「……なぁルビー、兄が妹に軽々と背負って歩いて運ばれる時の気持ち分かるか?」
「?」
「死にたい」
陽東高校までの通学路。
俺は下半身不随で、要するに足が動かない。
車椅子は学校の方で用意されるそうだが、行くまではミヤコさんが送ってくれる……筈だったんだが。
ルビーが「私が運ぶ!」と謎の見栄を張ったので、何故か俺がルビーに運ばれている。
「……はぁ、。他の生徒の目線が刺さる……」
「私は気にしないよ?」
「俺が気にするんだよ」
そうやってやいやいと話していると、どこかで見た赤髪ショートの背の低い女の子が近寄ってくる。
「……あんた、星野アクア?」
「……そうだけど」
「…うわ、恥ずかしいんじゃないのそれ」
「しょうがねぇだろルビーが『運ぶ』って言って聞かねぇんだし」
「……w」
「苦笑いやめろ」
喋った瞬間、『あぁ、有馬かなか』と思い出した。かなり変わっている。キツイ性格だったのが、かなり喋りやすくなった。
今は役者やっているのだろうか。
そう思っていると、先生が来たようで、車椅子を持ってきてくれた。
「ふー、」
「そういえばこの人……重曹を舐める天才子役だっけ?」
「10秒で泣ける天才子役!!」
「あー!そうそうそれそれ!」
どうやったらその間違いするんだ、と思いながら、アイが生きていた頃の平和さがふと思い出されて、つい笑ってしまう。
あの日が来なければ、あの日が来てさえいなければ。
あいつがアイを殺しに来なければ……
やばい、また来る。
「ばぁっ、は、ぁっ、けほっ、は、っ」
辛い、辛い、辛い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!
_________「アクアは役者さん?」
「…っ!!」
_________「2人はどんな大人になるのかな……」
「ぅ”え”、」
__________「ルビー、アクア、、」
__________「愛してる」
「かはっ、けほっ、ぉ”え、ごほっ、」
周りの声が聞こえない。
それどころか周りも見えない。視界がぼやける。
気持ち悪い。息を吸いたい。苦しい。
ぷつん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……ぁ、れ、」
知らない天井。やけに日が眩しく感じる。
「……ここ、保健室……」
「お兄ちゃん!!」
「アクア!!」
「……ぁりま、と、るび、ぃ、」
あぁ、そうだ。あの時俺、倒れて、
「……入学式は?」
「何それ美味しいの?」
「ダメだこれ……出てないやつだ、」
「私は出席自由だし」
有馬はともかくルビーは出ろよ、輝かしい高校生活スタートだぞ。
はしゃぎまくって昨日の夜俺の部屋で遊び疲れて寝たし。俺運べないから態々ミヤコさん電話で呼んで運んでもらったし。
「……車椅子、」
「あ、ごめん!はいどーぞ」
「ん、」
とりあえずクラスに顔だけでも出したい。
ということで。ルビーが付き添いながら今クラスに向かっている。教師陣の思いやりのおかげで1階のクラスになっていたからとてもありがたい。
がらがらがら、とドアが開く音がする。
「……すみません、遅れました、」
教室がざわめく。まぁそうだもんな。クラスに下半身不随の奴がいるなんて予想できないもんな。俺も居たらざわめく自信ある。
「あ、星野さん。自己紹介してくれる?」
「ふふ〜ん、私も星野だもん☆」
「うるさい、というかそろそろ自分のクラスに行け」
「えっ!?お兄ちゃんまた倒れないか心配じゃん〜っ!わたし離れないもん〜〜〜!!」
ぎゅーーーーーっ、と抱き着いてくる。
この場でよくこんなことできるな。と思いながらも妹の頭を撫でてしまうのは我ながらシスコン過ぎるな、と思う。
「……うちの妹がすみません。星野愛久愛海です。よろしくお願いします」
「星野るび」
「お前は聞かれてないから」
「ひどっ!?いつものシスコン度合いはどこいっちゃったの!?」
「お前ホント失礼過ぎだろ、いつか刺されるぞ」
「お兄ちゃんもミヤコさんと同じこと言われてたくせに〜!」
やばい、クラスメイトから羨望500mg嫌悪2g昨日から憎悪に漬け込んでおいたような視線を向けられている。
「ほらルビー、戻れ」
「先生絶対なんかあったら何時でも芸能科の方来てくださいね!!一瞬で駆け付けるんで!!」
ほら先生戸惑っちゃってるよ、「え、えぇ?う、ん?」って感じの顔してる……
「……本当うちの妹がすみません…あいつ昔から馬鹿で空気読めないんですよ。何でもズバズバ言うタイプで……」
「なんだと?」
「まだ居たのかよ、早く行け」
はーいと子供みたいに返事をして、やっと自分のクラスに戻る。
そこからはただ学校の決まりや説明をして、終わった。
「……星野、だっけ?なんで車椅子なの?」
「あぁ……昔色々あって、下半身不随」
「あ、あぁ、そう、」
俺もあんな中に居たからなのか感覚おかしくなってるのか……?
ーーーーーーーーーー
「お兄ちゃん友達出来た?」
「いや、別に友達作りにこの学校入ったわけじゃないし」
「あ、これ出来なかったやつだ……」
「話し相手くらいは出来たっつーの!元より一般科は芸能科と違って中高一貫で交友関係それなりに出来上がってて交友深めるのに時間が掛かるんだよ。別に入学ぼっちとかじゃねぇし。分かる?」
「お兄ちゃんがすっごい饒舌に話してる……」
こうやって話していると、自分が歩けないことも忘れられるくらいに楽しい。
やっぱり、家族は偉大だ。
「……有馬ってどこのクラスだ?」
「多分1階の一般科から1番近いとこ」
ご都合展開過ぎて怖い。まぁありがたいがな。
そう思いながら、有馬のクラスに向かう。
有馬は俺が下半身不随になってない頃の俺を知ってるから、本当にびっくりするだろうな。
……有馬と話していると、不思議とあの頃を思い出す。
楽しくて、もっと話したくて…もっと有馬のことが知りたくなる。
…初恋が転生後って、珍し。そもそも転生自体珍しいのにな。
不思議と頬が少し熱くなる。いつからこんなに乙女になったのだろうかと思いながら、ルビーのことを思って熱いのを誤魔化す。
初めて出会ったあの時から、ずっと好きだったのに気付くのは、まだ後のこと。
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コメント
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続き待ってまーす!!!!!
雪菜ちゃんの書く小説ってところどころ笑い要素入ってるんだけど、内容ほんとしっかりしてるから読んでてすっごい感情移入しやすい、、