遅れました…
すみません〜…
元貴Side……
クリスマスの朝は、やけに静かだった。
窓の外では雪が降っていて、白い世界がゆっくり広がっていくのを、僕はベッドの上から眺めていた。
最近は、季節を数える癖がついた。
次の冬は来るだろうか、とか。
次の春を見られるだろうか、とか。
「起きてる?」
ドアの向こうから聞こえた声に、胸が少しだけ軽くなる。
滉斗だ。
元貴「起きてるよ〜」
そう答えると、ドアが開いて、冷たい空気と一緒に滉斗が入ってきた。
普通の男子生徒。健康で、未来があって、本当なら僕とは違う道を歩むはずの人。
滉斗「メリークリスマス、元貴」
元貴「メリークリスマス、滉斗」
滉斗は当たり前みたいにベッドの横に座って、僕の手を取る。
その温度が、僕には少し眩しい。
滉斗「元貴、寒くない?」
元貴「大丈夫。滉斗の手、あったかい、すっごい落ち着く。」
滉斗は小さく笑った。
その笑顔を見るたびに、胸の奥がきゅっと縮む。
少し沈黙が流れてから、滉斗はポケットを探るようにして、小さな箱を取り出した。
何してるんだろう。
滉斗「なあ、元貴」
元貴「…うん?」
滉斗「俺さ、ちゃんと聞きたい」
箱を開くと、指輪が静かに光っていた。
クリスマスの日に婚約しようって言い出したのは、滉斗だった。
滉斗「俺と、結婚してください」
普通の言葉なのに、滉斗の声は少しだけ震えている。
僕の方こそ、震えそうだった。
元貴「……僕、先にいなくなるよ」
滉斗「分かってる」
元貴「置いていくの、すごく怖い」
滉斗「俺も怖いよ」
滉斗はそう言って、僕の額に自分の額を軽くぶつけた。
滉斗「でもさ」
近すぎる距離で、滉斗の目を見る。
滉斗「俺は、元貴と過ごす今を選ぶ」
逃げ道を作らない言い方だった。
奇跡を信じてるわけでも、未来を保証してるわけでもない。
ただ、覚悟だけがあった。
元貴「……よろしくお願いします」
そう言うと、滉斗はほっとしたように笑って、僕の指に指輪をはめた。
少し大きくて、でも確かにそこにある重み。
窓の外では雪が降り続いている。
僕の時間は限られているし、滉斗の人生はこれからも続いていく。
それでもこのクリスマスだけは、
僕は「幸せだ」と言ってもいい気がした。
婚約したからといって僕たちの生活が一気に変わることはなかった。
いつも通りの日常。
それでも婚約者扱いのような対応は滉斗でもしてくれる。
滉斗「元貴っ」
ぎゅー……
元貴「んー」
僕の病状を滉斗は婚約する前より心配してくれている。
滉斗「今いたくない…?」
元貴「ん」
滉斗「よかった」
最近は病状が悪化しているのか高熱を出すこともある。
夜は咳き込むこともある。
僕はもうそこまで長くはないのかもしれない。
元貴「滉斗、僕がいなくなったら、…どうする…??」
滉斗「元貴は居なくならない」
即答。
僕はその言葉にほんの少しだけ救いをもらったかもしれない。
僕は滉斗を抱いたまま顔を服に潜りつけた。
滉斗「元貴は俺がいなかったらどうする?」
元貴「死んじゃう」
滉斗「俺も同じだよ」
滉斗は優しく僕の頭を撫でた。
元貴「僕がいなくなったら、その指輪、…外すの…??」
滉斗「外すわけない」
元貴「滉斗…」
滉斗「…元貴」
僕たちは軽くキスをした。
滉斗の唇は温かく、僕を見捨てない様なキスをしてくれる。
滉斗「元貴…愛してる。」
その日の夜、2人は優しく身体を重ね合った。
僕が死ぬまでたくさん愛してね。
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