side聖奈
「えっ!?ディ◯ニー!?嘘…連れて行ってくれるの!?」
聖くんのエスコートでパリデートを楽しんでいて、今はランチを摂るために入ったお店の中。
暖かくなったらオープンテラスでカフェが飲めるみたいだけど、今は寒いからね。残念。
それにしても、プロポーズのことしか前情報がなかったから、この後の予定を聞いてビックリしちゃった……
聖くんとテーマパーク……
絶対嫌がるだろうから、あの時の一度限りの思い出で一生過ごしていくつもりだったけど……
「そんなに驚くことか…?」
「驚くよ!!だって…嫌いでしょ?」
「…まぁ好きではないな」
ほらっ!…でも、無理をしてまで連れて行ってくれるんだね。
side聖
「寒いのに人多いな…」
くそっ!この時期なら空いているという淡い期待が……
「仕方ないよ。パークの中もエスコートしてくれると思ってていいんだよね?」
「任せてくれ!今日は何も考えず楽しんでくれたらいいぞ!」
「何で急に?何かあったのかな?」
ギクッ!?
そりゃこれまで何もしてこなかった奴が急にこんなことをすれば疑問に思うか……
浮気はしてないからなっ!?ご飯に毒を盛るなよ!?
って。聖奈が意味深な一人旅行(プロポーズを考える時間)を与えてきたんだから、ホントはわかってるんだろ?
流石の俺でもおかしいと気付くぜ……
だってあれで付き合うのはわかるけど、婚約…いきなり両親に挨拶に行ってあれよあれよと時間が過ぎていったからな。
なんか結婚するのが当たり前と思っていた俺も俺だけど、そんなプロポーズをしていなかったのは、流石に呑んだくれの俺でも覚えているぞ!
「ま、まぁ偶にはな?」
何とか誤魔化せた(?)俺は、聖奈をエスコートしながらテーマパークを楽しんだ。
いや、流石の俺でも心からは楽しめないよ?
そろそろ時間だ……
コ◯ンに出てくる爆弾犯よろしく腕時計をめちゃくちゃ確認していた俺は、聖奈を目的の場所へと誘導する。
「うわぁ!眠れる◯の美女のお城だ!!」
聖奈(妹)は知っていたんだな……
「よくわかったな…」
「それは私も女の子だからねっ!」
さいですか。
お城の中は他の客も沢山いた。
俺が予約したところは大丈夫だよな?
「あれ?立ち入り禁止になってる…ステンドグラスが綺麗で有名だったから観たかったのに…」
良かった…ちゃんと話は通っているようだな。
俺は立ち入り禁止の看板の前に立っているスタッフへと声を掛ける。
「入ってもいいかな?」
フランスでの身分証を見せると、中へと入る許可が降りた。
「えっ!?入れるの!?」
「ああ。行くぞ」
これ以上聞かれるとボロが出かねない為、聖奈の手を取り用意されている一段高くなっている場所へと連れて行った。
ステンドグラスがから漏れ出る灯りが、室内を神秘的な色へ染める。
「こんな所に台なんてあったっけ?」
ギクッ!?
どんだけ詳しいんだよ!!
バレる前に済ませるか……
俺は隠れているスタッフに目配せをすると、台の上で跪いた。
「えっ…」
「聖奈。急で驚いていると思うが…聞いて欲しい」
「…う、うん」
ふぅ。緊張がすごい……
「聖奈に初めてあった時のことは、今でも鮮明に覚えている。
聖奈にとってはもっと前だったと思うが、俺からしたら顔が見えなかったのだから、サークルで会ったのが初めてなんだ。
とても綺麗な子だと思ったよ。
でも、少しめんどくさい子だとも思ったな。
それからも色々あったけど、二人にとっての転機はあそこだろう。
まさかあの長濱聖奈が、俺のボロアパートに来て胡椒の瓶詰めをするとは、夢にも思わなかったよ。
そしてその後、一緒に旅もしたな」
周りの耳があるから異世界のことは暈すしかなった。
でも、聖奈になら、それも伝わるだろう?
「それからの出会いは、聖奈がいなかったらどれも起こり得なかった。
掛け替えのない仲間に出会わせてくれてありがとう。
そして、これまでこんな俺を支えてくれてありがとう。
沢山迷惑も心配も掛けたのに、離れないでそばにいてくれてありがとう。
これまでの聖奈に心からの感謝を。
そんな俺にとっての女神である聖奈を、これからの俺の人生をかけて幸せにしたい。
俺に聖奈を幸せにするチャンスを与えて欲しい。
長濱聖奈さん。私と結婚してください」
俺は指輪が入っている箱を落とさないように、慎重に開けて返事を待った。
跪いて下を向いているから反応がわからなくて怖い。
俺はこの時の時間が生涯で一番長い沈黙だと、心から感じていた。
・
・
「はぃ…不束者ですが、一生離れませんっ!!」
アンタが不束者なら俺はゴミかウ◯コだな。
俺は立ち上がると、指輪を嵌めてキスをした。
「「「コングラチュレーションズ」」」
「えっ!?なに!?」
俺達がキスをすると、隠れていたキャスト達が一斉に祝福してくれた。
本当は二人きりが良かったのだが、流石に客だけにするわけにはいかないと言われ、それなら盛大に祝ってくれと伝えていた。
「きゃーー!」
聖奈の恥ずかしくも嬉しそうな顔が見れたから、どうやらこの選択は間違いではなかったようだな。
ムカつくけど…姉貴に感謝しよう。
その後、テーマパークを手を繋ぎ楽しんだ俺達は、今日泊まるホテルへと到着していた。
「聖くん。今日はありがとう!一生の思い出になったよっ!」
ここはホテル内のレストラン。
ドレスコードがある為、二人とも着替えている。
俺はスーツで、聖奈は珍しくピンク色の可愛らしいドレスだった。
「喜んでくれてホッとしたよ。聖奈の期待に応えられたようで安心だ」
「期待?なんの話?」
「えっ?」
この後話し合った結果……
再プロポーズ自体、俺の勘違いだったことが判明した。
「ふふっ。聖くんらしいね。でも、お陰で私は世界一幸せだよ」
こんなことで普段頑張ってくれている聖奈が喜ぶのなら、またしよう。
俺は心のメモ帳に刻み込んだ。
「でも、一ついいかな?」
えっ!?な、なにか!?パーフェクトだったはずだぞ!?
「ホントは言うつもりなかったんだけどね。でも、勘違いだったみたいだから言うよ」
「死刑宣告でしょうか?」
やべっ。間違えて口に出しちゃった……
「ふふっ。違うよ。指輪のこと」
「気に入らなかったか?それならまた選びに行こう」
「そうじゃないよ。聖くんが一生懸命選んでくれたんだから、これ以上のモノはこの世にないよ。
そうじゃなくてね?
…なんでサイズがこんなに馬鹿デカいのかな?」
ブルッ
さ、殺気だ……
長らく修行をしてきて、終ぞ身につけられなかった殺気を感じる能力……
今、習得しました。
「えっ!?聖奈の指って12号なんじゃ…」
「そっか。聖くんから見た私の薬指って、そんなに太いんだね?」
ば、馬鹿な…ちゃんと聖奈が普段つけている指輪で測ったぞ!?
「12号は普段指輪をつけている中指のサイズだよ!?私の薬指は8号だしっ!!こんなに太くないもんっ!!」
この後めちゃくちゃ…………説明した。
「はぁ…どこまでいっても聖くんだね」
はい。私の名前は聖くんです。
「悪かった。今度直してもらいに行ってくるから許してくれ」
「ふふっ。そんな人に惚れたんだからいいよ。許してあげる」
あれ?ここは少女漫画の世界だっけ?
空気も甘けりゃ聖奈も甘い。
「それに、どうせ指輪を買いに行かないといけないから、一緒にいこっ?」
「えっ?指輪を買う予定だったのか」
「…結婚指輪だよ?」
「それじゃだめなのか?」
「聖くん…ホントに何にも知らないんだね……」
酒のことなら知ってるぞっ!?
この今飲んでいるワインはボジョレーじゃないとかなっ!!
「婚約指輪と結婚指輪は違うものなんだよ?」
「…知らんかった」
「こんなに大きなダイヤが付いてる指輪を普段使いしてる人なんて、見たことないでしょ?…こんなに高そうな指輪は普通の人には買えなさそうだけどね」
「1000万したからな。でも、確かにパートさんが付けてる指輪はシンプルだったな」
「…値段を言うのはやめよ?」
どうせ聖奈は予想つくんだからいいだろ?仕事で宝石を扱っているからな。
「でもこんなに高いのじゃなくても良かったのに…ありがとうございます」
「まぁ俺からすれば安いもんよ!ラスベガスでチョチョイのチョイよ!」
「は?…婚約指輪を買うのに貯金を崩したんじゃなくて、ギャンブルで稼いだのっ!?」
その後めちゃくちゃ………怒られた。
解せん……
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