テラーノベル
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「涼ちゃんの支えがあったからでしょ?」
涼ちゃんが少し笑ってみせた。
「……いつでも僕は若井を守るつもりだよ」
「じゃあ、おやすみ」
涼ちゃんは何事もなかったかのように帰っていった。
玄関のドアが閉まった瞬間、空気が変わる。
「……あ……もとき……」
何も言わないその沈黙だけで、心臓が跳ねた。
「えっと……ごめん……帰るって連絡もできなくて……」
返事は、ない。
口を開こうとして、元貴は代わりに俺の手首を掴んだ。
冷たいほど静かな動作で、ぐいと引っ張られる。
「あっ、ちょっ、まって……!」
靴を乱暴に脱がされ、そのまま廊下に引きずり出される。
身体がふらついて、自分で立てないのが情けなくて、言い訳のように言葉を漏らした。
「の、飲みすぎた、だけで……ほんとに……っ」
「うん」
たったひと言。
声はいつも通り。
いつも通りなのに、張り詰めた糸みたいな返事。
「今日は疲れたって……もとき、言ってたのに……」
「うん」
「返そうと思ったけど、返せなくて……!」
「うん。スマホ触れないほど誰かと盛り上がってたんだよね」
声は笑っていた。
だけど、その笑みの形が、視界に映らなくても冷たいってわかった。
「涼ちゃんが……送ってくれたの、ちゃんと帰れるように……」
「うん。送ってくれて、ありがとう、って伝えておいて」
ぞっとするほど丁寧な言い回し。
怒ってる?なんて聞けるはずがなかった。
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コメント
2件
大森さんがどんな感情を表してるのか 分からなくて不安に思う気持ちすごくわかります、おこらせたくない、でも 怒ってるのかな 、 みたいな不安な感じが好きです
わぁぁぁ……もう本当に好き…!! 酔ってうまく力が入らず、大森さんにずるずると引きずられていっちゃってる若井さんが可愛い…… そんな中でも、必死に弁明の言葉を並べる若井さんが健気で可愛くってもうどうしよう…… 大森さんがもう大森さん本人過ぎて…!!!声色はいつも通りなのに、聞くまでもなく怒りが滲んでいる大森さんが本当に好きです……若井さんこれからどうなっちゃうのか……楽しみすぎます~~~!!