テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
頬を撫でられる感触
その温かさで目を覚ました
「‥‥起こしちゃった?」
「ん‥‥眠れないんですか?」
「見てたかったから、ロウの事」
「最近ずっと仕事忙しいって言ってるんですから、ちゃんと眠らないと」
「ちゃんと寝るよ。これからもっと仕事忙しくなるからロウの事目に焼き付けたいんだ」
「そんな事しなくても家に帰って来たら会えるのに」
「そうだな」
次の日から彼は帰ってこなかった
最初は仕事が忙しいのかと思っていたのに
出ない電話をかけ続けて数日
「おかけになった電話は現在使われておりません‥‥」
突然の出来事に言葉を失った
使われてない‥‥
どう言う事?
慌てて彼の職場に電話をかけた
そして言われた言葉
「長尾は3週間前に退職しております」
俺は頭が真っ白になった
忽然と消えた愛する人
どこに行ってしまったと言うのか‥‥
わからない
手がかりが全くない
俺は彼の何を知っていたんだろうか?
自分の仕事も手に付かず、それなのに仕事を残してまでも定時で帰って来た
もしかして‥‥
万が一、彼が‥‥景さんが帰って来ているかもという期待を持って
だが帰って来ない
今日も
明日も
次の日も‥‥
他に好きな人が出来たのかもしれない
景さんは優しいから俺を傷つけたくなくて無言のまま出ていったのかもしれない
だってあれからもう3ヶ月も経ってしまった
でもやっぱり一言くらいは欲しかった
そうじゃないと俺‥‥
仕事が終わり自分の部屋の扉の前
扉のポストに挟まっている郵便物を取り出す
近頃帰りが遅くなっていた
この前までは早く帰ることばかり考えていたが、今はなるべくこの部屋には居なくていいように残業ばかりしている
こんな遅い時間に誰かこちらに歩いてくる音がした
その人物は俺の部屋の隣に来ると鍵を出し始める
「‥‥こんばんは」
「‥‥‥こんばんは」
挨拶をされたので、小さな声で返事を返す
さっさと部屋に入ろう
その時手に持った郵便物が目に入った
「‥‥‥‥っ!」
それはただのダイレクトメール
それなのにそこに書いてあったあの人の名前
彼の所在はここだと言わんばかりに‥‥
開けようとしていた鍵が手から零れ落ちる
「どうか‥‥しましたか?」
鍵を落としても固まったまま動かない俺を心配して、隣人の方がしゃがみ込み鍵を拾ってくれた
でも俺は動けない
この3ヶ月我慢して来た思いが溢れそうだったから
いや、もう溢れていた
「えっ⁈大丈夫ですか⁈」
こんな顔、人に見せたくないのに‥‥
そんな事はお構いなしに次から次へと涙が零れ落ちる
こんな涙‥‥止めてよ景さん
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