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お湯
#書きたい時に更新します
富来 えび
70
#黒歴史になりそう
葉月瑠璃🐥
60
――箕輪城・大広間。
「ふすまを開けよ」
長尾景虎の声に、兵はすぐに返事をした。
「はっ!」
方円は天井を見上げながら、景虎に告げる。
「天井は出浦に任せております。
安心してくだされ」
「うむ」
景虎が頷いた、その時だった。
天井から、ぬっと顔が出てくる。
「お任せを。
盗み聞きしているやつは掃除します(^^)」
出浦盛清だった。
「…………」
長野業正は、もはや何も言わなかった。
――――――――――――――――――
「知っての通り、今回風魔の襲撃を許してしまった」
景虎が重々しく口を開く。
「方円殿が初手で気づいてくださらなければ、 憲政様も危うかったかもしれぬ」
「うむ……いつの間に紛れ込んだのか」
業正も険しい顔で考え込む。
方円は少し考えながら答えた。
「城に、こちらが気づいていない抜け道があるかもしれませんので、 こちらで勝手に調査中です」
「うちの三ツ者が、徹底的に調べるつもりです」
「ご心配なく。 憲政様の周りは、あれ以来厳重に警備させておりますので……」
「抜け道か……それなら有り得るな」
業正は頷いた。
「お任せいたす……」
「それと、忍城はこちらに着いてくださるとのこと。
成田は今回の出来事を、既に知っておりました」
「なに?」
景虎が驚く。
業正は続けた。
「どんな惨状だったのか、某には分かりませぬが、 密偵を忍び込ませていたようです」
「城には入れなかったとは言っておりましたが……。」
「……そうか」
景虎は少し考え、
「なら、成田が差し向けた訳ではないか……
一瞬でも疑ってしまって申し訳ないわ」
と呟いた。
「成田は、北条に密偵を差し向けてくださるとも約束いただきました」
業正はさらに続ける。
「……また襲撃が来るやもしれませぬ。
いかがなさるおつもりか」
「…………」
方円はしばらく黙っていた。
「そろそろ北条も、忍城に勘づくかと」
「私だったら、いっそのこと風魔を差し向けるかも」
「まあ、今回派手にやられたから、
やるかやるまいか迷っている段階でしょう」
「……今回しでかしたからな」
景虎は苦々しく呟いた。
「有り得るわ。
くそっ……卑怯な北条め」
業正も黙って二人の話を聞いている。
「……あとは、そうですな」
業正が口を開く。
「忍城を懐柔されたと知ったら、
間違いなく小田原に全てをかけるでしょう」
「それに、今川だけではどうしようもないことは、 悟ったはず……」
「……某だったら、伊達を動かしますな」
景虎は地図を見ながら言った。
「佐竹あたりを攻めれば、動けなくなる」
「…………」
方円は少し考え込んだ。
「やむを得ません……」
そして天井を見上げる。
「出浦……まだあるわよね、あれ」
すると、また天井から顔が出てきた。
「ありますよ、 金ですよね(^^)」
「……よろしい^^」
方円が笑う。
「どうなさるおつもりか?」
景虎が尋ねる。
「簡単なことでございます」
方円は、何事もないように答えた。
「足利将軍、義藤殿に、伊達が
動かないよう命令を出していただくのです」
「無理なら、朝廷に頼むという手も」
「は???」
景虎の顔が固まった。
方円は出浦から渡された袋から金を取り出し、
「ジャラジャラ……」
と音を立てる。
「これだけあれば、どちらかは動いてくださるのでは」
「火の車ですからね、どちらも……」
「正義のため、動いてもらいましょう」
「!?」
景虎が思わず声を上げる。
「朝廷や将軍を、なんと思われておるのか!」
「それはただ利用しておるだけではないか……。」
すると業正が静かに口を開いた。
「ですが、伊達あたりが動かなければ、
手が消えたことになります」
「こちらとしては、かなり楽になりますな」
「それに…、それが戦というものでござる」
業正は少し間を置き、続ける。
「朝倉の名将、宗滴殿は以前こう残しております」
「武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、
勝つことが本にて候」
「…………」
景虎は黙り込んだ。
業正は、まっすぐ前を見据える。
「某……上杉憲政様をお戻しするためならば、 逆賊にでもなりまする」
「もし問題が起きたら、
私のせいにすれば良いのですよ」
方円は景虎に向かって微笑んだ。
「見捨ててください、私のことは(^^)」
「……!」
景虎が目を見開く。
「景虎殿は、そのまま正しい義を貫いてくださってください」
「それが魅力なのです」
「汚れ役は私が引き受けます」
「すでに兄の件で汚れておりますから、
なんの問題もございませんよ」
「……方円殿」
業正が静かに声をかけた。
「某にも、その覚悟を分けてくだされ」
「憲政様のためなら、某なんでもやりましょう」
――――――――――――――――――
その頃。
たまたま近くを通り掛かった憲政は、
二人の言葉を偶然耳にしていた。
「…………」
しばらく黙っていた憲政は、
やがて小さく笑う。
「業正……方円……」
「お主らの気持ち、この上杉憲政、
生涯忘れぬ……」
「ほほほ……^^」
――――――――――――――――――
「…………」
景虎は二人を見つめていた。
「業正殿、方円殿……」
「そこまでの覚悟とは……」
「ですが……お二人を、
とくに業正殿を見捨てることはできませぬ」
「私はなんとか見捨てられるようですね」
方円は、ほっとしたように笑う。
「良かった良かった^^」
「……」
景虎はしばらく黙っていた。
「お二人のお言葉で……目が覚め申した」
「いざとなったら、この景虎も、
泥を被り責任を取りましょう」
「出来れば、綺麗なままでいて欲しいのですが……」
方円は苦笑する。
「私は汚れてるし」
「そうですな……」
業正も笑った。
「わしも悔しいですが、もう歳ですから」
「ハッハッハ」
「…………」
景虎も、ついに堪えきれなくなった。
「ははははは!!!」
コメント
1件
おお、方円さんがまたもや斜め上の解決策を…!「金で朝廷動かします」って笑、景虎殿が「は???」ってなるのめっちゃ分かる(笑)。でも業正殿の「覚悟を分けてくれ」って台詞がめちゃ重くて心に刺さった。汚れ役を引き受ける覚悟と、それを見守りながらも最終的には泥を被る覚悟を見せた景虎殿の成長が熱い。憲政様がこっそり聞いてたシーンもグッときたわ…次どうなるんだろう、めっちゃ気になる!