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「第二章 銀河の旅路」(終幕)
星舟の夜
旅の途中、あなたとセレスティアは小さな補給船に乗り、星々の海を進んでいた。
赤月の光は相変わらず背後で揺らめいているが、今夜だけは戦いも追跡もなく、静かな時間が流れていた。
甲板に出ると、宇宙は無数の星粒で満ちている。
風はないはずなのに、セレスティアの長い髪が銀河の流れに沿ってふわりと揺れた。
彼女は小さな金属のカップを二つ持って現れ、そのうち一つをあなたに差し出す。
「飲みなさい。ここの星雲で取れる果実酒。ちょっと強いけど、悪くないわ」
口に含むと、甘さの奥に微かな苦味があった。
不思議と、胸の奥に熱が広がっていく。
しばらく沈黙が続いた後、セレスティアはぽつりと呟いた。
「……あの赤月が出るたび、私、同じ夢を見るの」
彼女の瞳は夜空を映し、遠くを見ている。
「夢の中で私は、誰かの名前を呼んでいる。とても大事な人。でも……目が覚めると、その顔も名前も思い出せない」
あなたは何も言わず、カップを置いた。
そして静かに、彼女の隣に立つ。
赤月の光に照らされ、二人の影が甲板に長く伸びていた。
「いつか……全部思い出すわ。その時は、きっとあなたも巻き込む」
そう言ってセレスティアは、わずかに笑った。
その笑顔は、どこか泣き出しそうなほど脆かった。
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