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「……俺、暁山が好きなのかも知れない」

「……は?」


ショッピングモールの休憩スペースにて冬弥がとんでもないことを言い出して5分程度だろうか。オレは何を言えばいいのかも分からず無言で俯いている。冬弥の顔は見えないが多分困惑しているのだろう。にしても急すぎやしないか。練習でも学校でもないとはいえ急な衝撃発言をするのはオレは良くないと思う。

「……彰人?」

「……んだよ」

「すまない、急に変なことを言ってしまって」

「自覚あるのかよ……」

「あそこにいる暁山を見てそう思ってしまってな」

「……暁山?」

冬弥が指した方向に目をやるとそこには嬉しそうにロリータ系統の服が売っているショップで服を持ちレジに並んでいる暁山が見えた。あの顔を見るに数量限定か何かの服を手にできたのだろう。少し微笑ましかった。


――ん? 微笑ましい、ってなんだ?


暁山を見て微笑ましいなんて、思ったこともなかった。人に微笑ましいなんてあまり思ったことはなかった。顔は可愛いとは暁山以外にも思った人は少しだけど居るものの微笑ましいなんて感情はなかった。もしかしてオレは暁山に特別な感情を持っているのかもしれない。正直自分の感情には鋭い方だと思っているため、この感情は間違いでは無いのだろう。


「……はぁ」

「どうした、彰人」

「いや、なんでも」


相棒に恋愛相談だなんて出来るわけがない。ましてや「今貴方の好きな人に特別な感情を持ちました」だなんて言えるわけがないだろう。出来る人間がいるならそれはもう無神経というか……学力がないからこれを上手く表す言葉が出てこないが、流石に相棒でもこれは気を使うだろう。相棒と特別に想っている人が同じだなんて流石相棒だな。とか言っている状況ではない。

特別な人? そうだ、冬弥は「暁山が好きなのかもしれない」と言っただけだ。それなら友愛か、恋愛かはまだ分からない。ほぼ期待は出来ないが、一応聞いておくことにした。


「……ちなみに聞くが、友愛なのか、恋愛なのか。どっちなんだ?」

「れんあっ……! ……恋愛だ」

「……そうか」


本格的にまずい。相棒と姉の友達とオレの三角関係なんて真っ平御免だ。どうせならオレが別の人を好きになれば良かったのに。そう思っても異性同性人外含め暁山以外に恋愛的な感情を持つオレは想像できなかった。しかし事実なのに未だに暁山が好きなオレですら実感が湧かない。でもそういう想いがあったと知った上で今までを思い返してみるとそういうフィルターはかかっていたのかも知れない。


「――ちょっとお兄さんたち、ボクそういうの求めてないからやめてよ」


暁山の声がした。明らかに困っていて、いつもより少し低めの声。言っている言葉からしてあれは――


「……彰人、あれは」

「ナンパ……だな」


オレと冬弥は座っていた椅子からたち、暁山のいる方向に向かった。問題の男はまだ気付いていないらしく気付かれない程度に近寄る。

「……すみません、オレたちこいつと待ち合わせしてたんでどっか行ってもらっていいですか?」

「は? 誰だよお前」

「そこの人の同級生だが。……俺たちは貴方たちの顔を覚えたから警察に通報することが出来る」

「……! はぁ、しゃーねぇ。行こうぜ」

「……そうだな」


とりあえず一件落着、だろうか。本当は待ち合わせなどしていないし、冬弥もテキトー言っただけだろう。ちらっと暁山の方を見ると未だに同様しているみたいでとてもまともに会話はできなさそうだった。冬弥もどうすればいいか困っているみたいだし、正直オレも何をすればいいかよく分かっていない。


「あー……とりあえずそこ、座るか?」

「そうだな」

「うん……」


休憩スペースの近くだったため空いている椅子は多かった。運がいいのか悪いのか……まぁとりあえず暁山を落ち着かせるためにジュースか何かを買いに行くことにした。冬弥は「俺が行く」と行ってくれたが暁山の様子を見ていて欲しいと頼んだら特に反抗もせずに「分かった」とだけ言って暁山の横に座った。


「……冬弥はコーヒーで良いとしてあいつ、なんのジュースが好きなんだ?」


暁山が可愛いもの好きなのは知っているが、ジュースの好みまでは分からない。絵名が子供舌と言っていた気がするが、子供向けのジュースなんてものは自販機には売っていない。とりあえず可愛い飲み物と言われて思い付くいちごオレを買うことにした。見た目は暁山の髪色に似た薄いピンク色のパックだった。よくよく考えると身長174のオレンジ髪に黄色メッシュ入れてるストリート系の服を着ている男がいちごオレを持っているだなんてイレギュラーすぎるが、冬弥よりはマシだろうとかいらないことを考えながら温かい缶コーヒー、少し冷たいいちごオレを持ちながら冬弥と暁山がいる休憩スペースへ向かった。


「はい、冬弥はこれで暁山はこれ。暁山は好きなもん分かんなかったからテキトーに選んどいたぞ」

「ありがとう。温かいな」

「ありがと〜。いちごオレ好きだから嬉しいなぁ。あ、何円?」


さも当然かのように金を払おうとする暁山。確かに暁山の性格ならば仮は返そうとするだろうが、オレと冬弥が勝手にやった気遣いだ。素直に受け入れて欲しいものだが多分無理だろう。変に聞き流したところで後から絶対に払おうとしてくる。正直本当に金は払わなくて良いのだが。


「あ? 金なんか払わなくていい。奢りだ奢り」

「いやいやいや、それは申し訳ないよ! 助けてもらった上にジュースまでタダで貰っちゃうなんて」

「オレが良いっつってんだ。金の使い所も少ねぇし」

「いや、でも……」


予想通りの反応に痺れを切らしたオレは意地でも払わせたくなかったため、聞き流すことにした。何故払わせたくなかったのかは分からないが、多分”特別な人”だからなのだろう。無論冬弥にも払わせる気はないが。


「あー、あー! 聞こえねぇ聞こえねぇ。グダグダ言ってないでさっさと飲め。この寒さだとすぐ冷たくなるからな」

「……後で絶対返すから」

「はいはい」


キッと似合いもしない表情で睨まれ、別に怖くもないがまぁ少しの悪戯心で鼻で笑いながら返した。そういえばと思い冬弥の方を見ると神妙な顔つきをしてこちらを見ていた。雰囲気や今までしていた会話的に不安か嫉妬だろう。冬弥からしたら「自分が好きだと分かっている人とよく話す相棒」から嫉妬や不安が生まれるのは当然だろう。そう冬弥の思想について考えていると冬弥が口を開いた。


「彰人の飲み物はどうした? 自分のは買わなかったのか?」

「そうだな。オレはこれ、持ってきてるし」


予想外な質問をされたが、特にオレはびっくりもせず鞄の中の紅茶を指す。ペットボトルでもなく、ちゃんと茶葉から入れたものだ。随分前に喉にいい飲み物を調べて、緑茶や紅茶が喉に良いと言うことが記載されていた。正直成分がなんたらかんたらとかいう説明はよく分からなかったから全く覚えていないが、その記事を見てから緑茶や紅茶を持ち歩くようになった。紅茶の方がパンケーキにも合うので主に紅茶を持ち歩いているが。


「そうなんだな、あ。俺もお金……」

「いらねぇ」

「そういう訳にも……」

「ほら、暁山も払ってないし」

「ボク後からぜっっったい返すから!」

「……そうだな、今回は言葉に甘えておこう」

「それでいい」


結構すんなり払わないで居てくれて助かった。消費も500前後だし、正直言って詳しい消費を覚えていないから払わせられない。金は本当に今は困っていないからあってもなくても変わらないのだ。絵名に服買いすぎとかごちゃごちゃ言われて買えてない……というか買ってないし、パンケーキも最近は色んな店行き過ぎて行きたい店が消えたから食ってねぇな。とか無駄なことを考えていると暁山は飲み終わった見たいでゴミ箱を探しているみたいだった。オレが場所を言おうとしたが、冬弥が暁山の様子に気が付いたみたいで「暁山、ゴミ箱はあっちだぞ」と言ってあげていた。暁山は笑いながら感謝を述べ、少し遠いゴミ箱へ向かった。


「座ってる席の位置もあるだろうけど、にしても休憩スペースなのにゴミ箱遠いって不便だよな」

「そうだな」


オレはどうすればいいかが分からなかった。いつも絶えないはずの冬弥との会話がいつになく途切れている。オレがきまずくなるのは兎も角、冬弥はなんで黙っているのかが分からない。


「……彰人も」

「……ん?」「彰人も、暁山が好き……なのか?」

「……はぁ?」


――バレてたのか……!


いつのタイミングで分かった? オレが自覚したのは冬弥がオレに打ち明けたあとのはず。じゃああの短時間でオレは顔に出ていたのか……?


「……冬弥はどうだと思う?」

「そうだな……俺は図星だと思っているぞ?」

「……嫌じゃないのか?」

「あぁ。相棒の好きな人を知れて嬉しい」

「……! でも」

「……それに、特殊ではあるが、2人で1人を愛す、というのもやってみたかったんだ」

「……は?」


安心より先に、驚愕が浮かんだ。そんな間も無く、冬弥は特殊性癖を語り始めた。


「二輪挿しというものがあるらしくてな……それもやってみたかった」

「えぇ……」

「それに――」

「……? ほうした、あひと」

「……暁山くるぞ」

暁山の前で言われたら流石に引かれるだろう。相棒であるオレですら少し引いているのだから。


「2人ともありがと〜……って、なにやってんの?」

「……大丈夫だ、気にしないでいい」

「気になるんだけど」

「おへははいひょうふだ」

「大丈夫なんだ……」

「……そういえば、ボクって耳良いんだけど」

冬が彰らかになる時、瑞々しい恋が始まる

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続きを全裸待機ィィィ

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