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ブルーロック展がいつくるかは存じ上げませんけど、ソロ参戦決定事項なんで。ショッパー貰うのも約束された未来です。待ってろよ。下まつ毛5本と6本
ドイツを出国する日。
「永遠の別れかよ」ってくらい、チームメイトが見送りに来てくれた。
口うるさくて、意地悪で、でもなんだかんだ言って俺を仲間として受け入れてくれた奴らだ。
ほんの少しの間だけでも、背中を預けて走った日々だった。
永遠じゃないと分かってても、少しだけ胸が締めつけられる。
――まあ、こいつは例外だが。
「世一きゅん、飛行機乗ったことありまちゅか?」
ゲートで手間取ってる俺を見て、王様ことカイザーがわざとらしく赤ちゃん言葉で煽ってきた。
「……お前な。俺がどうやって日本からドイツに来たと思ってんだよ。シルクロード歩いて来たとでも?」
「はあ? 何それ、笑えねぇ」
「やっぱ愚王だろ、お前」
「なんだと?」
結局、最後まで言い合いながら搭乗口をくぐる。
不思議と、こうやって口喧嘩してると緊張が紛れるんだよな。
――そして着いたスペイン。
ユニフォームに袖を通し、足を踏み入れたのは**「FCバルチャ」**の施設。
そこで俺を待っていたのは、煽り散らかす王様と、そして。
「……世一?」
不意に、懐かしい響きが耳を打つ。
それは、もう二度と聞けないと思っていた日本語。
振り向くと、小豆色の髪と翡翠色の瞳。
まっすぐで、凛とした眼差し。
――忘れられるはずがない。
「……さ、え?」
俺の声を合図にしたみたいに、その人は迷わず駆け寄ってきた。
そして、力いっぱい抱きしめて。
「ずっと……ずっと会いたかった」
胸に飛び込んでくる声。
少し掠れた、けど真っ直ぐな声。
…懐かしい。あの日、泣きながら叫んだ俺の幼馴染だ。
「冴…っ
ぢょ、ぐるしいっ……」
「ごめん」
慌てて腕を緩める冴に、俺は苦笑して「大丈夫」と笑ってみせた。
「会いたかった」
「……うん。俺もだよ」
――冴が、とろけるみたいな笑顔でそう言うから、胸がドキリと跳ねたのは秘密。
「なんだよ、感動の再会? 惚気はよそでやれよ、ヨイチ〜」
お前は黙ってろ
「Halt die Klappe, Typ mit dem blauen Rosentattoo.(うるせぇ青薔薇タトゥー野郎)」
冴がすかさずドイツ語で切り返す。
俺は手を引かれるまま、妙に呑気に「……冴、ドイツ語できたんだ」と感心していた。
そして始まった**「新世代世界11傑」**の合宿。
世界中から選ばれた11人の怪物が集い、センターサークルを囲んだその光景は、圧巻としか言えなかった。
言葉はまだ通じないかもしれない。けれど、ピッチに立てば――繋がる。
日ごとに行われる5対5の試合。
一人ひとりを観察し合い、力を測り合う異様な熱気。
その中で、俺と王様は一瞬だけ化学反応を起こした。
視線が重なり、走る軌道が噛み合い、気づけばゴールが揺れていた。
意識が繋がる不思議な感覚。FLOWみたいなあの瞬間を、俺は今でもうまく言葉にできない。
それでも、確かに分かった。
――世界は面白いやつで溢れてる。
たった一週間。
でも、永遠に忘れられない濃い時間だった。
帰国の朝。
「世一」
振り返ると、冴が立っていた。
「なに?」
「……連絡先、教えてくれないか」
もちろん、大歓迎だった。
その場で交換して、**「また会おう」**と約束を交わす。
――ドイツへ向かう途中、乗り換え先で携帯を機内モードから戻すとすぐに震えた。
画面に表示された名前を見て、思わず笑みがこぼれる。
差出人は――冴。
To be continued
ピッチに立つ世一の姿は、俺の知っている幼馴染よりもずっと逞しくなっていた。
……だが隣にいるのが、よりによってカイザーだとは。
視線だけで呼吸を合わせ、ゴールを奪う二人。
あの瞬間、世界が彼らを中心に回ったようにすら見えた。
「……なるほど。お前、そうやって成長してきたんだな」
思わず呟いた声が少し震えていた。
嬉しいはずなのに、胸の奥に小さな棘が刺さる。
俺がいない間に、世一は“誰か”とあんな風に輝けるようになったのか。
カイザーの勝ち誇った笑みが、やけに癪に障る。
「……俺は負けない。もう…二度と。」
幼馴染に向ける言葉なのか、自分自身への誓いなのか。
その境界は、もう分からなかった。