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雅也の戦いは、単なる海上戦闘にとどまらなかった。彼は、幕府への圧力を強めるために、さらに大胆な策を講じることに決めた。その目標は、出島であった。出島は、幕府によって貿易を制限するために設けられた島であり、江戸と大阪を結ぶ最も重要な貿易の拠点でもあった。この場所を制圧することで、雅也は幕府に直接的な打撃を与えることができると考えた。
だが、単独では出島を制圧するのは不可能だった。雅也は、朝廷の力を借りる必要があった。彼は、長年にわたり関わりを持っていた宮中の有力者、藤原家の者に接触を試みる。朝廷は幕府の権力に対して微妙な立場にあり、時には影響力を振るうこともあった。
「藤原家からの支持があれば、幕府を揺さぶることができる。」
雅也はその意図を達成するため、藤原家の元老、藤原政一に会いに行った。政一は朝廷内でも力を持つ男で、幕府の支配に対しても警戒心を抱いている人物だった。
「雅也殿。あなたの望むところはわかりますが、出島を制圧すれば、事態は一気に悪化します。」
藤原政一は眉をひそめて言った。だが、雅也はその意見をあえて反論しなかった。
「悪化しようが構わん。幕府の足元を崩さねば、どうにもならん。」
雅也の冷徹な言葉に、政一はしばらく黙って考えた後、静かに頷いた。
「確かに、幕府の権力を崩すためには、経済の根幹を揺るがす必要がある。しかし、私たちが関与すれば、朝廷の立場も大きく変わる。あなたはそれを覚悟しているのか?」
雅也は無言で頷くと、政一は少しだけ安堵の息をついた。
「それならば、我々は協力しよう。だが、その後の影響については、しっかりと後始末をつけるつもりでいなさい。」
政一はそう告げると、雅也に朝廷の支援を約束した。
朝廷の支援を得た雅也は、黒潮団と再び手を組み、出島制圧の準備を整えた。出島は幕府の商業の重要拠点であり、外敵の侵入を許さないように厳重に守られていた。だが、雅也には計画があった。出島への直接的な侵入ではなく、まずはその周辺の港を制圧し、交通を遮断することから始める。
黒潮団の海賊たちは、夜の海を渡り、出島へのアクセスを封鎖するために周囲の港を次々に制圧していった。商船を捕らえ、出島との連絡路を絶つことで、幕府側の守備力を弱め、最終的には出島自体の制圧に繋げる作戦だった。
「目標は出島そのものだが、到達する前に、周囲を押さえておく必要がある。」
雅也は海賊団の指揮官に指示を出すと、さらに詳細な計画を練り続けた。
そして、数日後、出島周辺はすべて封鎖された。商船が出入りできなくなり、商人たちも焦りを見せ始めた。
「もう時間がない。」雅也は冷静に言った。「一気に出島を落とす。黒潮団の船に乗り込み、いよいよ出島を手に入れる。」
ついに、雅也と黒潮団は出島を占拠するために動き出した。大名屋敷や商人の倉庫が立ち並ぶ出島の町は、夜の闇の中で静まり返っていたが、その空気を一変させる音が響く。
黒潮団の船が出島の埠頭に到着し、雅也とその手下たちは素早く上陸する。出島の守備は手薄だった。海上からの急襲を警戒していたが、周囲の港が封鎖され、連絡が取れなくなっていたため、出島内の守備はほぼ無防備だった。
雅也は兵を先導し、街の中心部に向かう。そこには幕府の役人や商人が集まっていたが、雅也が現れると、誰もが驚きの表情を浮かべた。
「雅也殿、何の用だ?」
出島の守備隊の長が立ち上がり、驚きと疑念の入り混じった声を上げる。
「用などない。ただ、この場所を頂く。」
雅也は冷徹に言い放ち、手下たちに号令を出す。すると、一斉に兵が動き出し、出島は瞬く間に雅也の支配下に置かれた。
出島の制圧後、雅也は黒潮団にその場所を渡すことを決定する。朝廷の協力を得たとはいえ、出島を自分の手に持つのは、後々大きなリスクを伴うと考えたからだ。代わりに、出島を黒潮団に任せ、その後の貿易に関するすべての権利を与えることで、彼らの協力を引き続き得ることを選んだ。
「出島はあんたらに任せる。」雅也は黒潮団の首領、黒瀬に渡した。「だが、この土地は幕府の支配を打破するために、今後も使わせてもらう。」
黒瀬はその言葉に満足げにうなずいた。「分かった。お前が言った通り、幕府が滅びれば、俺らももっと自由になれる。」
雅也は黙って頷き、出島を支配するための第一歩を踏み出した。彼の目は、すでに次の戦い、そして倒幕の最終局面に向けられていた。