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……あれから。
俺は、
何をしてたんだっけ。
仕事?
学校?
誰かと話した?
思い出そうとすると、
全部、
途中で切れる。
映像が、
古いテープみたいに
波打つ。
ふふ。
……あー、
なんだよ。
まただ。
⸻
……君。
おい。
そこの、
君だよ。
画面の向こう。
今……
いや、
前からずっと。
俺のこと、
見てるだろ。
⸻
心臓が、
一拍遅れる。
喉が、
勝手に動く。
「……違う」
「違う違う違う」
「誰も、
見てない」
「俺は、
一人だ」
声が、
自分の耳に
遅れて届く。
⸻
視線を感じる。
確かに。
背中じゃない。
正面でもない。
“意識の外側”。
説明できない位置。
そこから、
ずっと。
⸻
……でも。
分かってる。
全部、
俺の妄想だ。
だって、
そうじゃなきゃ
おかしい。
主人公をやめた人間に、
観客なんて、
いるわけない。
物語は、
終わったんだ。
⸻
「……なあ」
誰にでもなく、
言う。
「俺はもう、
選ばない」
「救わない」
「戻らない」
「……だから」
「これ以上、
俺を見るな」
⸻
少しだけ、
楽になる。
視線が、
薄くなる。
いや――
俺が、
薄くなっている。
存在感が、
紙みたいに。
⸻
笑いが、
漏れる。
ふふ。
……あー。
なんだよ。
結局、
こうか。
⸻
俺は、
世界に
溶けていく。
名前も、
役割も、
罪も。
ユウの人生にも、
ミオの記憶にも、
もう、
俺はいない。
それで、
いい。
⸻
……全部。
全部、
俺の妄想だ。
全部、
俺が
作り上げた
地獄だ。
だから――
ここで、
終わりにしよう。
⸻
紫色の花が、
どこかで
枯れ落ちる音がする。
誰にも、
聞こえない。
……それでいい。
物語は、
誰にも気づかれず、
完全に終わった。