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「ガリベン、ありがとうな。他に何かわかったら教えてくれよ」
「任せてくれ」
それから俺とガリベンは予備校の前で別れた。俺はしばらくの間、マナのいる予備校の3階の教室を静かに見上げていた。
それから次の日もまた次の日もマナは補講を理由に俺を先に帰らせた。1週間が経とうとしていた。その間も、俺はマナと一緒に予備校に行っていたけど、山崎の話を口にすることはなかった。マナの様子も特に変わったところはなかったし、予備校のない日曜日は俺と一緒に買い物に行ったり映画を観に行ったりして楽しんでいた。だから俺の中で勝手に大丈夫だと思い込んでしまっていた。でも、本当は違っていた。
「明石くん、君に会わせたい人がいるんだ」
予備校が終わりエレベーターに乗ると、ガリベンが慌てて駆け込んで来てそう言った。
「誰だよ会わせたい人って?」
「ある女性と近くのファミレスで待ち合わせをしているんだ。大丈夫かい?」
「別にいいけど、もしかして山崎のことか?」
「あぁ、そうだよ」
それから俺とガリベンは歩きで待ち合わせのファミレスに向かった。中に入ると、ガリベンはテーブルの上に参考書を広げて勉強している女性を指をさして教えてくれた。
「涼子先輩、お待たせしました」
「大丈夫よ、私もさっき来たところだから」
初めて見る顔だった。ガリベンとは親しげに話をしていた。
「明石くん、こちらは短大1年生の木元さんです」
「初めまして明石圭太といいます」
「初めまして、話しは聞いています。山崎先生のことを知りたいんですよね?」
木元涼子という女性が、山崎と関係を持った人物だというのは一目見た時から何となく感じていた。見た目は純粋で透明感のある可愛らしい女性だった。少しばかりマナに雰囲気が似ているような気がした。
「差し支えなければ聞かせてもらえますか?」
「あなたの大切な人を守れるなら、知ってることは全て話します」
「ありがとうございます」
それから俺は、この女性から山崎に関する情報を事細かく教えてもらった。山崎雄平、28歳。早稲田大学を卒業後、予備校の講師として5年間勤務しているらしい。私生活では3年前に結婚し、去年の夏に第一子が誕生した。そしてマンションを購入して何不自由ない幸せな日々を送っているようだ。また、出勤前には掃除洗濯をしたり朝食を作っているみたいだ。しかも、帰宅後は子供の面倒を見るなど文句の付けどころのない最高のイクメンパパだった。というのは表の顔で、家を1歩出てしまえば外には2~3人の愛人がいて毎晩のように愛人の家に通い詰めたり、ラブホテルに行っては朝帰りを繰り返してるような最低の男だった。それでも家では最高のイクメンパパを演じている山崎は、奥さんには職場に泊まり込んで仕事をしていたと言っては信用させていたらしい。