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だ、……ダメだ。視点をどこに固定すればいいのか分からない。上か? 天井の火災報知器とスプリンクラーの数でも数えていればいいのか?
目を逸らし、下着を確認するフリをする僕の袖を、白石さんがぐいっと引いた。
「陽一さん。真剣に選んでくれなきゃ嫌です。……覚えてますか? 前に私が入院したとき、すっごくダサい下着を買ってきてくれましたよね」
「うっ……」
「私、好きな人からの初めての下着のプレゼントがあれだったの、地味にショックだったんですよ? だから今日は、ちゃんと可愛いのを選んでくれないと」
上目遣いで、少しだけ悲しそうに唇を尖らせる。けれど彼女は、困り果てた僕を見て楽しんでいるのだ。
「わ、わかったから! ちゃんと選ぶよ……!」
幸い、僕たち以外に店内に客はいない。ここはなんでもいいから早く選んぼう──覚悟を決めて視線を戻した瞬間、僕の脳内サーバーは完全にフリーズした。白石さんの両手には、「仕様書を疑うレベル」で大胆なランジェリーが握られていた。
「こっちの、ワインレッドのブラジャーか……それとも、シルキーブラックか。陽一さんは、どっちの私が『見たい』ですか?」
(どっちって……どっちも布の面積かなり少なめだぞ!破壊力が強すぎて、視覚パケットがエラーを吐きそうだ……っ!)
「……あ、う、どっちも……」
「ダメですよ、『どっちも』なんて逃げ道は。……誕生日の夜、陽一さんに一番喜んでほしいんです。……だから真剣に選んで?」
耳元で囁かれる「真剣に」という甘い呪縛。逃げ場を完全に塞がれ、僕は目の前の「凶器」を直視せざるを得なかった。
(……これ、目の前で見せられたら、心臓は焼き切れる!)
「……っ。……ぶ、ブラックで。白石さんは肌が白いから、黒の方が、その……映えると思うので……」
絞り出すように答えると、白石さんが耳元で囁いた。
「きゃーっ、陽一さんって意外とエッチ。……あ、ちなみにこれ、セットのTバックはおしりほぼ丸見えですよ?そんなに見たいんですね♡」
「ち、ちがいます! 僕はそんなつもりじゃ……っ!」
「ふふ、恥ずかしがらなくていいですよ。私は、エッチな陽一さんのほうが好き♡……今夜、楽しみにしててね♡」
軽やかな足取りでレジへ向かう彼女の横で、僕は膝をつきそうになった。
彼女は僕というシステムを壊す、致死量のウイルスだ。視覚、聴覚、そして暴走する想像力――あらゆる過激な刺激に、ハードウェアが悲鳴を上げる。
今夜、僕はすべてをハッキングされ、再起動不能になるまで愛し尽くされる運命らしい。もはや、強制終了すら許されないのだ……。
風宮 むぅまろ(̨̡ ¨̯
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