テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「水崎、本当に傷つけてごめん。許されない事をしてお前を傷つけた。そして俺は過去に人を傷つけた。でも……。どうしても俺はお前と一緒にいたい。そのために、両親にも話をしたしアイリとも話をした。こんなに時間が経ってしまったけど……でも……」
そこで芳也は麻耶をじっと見た。
「俺はお前が好きだ。ずっと俺の側にいて欲しい」
真摯に言われた言葉に、麻耶の涙腺はとうとう崩壊した。
とめどなく溢れる涙をどう止めればいいか麻耶自身もわからず、手で顔を覆うと嗚咽を漏らした。
「俺を許してくれるか?」
そっと覆っていた手を優しく握られ顔から退かすと、芳也の瞳とぶつかった。
「許すも許さないも……その過去があったから今の芳也さんがいるんでしょ。芳也さんの……過去の罪もすべて一緒に……」
そこまで言って、しゃくりあげてうまく言葉が出なくなり、麻耶は大きく息を吸った。
「好き……。芳也さんが……す……んんっ!!」
その言葉を言い終わることなく、芳也の唇が麻耶の唇を覆った。
何度も角度を変えて落とされるキスは、ずっと麻耶が望んでいたキスだった。
こないだの触れるだけのキスとは違う、気持ちが流れ込むようなキスに、一瞬止まった涙がまた頬をつたった。
ギュッと芳也の襟元を握りしめると、芳也も麻耶の腰を抱き寄せた。
「唇にするキスは愛情のキスだよ」
そう言葉に出すと、芳也はもう一度ゆっくりと麻耶にキスを落とした。啄むように何回かキスを重ねる。
「ずっと、キスしたかった……」
そう言うと大きく息を吐いて、麻耶をギュッと抱きしめた。
「ううっ……」
また泣き出した麻耶に、「また泣く……」そう言って芳也は笑った。
「これからは何度でもキスするよ」
そう言って芳也は微笑むと、麻耶の頬を両手で挟み込み、麻耶を見つめた。
「もう一度、ここからやり直したい。今まで傷つけた分甘やかして、俺なしじゃいられない様に、麻耶の全部を俺にちょうだい」
その言葉に麻耶はクスリと笑うと、
「とっくに芳也さんがいないと私はいられない」
「麻耶……好きだよ」
柔らかく微笑んで芳也は麻耶の額にキスを落とした。
〝麻耶″と甘く呼ばれた自分の名前が自分でないようで、
「私も……好きです。ねえ、もう一度名前を呼んで?」
その言葉に、芳也はふわりと笑顔を見せると、「麻耶。ようやく手に入れた……もう離さない。覚悟しろよ」
「そんな覚悟とっくにしてます」
そう言って微笑んだ麻耶の手を握るとそっと手の甲にキスを落とした。
そしてニヤリと笑って芳也はそっと額、頬、と順番に芳也はキスをすると、唇の横にキスをして麻耶を見つめた。
「もう……さっそくイジワルしないでください」
涙目で芳也を麻耶は見上げる。
「どうしてほしいの?」
さっきまでとは変わり、余裕を見せた芳也に麻耶はギュッと唇を噛んだ後、そっと言葉を発した。
「好き……キス……して」
その言葉に芳也は目を見開き、「まったくお前って……」そう呟くと芳也は激しく麻耶の唇を奪った。
今までの啄むようなキスではなく、スルリとすぐに入ってきた芳也の舌は歯列をなぞり、麻耶の舌を絡めとり、息継ぎすらさせてくれないそのキスに、麻耶はあっという間に息を上げた。
「……ふっ……んっ……」
漏れる声すら覆う様に激しくなるキスに、麻耶は芳也の首に腕を回すと二人はそのままソファに倒れ込んだ。
麻耶はエアコンの風が肩にあたり、少しひんやりと感じてシーツを肩まで引き上げた。
(あれ……?)
対称的にシーツの中のお腹の辺りには、心地よい重みと温かさを感じて麻耶はゆっくりと目を開けた。
「あっ……」
その言葉はすぐに飲み込まれて、温かく唇が塞がれた。
「おはよう」
目の前にすぐある、綺麗な優しい瞳に少し恥ずかしくなり、麻耶は目の前の芳也キュッと抱きついた。
「おはようございます……」
「何?その可愛い態度」
クックッと肩を揺らした芳也は麻耶の後頭部に口づけ、麻耶の肩を抱きしめた。
「うるさいです。本当はずっとこうしたかったんです」
今までは、気持ちは知られる訳にも行かず、抱きつきたいのをずっと麻耶は我慢していた事を思い出して、拗ねたように言った。
「そうか。俺もずっともっと抱きしめたかったよ」
優しく麻耶の長い髪をすきながら、色気たっぷりで言った芳也に麻耶は頬が熱くなるのを感じた。
そしてふと今のこの状態に疑問を覚えて、麻耶は芳也を見上げた。
「私何でここで寝てるんですか?そして、あれ?」
中途半端に下着姿の自分に、ふと記憶が断片的によみがえってきた。
「思い出してくれた?」
ニヤリと芳也は笑うと、麻耶を組み敷き、上からじっと麻耶を見下ろした。
「えーと、途中で寝落ちしたんですね……私」
あはは……と乾いた笑いをして、芳也を見ると社長スマイルが目の前にあり、麻耶は息を止めた。
「うん、そうだね。俺はやっと麻耶が手に入って、やる気だったんだけどね……。俺はそんなに眠くなるような事をしたのかな?」
そう言うと、芳也は麻耶の首筋をペロリと舐め上げた。
「んっ!」
甘い声が漏れ、麻耶はとっさに口を手でおさえた。
「昨日もその声は聞いたんだけどな……」
そう言うと、芳也は麻耶の鎖骨の辺りを吸い上げた。
ピリッとした痛みとともに、麻耶は潤んだ瞳で芳也を見上げた。
「だって……ずっとうまく眠れなくて、芳也さんの腕の中で安心したらつい……」
その表情を見て、今度は芳也が照れたように麻耶から目を逸らした。
「悪い。麻耶。俺が悪かった。もうこれ以上煽らないで。止まらなくなる……」
そう言って芳也は麻耶を抱きしめると、大きく息を吐いた。
「え?」
「可愛すぎるんだよ。お前のその顔。今まで必死に見せないようにしてただろ?俺も見ないようにしてたし。
でも、全開で見つめられると破壊力半端ない。このままここから出したくなくなる。けど……時間」
そう言った芳也の言葉に麻耶は慌てて時計を見た。
「え??いやー!こんな時間!」
「初めて会った時もその言葉を聞いたな」
芳也はクスクス笑うと、慌てて起き上がった麻耶にリップ音を立ててキスをすると、自分もベッドから出た。
バタバタとバスルームに向かう麻耶を見ながら、芳也も着替えると久しぶりにゆっくりとコーヒーを落とした。
4ヶ月ぶりの一人ではない家の中で芳也は無意識に微笑んでいた。
「麻耶、朝食は何もないけど、コーヒーは入れたぞ。送ってやるから飲んでいくか?」
着替えを済ませてリビングに戻ってきた麻耶を見て、芳也は声を掛けた。
「え?でも社長に送ってもらうなんて……」
「社長として送って行くわけじゃないだろ?」
その言葉に麻耶は照れた表情を見せると、
「じゃあ、よろしくお願いします」
とダイニングテーブルに座った。
「相変わらず冷蔵庫空っぽなんですよね?きっと」
「ああ、まあ。そうだな」
苦笑した芳也に、麻耶は「まったく」と言いながらコーヒーに手を伸ばした。
「今日は何時まで?」
「今日は式の担当はないので18時か19時には上がれると思います」
ニコリと微笑んだ麻耶に、芳也は真剣な表情を向けた。その表情に麻耶はドキンとすると、芳也の次の言葉を待った。
「麻耶、また今日から一緒にここで暮らしてくれないか?同居じゃなくて。恋人として」
「……いいんですか?」
その言葉に麻耶は嬉しさと驚きで、コップを持ったまま芳也を見つめた。
「もちろん。麻耶のいない家にはもう耐えられない」
「よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて麻耶は微笑んだ。
「とりあえず、今日帰ってきたら荷物とか取りに行って、細かい事はそれから話そう。俺は今日ちょっと会社行くけど麻耶よりは早いと思うから。とりあえず遅刻はまずい。行こうか」
「はい」
ふたりでマンションを出ると芳也に近くまで送ってもらい、麻耶はお礼を言って車を降りようとした。
「麻耶、待って」
「え?」
すでにノブに手をかけていた麻耶は、無防備に振り返った。
スルリと口内に入ってきた芳也の舌にビクリと肩を揺らすと、優しく麻耶の舌は絡めとられ、下唇を食まれ最後にチュとキスをしされて、麻耶は真っ赤に頬を上気させた。
その表情を満足げに芳也は見てニコリと笑った。
「いってこいよ」
「もう!いってきます……」
少し睨むように見上げた麻耶に芳也は、そっと耳元で、「今日の夜は寝るなよ」そういってさらに麻耶の顔は真っ赤になった。
「返事は?」
麻耶はその返事と言わんばかりに、身を乗り出すとチュッと芳也にキスをした。
麻耶からされたキスに驚いたような表情をした芳也に、「芳也さんこそ寝ないでくださいね!」そう言うと麻耶は車を降りた。
(キス……しすぎじゃない?)
麻耶は上気した頬を手でパタパタと冷ますように扇ぐと、ゆっくりと会社へと歩き出した。
芙月みひろ
5,379
#虐げられヒロイン