夜中、息が詰まるような静けさの中で、
また同じ夢を見た。
小学生の俺は窓の外をじっと見ている。
だれかの大きな笑い声、楽しそうな会話…その全部が、二重窓の向こう、別の世界みたいだった。
「クロノア、早く机に向かいなさい」
母親の声は冷えた水みたいに背中を打った。
その手は昔から、俺の成績が良い時だけ撫でてくれる。
……少しでも点数が下がると、食卓に会話はなくなる。
壁にかけられたカレンダーが、何日も静かにめくられていく。
幼い俺は、本当はみんなと遊びたかったのか、それとももう遊び方すら忘れてしまったのか――もう分からない。
目が覚めると、高校の薄暗い教室。
窓の向こうの青空が、やけに遠い。
sn「クロノアさん、今良いですか…?課題手伝って下さいっ!!」
しにがみが明るく声をかけてくる。
ああ、また「優等生」の仮面をつける時間だ。
kr「うん、いいよ」
微笑む唇の裏側で、心はつめたい石みたいになっている。
誰も、俺の中身なんて見ない。
良い成績、頼れる相談相手、都合の良い存在。それが俺――“クロノア”に貼られた値札。
昨日も、その前も、ずっとひとりで勉強していた。
ドア越しの親の足音が止まるたび、息をひそめる習慣が抜けない。
優等生でなければ、俺は“いらない子”だって、もう理解してしまっている。
黒板の字がぼやける。
しにがみやトラゾー、ぺいんとは、今日も何気なく笑い合っている。
けれどその輪の中心に、俺の居場所は最初から無い。
この日常は、仮面の上にさらに仮面を重ねる繰り返し。
「本当の自分」
なんて、とうの昔にどこかへ消えてしまった。
昼休み、誰にも見られないようにスマホのメモ帳を開く。
そこには、ただ一行だけ残っている。
――“優等生として生きていくしか、俺には選べない。”
画面を消すと、また笑顔の顔が勝手に貼りつく。
その奥で、心臓の音だけがやけにうるさく響いていた。
コメント
4件
なる、ほど、、 これは、面白くなる予感だ!
こういうシチュ大好き(*^ω^*)