳴っている桜主を横目にじっと見つめる
「わっちはこの少し型外れのやり方が売りでありんして…」
「髪結いなんて邪魔で仕方がないでしょうに」
楼主は少し怪訝な表情を浮かべたがすぐにいつもどうり、に話し始めた
「……まぁいい…それより聖来、お前に新しい禿がきた」
禿とは遊女、陰間の見習いである小さいうちから売られたものは大半が禿として姉女郎の雑用などを請負ながら成長していく
「そうでありんしたか、…」
私は息をふ…っと吐いたすると部屋中には煙管から出た煙が漂う
「それがこいつだ」
す―と襖が開いたと思えば肩につくぐらいの綺麗な暗髪に変わった赤色の瞳を持つ少年が座っていた
そのその表情は、どこか暗く儚げで今にも消えてしまいそうだった
無理もない、こんなところに親の借金やらなんやらで自分には関係のないような物でここに連れてこられたんだから
「こいつは、今日からお前の禿だ早く名前をつけてやれ」
そう言い切ると楼主はすっと立ち上がり他の場所に行ってしまった
少年はそのまま座ったまんまで一向に動く気配がしない
私は煙管の中に入っている葉を叩き出すようにカンッと鳴らした
少年はビクッと体を震わす
「御主、名はなんと言う…」
少し戸惑ったように少年はその小さい口を動かしながら喋る…
「あ……アレ…ス」
「アレス…変わった名前でありんして…御主異国のものかね…?」
「祖父がそう…だと、聞いていま…す」
「年はいくつでありんして?」
「あ、え、…13で…す」
そういうと少年は黙ってしまった
「はァ…名前をつけんといけんしたね…」
少年は黙ったまま何も言わない
自分の名前を決めて貰うのに何も言わないものなのであろうか
「セラフはどうか?」
「……ぇ、?」
「主の名前、せっかくアレスという名前でしたらこんなものもどうかと思いんしたが…」
「セラフ……、セラ、フで……良い…です」
そう少年は小さく一言言った
「ではまずはその髪を切りましょう、あとは言葉遣いも、覚えてもらうこともやることも沢山ありんすから。」
「はい…」
そう一言少年は頷きながら言った
桜の蕾が小さく膨らむより前の少し…
肌寒い時期のことだだった