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ライブ当日。
客席は満員。照明が落ちると、歓声が波のように押し寄せた。
こさめはマイクを握りしめ、深呼吸を繰り返す。
心臓は手のひらまで響く。
――ここで、すべてを伝えられるか。
一曲目。
声は掠れ、息が微かに乱れる。
観客の目は鋭く、モニターには冷たいコメントが流れる。
《やっぱりやる気ない》
《足を引っ張るだけ》
《脱退しろ》
胸の奥が、ひどく冷たく沈んでいく。
こさめは笑った。
🎼☔️「そうかもね……」
その笑顔は軽薄で、誰にも真意は伝わらない。
二曲目。
歌い出しで小さなミス。
観客のざわめきが、彼の心を抉った。
ステージ袖。
仲間の視線を探す。
リーダーも、メンバーも、誰も彼を見てくれない。
声をかけられることも、励まされることもない。
🎼☔️「……邪魔なんだろうな」
小さな声で呟く。
その声は、ステージの歓声にかき消されていった。
マイクをそっと置く。
その手の震えは、誰にも見えない。
🎼☔️「こさめ……もう、いいよね…?」
嘘の笑顔を作る。
本当は、歌うことが何より好きだった。
けれど、誰もそれを知らない。
🎼🌸「こさめ?待って!?」
メンバーの声も、観客席の歓声も、彼には届かない。
残されたのは、照明に照らされたマイクだけ。
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夜。
部屋に戻ると、机の引き出しにノートが残されていた。
びっしり書き込まれた歌詞。
努力の跡が、切なく光る。
“ほんとは、もっと歌いたかった。”
その文字を指でなぞることもなく、彼は静かに眠る。
外の世界は変わらず、誤解のまま。
誰も彼の本当の声を知らないまま、夜は深く沈んでいく。