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キーンコーンカーンコーン……。
チャイムの音が鳴ると同時に担任の教師が教室へと入ってくる。
ホームルームの時間が始まったようだ。
「さて、みんな知っていると思うが今日は転校生を紹介するぞ」
教師の言葉を聞いてクラス中がざわめき始める。
それも仕方ないだろう。この学園では珍しい出来事だし、ましてや男嫌いで有名な生徒が来るなんて誰も予想していなかったからだ。
しかも女子ではなく男子である。
一体どんな人物がやって来るんだろうか? 興味津々といった様子の生徒達に向かって教師が扉を開けるように指示を出す。
ガラリと音を立てて開けられた先にいた人物を見た瞬間、僕は全身の血の気が引くのを感じた。
何故ならそこに立っていた人物は他でもない、この学園一の人気を誇る生徒会長であったからだ。
しかもそれだけではない。
彼女の後ろに控えている取り巻き達の姿を見ると、全員がお揃いの黒いローブを着ており、手には先端に十字架がついた棒のようなものを持っていた。
「……まさか貴方が犯人だとは思いませんでしたよ」
「あら、随分な言い方ね。まるで私が何か悪いことをしているみたいじゃない?」
彼女はわざとらしい笑みを浮かべながら言うと、そのままゆっくりとこちらへ近づいてきた。
一歩進むごとに周囲の空気が張り詰めていき、緊張が高まっていく。
そしてついに目の前にまで来たところで立ち止まると、生徒会長は静かに口を開いた。
「ねえ、貴方がやったんでしょう? 早く認めなさいよ」
高圧的な態度で言い放つ彼女に、僕は呆れた表情を向ける。
「何を馬鹿なこと言ってんですか。一体どういう思考回路をしてたらそういう結論に至るんですかね?」
「とぼけないで! あの子があんなことになってしまった原因は貴女以外考えられないわ!」
そう叫ぶと同時に勢いよく振り下ろされた杖の先端が床に当たり、鈍い音が鳴り響く。
そのあまりの迫力に気圧されそうになったものの、なんとか堪えて睨み返すと、今度は彼女の方が顔をしかめた。
そしてしばらく沈黙が続いた後、やがて生徒会長がぽつりと呟く。
「……本当に何も知らないっていうの?」
「ええ、残念ながら全く心当たりはありません」
「嘘よ! だって、じゃああたし達は……あたし達って一体なんのために生まれてきたっていうの!?」
少女――日奈森伊織の言葉を聞いた時、天川拓留の心に浮かんできたのはその言葉に対する違和感だった。
そもそも伊織にはこの問いを投げかける権利があるのか、という疑問もある。
だが同時に、これは問いかけられなければおかしい問題だとも思った。
なぜならば彼女にとっての世界とは、今まさに崩壊しようとしているからだ。
「いおりんさぁ、あんたが言うことじゃないんじゃない?」
呆れた口調で言ったのは、伊織の親友・六倉志乃であった。
彼女の手には一冊のアルバムが握られている。
そのアルバムの表紙に書かれているタイトルは、『日奈森家秘蔵写真集~伊織の成長記録~