第5話「白狐と友達」
金りんごを食べ終わり、しーは静かに皆の集まる部屋を出た。
「表は白き…裏は黒…お前…なんのつもりだ?」
「へぇ…バレていたんだね」
鋭い瞳で怪しく光るところをにらんだ。
陰から、白く光る狐が出てきた。
「しー、お前どうしたんだ?あの弱そうな新人と関わって…お前らしくないな」
「…はきゅを侮辱することは絶対に許さぬ。はきゅは…いじめられた過去を乗り越え、
ここへ来た。お前もわかるはずだ。同じ過去を持つ仲間を、何故侮辱する。遠回しに自
分を侮辱しているようなものだぞ。」
「僕は…もう過去の僕じゃない。今の僕は世界中を虜にする白狐だ。あんな負け犬なん
かじゃない!」
「お前…我の友が…世界中で人気なお前と接するなんて一生叶わない哀れな
負け犬だと?」
「あぁそうだ。あんなやつ僕に近づけないでくれ。」
「哀れなのはお前だ。どうして弱く、小さき者をけなす?我ほどの強さを持ち合わせず、
心が黒く染まっているお前に、人気者である資格はない。」
「変わったな。新入りが来てからすべて。飼い主もお前も、僕に見向きもしなくなった。
孤独で、いつもうずくまっているお前が友を作った?ふざけるな。あいつのせいで、僕
はお先真っ暗だよ。」
「友を作って何が悪い。他の者をけなしている時点で、お先真っ暗だ。」
「別に、お前をけなそうとしてるわけじゃない。僕はあの新入り嫌いなだけだ。みるだ
けで吐き気がする。」
「お前が近づかなければいいだけの話だ。我やはきゅとは関係ない、去れ。」
「ふん!いずれ…はきゅと離れたくなるはずさ。負け犬で、哀れで、美しくもない、汚
れた身体のアイツを、好くなんて…僕が思ってる以上に頭が悪いようだな。汚いやつと
接触して…恥ずかしくないのか?」
「貴様…!我が友をけなすのも大概にしろ!我とはきゅをずっと監視していただろう!
我が気づいてないとでも思ったのか!何のためかは知らぬが、はきゅにその穢れた爪で触れてみろ。生きて帰れると思うな!!」
「おぉ、いい迫力だ。流石、『赤狼の暴君』だな。伝説の赤狼であるお前がそこまでし
て新人を好くとは思ってもいなかった。僕は強いやつ以外嫌いだ。お前が新人といたら
お前が弱体化しそうで怖いんだよ。」
「暴君であることについては…絶対に外にさらすべきではない。今すぐ貴様をこの世
から抹消するくらい…お安い御用だ。」
「戦うのか?かかってこい!『赤狼の暴君』であっても、僕には勝てないだろうさ!!」
「…遊びはそこまでだ。何故ここまでして貴様がはきゅを嫌うのか…教えてもらおう」
しーは黒く鋭い爪でニヤリと笑う白い狐に切りかかった。
「しー!?」
はきゅの声。そっと後ろを振り返った。
「なにしてるの?」
「おや、新人君じゃないか。話すならよそで話してくれ。弱いやつを見ると吐きそうだ。」
「失せろ。命は許してやる。」
「はいはい、じゃあねっ!!」
白い狐は消えてしまった。
「しー、何があったの?」
「…お前には関係ない。心配するな。」
「わかった…ねぇ、さっきの、悪いやつ?」
「いや、本当はいいやつだ。今は少し、荒れているが…」
「そっとしといてあげよう」
白い狐は物陰で呟いた。
「チッ…赤狼に手を出すのはやめといた方がよさそうだ。あの威圧感…僕ぐらいなら間違いなく瞬殺
だ。どうにかしてあの新入りを追放しないと…僕…僕の居場所が無くなる。」
僕ははきゅと楽しそうに話す皆を睨み、姿を消した。
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ちょっと暗めかも...ご心配なく!のほほん日常編もたまに投稿しますので!