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Attention!!
・死ネタです
・司と類しかでません
・司→地縛霊的なもの、類→高校生
・他のキャラは次回だします(多分出さない)
・なんでもいい人はそのまま進んでね☆
君に追憶を 1
「オレ、もう死んでるんだ」
そう言って、彼は悲しそうに、儚く微笑んだ。
・・・
暑い夏だ、湯気が出そうなほどの外気温、うるさく喚く蝉の声。
教室の中はさぞかし涼しいのだろう、と屋上から、向こう側の校舎をのぞき込む。
もはやもう居場所などない教室には、同級生の下卑た笑い声が重なる。
あの場所から逃げ出したくて、誰もいない屋上に入り浸るようになったのは何時だっただろうか。
「おい、もう授業中だろう。こんなところで何をしているのだ」
思い出したくもないこと思い出していた、その時。
1人だったはず空間に凛とした、よく通る声が響いた。
「そんなことを言われても、君だって同じサボり仲間じゃないか、ここにいると言うことはそうだろう?」
流れる金髪、意志の強そうな眉毛。突如現れた、僕とは真反対な彼にそう零す。
すると、彼は少し驚いたかのように目を見開き、ふっと微笑んだ。
「まぁ…色々あったのだ。ところでお前がいじってるそれは何だ?」
それ、とは僕が作っているドローンのことだろう。
わざわざ授業をサボって、暑い暑い屋上に居座っているのは、これがしたいから、と言う思いもあるだろう。
「何、って…ドローンだよ、ショーをするんだ」
ショーと道具____大昔、「変だよ」と口を揃えて言われたあの頃から。
変われないのだ、幼少期観たあの脚光に、あふれる笑顔に縋りたくて、近づきたくて。
どんなに非難されようとも、これだけは止めれない。
きっと彼も___大昔のクラスメイトと…
「何、これら、すべて自分で作ったのか!?」
「…へ?」
思ってもいない反応に思わず変な声が出た。
「いいな、オレもショーが好きなんだ!!」
眩しい笑顔。
見たこともない顔に目がチカチカした。
「なあなぁ、しばらく見ていていいか?」
勢いよくそう言った彼に押され、僕は首を縦に振るしかなかった。
・・・
「なるほど、皆が笑顔になるショーをするか…いい夢ではないか!!」
「そう…かい」
「むっ…何故そのような素晴らしい夢があるのに浮かない顔をしておるのだ!!」
大きな琥珀色の目が僕のことを射抜く。
「いや…別に何でもないよ、ところで君の名前は?見たことのない顔だけど…」
嘘だ、本当はただ知られたくなかったんだ、初めて会った家族以外の僕を肯定してくれる人に。
「ふっ、オレの名を聞くか…いいだろう!!」
「オレの名は、天駆けるペガサスと書き天馬ッ!世界を司ると書き司!その名も…天馬司!!」
「未来の……いや、何でもない」
「そうかい、僕の名前は神代類、よろしくね」
「あぁ、よろしくな、類!!」
・・・
あれからだ、今でめんどくさかった学校が楽しくなったのは。
彼は何故かショーに詳しかった。よく聞く“オタク”と言えるほどに。
「マクベスか…あまり好きではないな、ストーリーの構成などには学ぶべき点は多いが…やはりラストがな…」
「おや、司くんはバッドエンドは嫌いかい?」
「あぁ、あのスッキリとしない感覚がどうも嫌いでな…」
「そうかい…僕も同感だよ、やはり最後はハッピーエンドでなくてはね」
「そうだよな…!」
はっきり言おう、楽しかった。
司くんは僕と同じくらい、ショーに対する細かいところまで知っていた。存分に語り合える仲、と言えるほど。
「しかし、それほどショーが好きなら演者や劇作家になることも夢ではないと思うよ。司くん、今からでも何処か劇団に所属してみればどうだい?」
単純な感想だ。
よく通る大きな声、ショーに対する広い知識、コロコロと変化する表情。
彼は随分とショーに向いている人材だと思う。
「…あぁ、まぁそうだな」
司くんの歯切れが急に悪くなった。
「どうしたんだい、急に?」
僕は気軽にそう聞いた。
「…いや、なんでもない!!」
僕はこの時知らなかったんだ、
彼の恐ろしい秘密を。
・・・
「はぁ…今日も暑いね」
今までより一層暑い日だった。
いつも通り司くんと屋上で話す。
「む、そうなのか?」
「そうなのかって…まるで他人事のようだね」
そういって、俯く司くんの動きに合わせて、太陽の光を吸い込んだような金髪が、緩やかに流れていく。
「こうも暑いとやってられないねぇ…そうだ放課後、一緒にアイスでも食べに行かないかい?」
「………放課後、か」
「それで帰りに僕の家に来ないかい?ちょうど見てほしいものが____」
「すまない、無理だ」
「オレはこの学校から出られない」
「……え?」
“出られない”
いや、そんなわけないじゃないか。
そう思って、思わず地面に目を伏せる、
伏せてしまった。
「オレ、もう死んでいるんだ」
暑い暑い夏の日。
太陽の光が乱反射する屋上、
そこに立つ彼の足元に
黒い影は、どこにもなかった。
・・・
「死んでいる、って、どうして…!」
「分からない、気づいたらここにいた」
分からない、ありきたりな言葉が恐ろしい。
「オレには死んだ前後記憶がないんだ、何処で、いつ死んだのかさえも」
「っ…!」
いつも通り、輝く金髪を揺らせながら、司くんは寂しそうに笑った。
「オレの最後の記憶は、妹と朝食をとったことだ、妹に会いに行きたいが地縛霊と言うやつなのか、学校から出ることが出来ない」
「そんな…」
「…少々暗い話をしてしまったな、今日はもう遅い、ご家族も心配しているだろう」
そういって、司くんはいつも通りの笑顔を浮かべた。
・・・
「…別に死んでても、司くんが僕の友達だということは変わらないのになぁ」
階段の踊り場、壁に取り付けてある手すりに腰掛け、窓をのぞき込む。
空には沈みかけた太陽が、そびえ立つビルや山々に照りつけ、茜色に染め上げている。
その眩しさに、思わず目を伏せる。
「あの笑顔、まるで踏み込むなと言っているようなものじゃないか」
ただ悔しかった、司くんに何も言えなかった自分が。
「…明日、司くんに話しかけてみるか」
どうせ明日も司くんと話すし、その時に話せばいいか。
結論が出たので、僕は階段を下り始める。
「ねぇ司くん、1人で抱え込まなくてもいいんだよ」
ぽつりと呟かれた独り言は、誰もいない、夕焼けに染まった階段にそっと溢れ落ちた。
はずだった。
「______は?」
僕はまだ知らない、その独り言が、誰かに聞かれていることを。
・・・
どうもお久しぶり、MIRAです
何処かのオプで投げてきたのを載せます。
パクリかと思うんなら本人に聞いてね☆
感想永遠に待ってます☆
はい、次回!!
「超絶激重片思い拗らせパンケーキ、登場」
お楽しみに〜!