テラーノベル
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照明の落ちた部屋は、テレビの光だけが淡く光っている。
映画のエンドロールが流れる中、なるせは毛布にくるまってソファの端。
その隣で、らっだぁが脚を投げ出して座ってる。
無言のまま、ちょいちょい視線を送ってくるのがうざったい。
「ね〜、なるちゃ~ん」
「その呼び方やめろって、何回も言ってんだろ」
「えーー。だって全然、構ってくんないじゃん。
……それに、さっきからちょっと距離あるし。もう付き合ってんだから、もっとくっついても良くない?」
「それは、お前が近いだけ。……俺は…普通」
「はいはい、ツンツンなるせ。
──ほら、こっち来て」
ぐいっと手を伸ばされて、なるせは引き寄せらる。
抵抗しようとしたけど、なんか、負けるのが悔しくて、口だけになる。
「……ほんま、距離感おかしい…お前」
「でも嫌じゃないでしょ?」
「……」
毛布ごと引き寄せられて、肩がぴったりくっつく。
体温が伝わってきて、なんか落ち着くのがムカつくけど、安心する。
「お前さ、付き合う前から思ってたんだけど
── 甘えたら絶対可愛いよな」
「絶対やだね」
「うん、わかってる笑。
──だから、俺が甘やかす」
そう言って、らっだぁがなるせの髪をくしゃっと撫でる。
ピンクの髪が指に絡んで、静電気みたいに鼓動が跳ねる。
「ちょ、髪崩れるから、やめ──」
そう言いかけた瞬間、
らっだぁが突然、頬にキスを落とした。
「……っは、なにすんだよ……」
「いや、キスくらいするだろ、彼氏だもん」
「……ばっかじゃねぇの……」
そう言いながらも、なるせは逃げない。
顔を少しそむけただけで、体は寄り添ったまま。
「なるせ、もうちょいこっち。
ちゃんとこっち向いて?」
「……やだ」
「じゃあ、俺が向かせるからいい」
「!……」
ゆっくりと、両手でなるせの頬を包んで、
らっだぁがもう一度、今度は正面からキスを落とす。
さっきよりも深く、ゆっくり。
目をぎゅっと瞑るなるせは睫毛が震えている。
「……お前、ずるい」
「でしょ。でも、お前にだけだから」
ふたりの距離はもう、どこにも逃げ場なんかなくて。
ただ、甘く重なっていくだけだった。
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