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~桜が散る頃に~
「別れよう、?」
…
「は?」
俺の名前は潔世一、高校2年だ。
俺には彼女がいる。
「さくら~宿題見せて…」
「またやってないの?」
宿題見せてと迫られている彼女…
春咲 さくら(ハルサキ サクラ)
彼女は日だまりのように温かく、春のように優しい。
そんな彼女に惹かれて、昨年の夏に告白し付き合った。
照れ屋でしっかりもののさくらは俺の自慢の彼女だ。
だが、さくらの頼みで付き合っていることは秘密にしている。
「いじられるから」、だそうだ。きっと俺のことを考えて言ってくれたのだろう。
そんな彼女から、今年の秋別れを告げられた。
いや、何でだ?俺、悪いことしたか…?分からない何でだ?
「ちょ、は?何で」
「…」
理由も話してくれる訳でもなく、うつ向き黙っているだけ…。
「俺、何かしたか?悪いところがあったら言って欲しい。」
「ううん、違うの…世一くんは何も悪いとこないよ?」
「じゃあ、何で…」
「ごめんね、私のことはもう、忘れて…?」
は?
「…っ!もうこんな時間…!」
「ごめんね、さようなら…」
「さくら!!」
そう叫んでも彼女は振り返らなかった。
翌日
ガラッ
あれ?居ない…
いつも早く来ているさくらが今日は居ない。
「よー世一、」
「あぁ、おはよう」
クラスメイトと挨拶を済ませ、席につく
「春咲さんはしばらくお休みするとのことです」
ホームルームで告げられた休みの連絡。
やっぱり、俺と会いたくないのか?
その連絡が俺にたいしての拒絶の壁とも思えてしまう。
納得いかない…
キーンコーンカーンコーン
ガタッ
「世一~一緒に帰ろうぜー」
「悪い、今日は無理」
「はぁ?、」
「じゃあな!」
学校が終わり、俺は急いで学校を出た。
行き先は…
ピーンポーン
「はぁ~い」
ガチャ
「あ、こんにちは」
「あらぁ~世一くん、どうしたの?」
そう、さくらの家だ。
「さくら居ますか?」
さくらのお母さん…少しやつれてる?
「え、?さくらから聞いてないの…?」
聞いてない…?何のことだ?
「いえ、何も…」
「そう…」
「上がってちょうだい」
…何だ?さくらに何があったんだ?
「さくらね、入院しているの」
「…入、院?」
「えぇ…数週間前にね…」
「お母さん…何か、胸が苦しい…」
「え?心当たりは?」
「分かんない…でも、息が、しずらくて…」
「分かったわ、病院に行きましょう」
「あなた、車出せる?」
「あぁ、急ごう」
「CBウイルスですね…」
その病気はまだ解明されておらず、特効薬が作られていないそうだ…
そして、さくらは余命を言い渡された。
それが…来年の、5月頃。そう、桜が散る頃だ。
あと、数ヵ月しかない…
「くそっ…!」
「さくら、その事を言ってなかったのね…」
「はい…心配を掛けると思ったんでしょう…」
「あの、お願いがあるんですが…」
ガラッ
「!」
そこには、入院服を着たさくらが居た。
「何で…」
「さくらのお母さんに頼んだんだ」
「そっか、ごめんね…」
「本当だよ、何も説明しないでただ別れようって」
「…」
「びっくりしたんだよ?」
「だって、病気のこと言ったら心配描けると思ったんだもん」
「当たり前だろ、その、彼女何だし…」
「フフッ」
「んな…、笑うな……って、」
「どうした!?」
さくらは俺の言葉を聞き、涙を流し、笑っていた。
「うん…私、皆と卒業したかったなぁって」
…当たり前だよな。
「それにさ、私世一くんと結婚したいなー、とか」
「色々考えてたんだよ?」
…っ!
「それなのにさぁ病気が見つかって、治せないって…」
「ほんっと、ついてないなぁ…、」
俺だって信じたくない…。最愛の人を失うんだから…
「私が居たから他の女の子と付き合わないとか良いそうだなって」
「思ったから、別れようって言ったのに…」
「別れるわけないだろ?」
「だよね…でもさ、私は私が居なくなった後でも世一くんには幸せでいて欲しいの。」
「だから言いたくなかったの。」
「でも、ばれちゃったもんね…隠しててごめんね。」
要するに俺に幸せでいて欲しいから別れを告げたって訳か…
「確かに、俺でも同じことすると思う、」
「だから、もっと俺を頼ってよ。」
そう、二人で苦しみを分ければいい。
「…っ」
「ありがとう、…!」
それから月日は経ち、4月。桜が満開になった。
さくらは、入院してから一度も学校に来ていない。
ただ、俺は毎日病院に行っている。今日も、学校終わりに病院に来た。
ガラッ
「あ、世一くんだ~今日の学校はどうだった?」
「楽しかったよ。」
「ねぇ、桜はもう咲いた?」
「あぁ…」
「そっかぁ。新入生は?もう来た?」
「あぁ、」
「いいなぁ~私も見たかったなぁ」
「…」
「世一くん。最後の我が儘、聞いてくれる?」
?最後の…?桜が散るのはまだもう少し先じゃ…
「学校に行きたい」
「わぁ~数ヵ月しか経ってないのに懐かしい感じ~」
「良いのか?勝手に抜け出してきて」
「良いの良いの!怒られないし」
「そうか?」
「そうそう!ねぇ!教室行こう?」
「でも先生に見つかったら…」
「良いからゴー!」
車椅子の桜を押し、教室へ向かう。
「わ、懐かしぃ…」
「私の席どこ?」
「こっち」
「窓際かぁ、桜が見えるね~」
「「っ!」」
その時、強い風が吹いた。
薄目を開けるとそこには、桜の花びらを纏ったさくらがいた。
ピンク色の髪に合わさり、神秘的な、でもどこか儚いような…そんな雰囲気だ。
「…世一くん。今日はありがとう」
「?、あぁ。これからも行きたい所にいつでも連れてってやるから」
「っ…」
そう言ったとき、さくらは切なげに瞳を揺らした。
「そうだねっ!またお願いしようかなぁー!」
「じゃ、今日は帰ろう~!」
翌日
…やっぱり気になる。
昨日のさくらの言葉…
「最後の我が儘、聞いてくれる?」
最後のって何だ?
だめだ、今日1日中考えてる…
キーンコーンカーンコーン
ガタッ
「世一ー!一緒に帰ろうぜー」
「あー悪い、また今度」
「はぁ!?毎回そう言って帰るじゃねーか!」
「悪い、、本当また今度」
「あ、おいー!!」
プルルルル
ん?
さくら?
「どうした?」
「世一くん…っさくらが…!」
っ!!
ダッ
その声を聞いて、走って走って走りまくった。
嘘だ、まだ桜は散ってないのにっ!
ガラッ!!
「あっ…世一…くっ…」
泣きじゃくっているさくらのお母さんと、その背中を擦って涙ぐんでいるさくらのお父さん
そして…
ベットに寝たきりの…
「さくらっ!!」
「どうしてっ!まだ時間はあるはずっ!!」
「落ち着いて!」
看護師さんに取り押さえられ、距離をとった。
「どうして、…。何でっ」
「…」
「さくらの、場合…、元々体が丈夫な方ではなかった…からっ。」
っ、
「そんなっ、」
お別れも、言えないのかよ…
「くそっ、くそ、くそっ!!」
「ん?これは?」
その時、看護師さんがなにかを見つけた。
「手紙…?」
世一くんへ
この手紙を読んでるってことはもう私は居ないんだよね。
私ね、最近体が重くなってきてたの。
だから、余命より早く居なくなるの、分かってたんだ。
でもね、世一くんには本当に感謝しかないの。
治せない病気にかかってても私を見放さず、ずっと一緒に居てくれたよね。
それが本当に嬉しかったの。
世一くんに別れを告げる前日まで悩んで悩んだ末に別れを切り出したんだけど…
そんなの、必要無かったね。
あっ、あと!
新しい彼女さんは作って良いんだからね!
私のこと引きずって彼女さん作らない、とか私嫌だからね!?
だから…幸せになってね。
私、ほんとにほんっとーに、世一くんのこと大好きだよ!!
出来ることならもっとずっと一緒に居たかった。
でも、それも今となっては叶わない…。
だから、これだけは覚えてて。
私、世一くんの優しい声が好き。
私、世一くんのさらさらな髪が好き。
私、世一くんの優しい、お人好しなところが好き。
私、世一くんの綺麗な顔が好き。
私、世一くんの全てが好き。
死ぬまで一緒に居てくれてありがとう。
空の星になってあなたをいつまでも見守っています。
だから…忘れないで。
あなたの事が大大大好きな桜より
…
ポタポタ
「ふざけんなよ…こんなの、最期に残してから逝くなんて…」
「ずりぃだろ…っ」
「うっ…クッ…」
俺も…
「大好きだよ……」
「あ、あの!」
声を掛けられ、振り返るとそこには同級生が居た。
「ん?どうした?」
「え、えっと、」
「私っ!潔くんの、事が好きですっ!!//」
「付き合って下さいっ!//」
告白…か、
『彼女さん作らないなんてやめてね!』
…
「ありがとう。」
「でも、俺心に決めた人が居るんだ。」
「だから、君の気持ちは受け取れない。」
「そう…ですか…」
そう、俺にはさくらが居るから。
彼女を作れと言われても、俺は作らない。
だって、浮気になるだろ?【別れてはいない】んだからさ。
ずっと忘れないからな…
その日、俺は…桜が散る桜並木を歩いた。
~桜が散る頃に~Fin
おはようございます。もしくはこんにちはこんばんは!作者の琥珀です。
今回の読みきりは入院した彼女と潔とのお話でした。
切なさを取り入れてみたいなと思ったのですが、どうでしたでしょうか?
七夕スペシャルということで少し長かったので読むの大変だったと思います。
ここまで読んでくださったかた、ありがとうございます。
これからも日々精進していきますので、よろしくお願いします。
読み切りリクエストは何でも屋の方で受け付けております。
リクエストあるかたはそちらへゴー!