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#メスガキ
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最初に勇者様を見たのは、まだ幼い子供の時だった。
当時の俺は勇者様に強く憧れていて、彼が我が家を訪れると知った時は飛び上がるほどに喜んだ。
俺が済んでいた場所は何もない辺鄙な町だ。そんなところに勇者が来てくれると知って喜ばないわけがない。
でも、期待はすぐに裏切られることになる。
勇者様は俺の家に入ってすぐ、なんと室内を物色を始めたのである。
これではまるで空き巣だ。泥棒だ。俺は憧れの勇者様にそんなことをしてほしくなくて、注意しようとした。でもそれは両親が許さなかった。
『勇者保護法』
魔王を倒すために命を懸けてくれる勇者様に対して適用される法律だ。基本的に一般人は勇者様のすることに口を出すことはできない。勇者様はこの世界で絶対の存在なのである。
だから俺は何もできなかった。
パリン!
我が家に代々伝わる高級な壺が無慈悲に割られる。
俺は悔しくて仕方なかった。でも、当時の俺は無力で、両親の手を振りほどくこともできずに見守ることしかできなかった。
そしてしばらく室内を物色した勇者様は、家を片付けもせずに無言で出て行った。
両親は嵐が過ぎ去った後のように安堵の表情を浮かべてから、黙々と後片付けをしていた。
その時、父が壺の破片で自分の手を切った。その傷からばい菌が入って父は病に倒れた。
これがきっかけで、俺の家は崩壊することになる。
病身の父を支えるために母が始めた事業が大繁盛して俺の家は裕福になった。
父も設備の整った教会で病を治して元気になった。それから二人は都会に住むと言って町を離れていった。
――残りたいと言った、俺を置いて。
くそ! くそ! くそ!
もしあの時、勇者が俺の家にきて壺を割らなければ。
今頃、俺たち家族はバラバラにならなくてすんだのに!
全部勇者のせいだ。
母が自分の商才に気付いたのも。
父が専業主夫の才能に目覚めたのも。
俺のために都会から毎月たくさんの仕送りが届くのも。
全部全部、勇者が壺を割ったせいだ!
勇者が壺を割らなければ、家族みんな一緒に過ごせていたはずなのに。
許さない。
俺は勇者を許さない。
だから俺は決意したのだ。
勇者でも、絶対に割れない壺を作ってみせると!
――こうして俺は、最強の壺職人になったのである。