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廊下の角を曲がった伊沢は、開いたままの会議室のドアから漏れる、妙に濃密な空気に足を止めた。
izw「(……ん? 誰か残ってんのか)」
何気なく中を覗き込もうとした伊沢は、反射的に壁の陰に身を隠した。視線の先では、福良と山本が並んでデスクに座っている。いや、座っているというより、福良が山本の左手を手繰り寄せ、その細い指先を愛おしそうに唇でなぞっていた。
ymmt「……あ、ふくら、さん……っ」
福良は微笑んだまま、山本の親指の付け根に、ゆっくりと歯を立てた。 痛くない程度の絶妙な圧。けれど、湿った舌先が時折触れるその仕草は、逃れられない熱を持って山本の肌を這う。
ymmt「……んっ、……ぁ、……ふ……っ」
山本が小さく喉を鳴らし、肩を震わせた。 福良の醸し出すあまりの「色気」に当てられてしまったらしい。
山本の瞳は潤み、熱を帯びた吐息がこぼれる。その圧倒的な色っぽさに飲まれまいと、山本は空いた右手で福良の人差し指をぎゅっと掴み、自分の口元へ運んだ。
ymmt「……ぼくも、……やり返します……っ」
福良をドキッとさせてやろうと意気込んで、指に歯を立てる。けれど……。
ymmt「……んぐ、んぐっ……ふくら、さん、……はむ……っ」
やはり山本の甘噛みは、驚くほど下手だった。 指の関節を上手く捉えられず、ただ「はむはむ」と不器用に吸い付いているだけ。
一生懸命に顎を動かして「色っぽさ」を出そうと奮闘しているが、そのんぐんぐと必死な様子が逆に、たまらなく「かわいい」子犬のじゃれつきに見えてしまう。
fkr「……あはは! 山本、それ全然噛めてない。ただの吸引だよ」
楽しそうに笑った福良は、山本の不器用な抵抗を愛おしそうに見つめると、空いた手で山本の柔らかな髪を優しく、ゆっくりと撫でた。
fkr「……本当、山本は可愛いねぇ」
ymmt「……っ、……もう、子供扱いしないでください……」
そう言いながらも、山本は心地よさそうに福良の手のひらに頬を寄せ、再びその指を不器用にはむはむ、んぐんぐと食んでいる。
壁の向こう側で、伊沢は静かに天を仰いだ。
fkr「(……福良のやつ、あのトーンで『可愛い』は反則だろ。で、山本はあの下手くそな噛み方のまま甘え始めて……。これ、テストに出るな。福良はエロい、山本はかわいい。絶対にだ)」
クイズ王は、これ以上見ていたら自分の理性が危ういと判断し、足音を忍ばせて静かにその場を後にした。
(おわり)