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上野文
9,610
都築七美
278
てく
1,872
竹林を抜けた先には、開けた場所があった。
低い草村に背筋を伸ばして立ち、満月を見上げていた人物。その横顔が、遠巻きながら狐の目に映ったのである。
抜けるほどの白く滑らかな肌。それを際立てるような艶のある漆黒の長髪。それに似た深い瞳から、宝石のような雫が落ちる。
息をするのも忘れ、狐雲はただ彼女を見ていた。
釘付けであった。
やがて我に返った狐雲は、何をしているのかと自身を叱咤し、踵を返そうとしたが。
(あのおなご。このような夜更けに一人で……無事に帰路に着けるのであろうか)
そんな考えが脳内を巡る。
(——私は何を考えているのだ。どうせあのおなごも、自己中心で穢らわしい心を持つ人間に違いない)
そう心中で言い聞かせてみても、足が進まない狐雲は、ついに観念したように女の前に姿を見せた。
「……おい、おなご」
狐雲の声に、話しかけられた人物は驚きのまま顔を向けた。
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