次の日、またグルッペンから任務を告げられた。
「貿易相手国の暴れてる奴らを処分しろ。」
どうやらもう、その国と貿易することはないのだろう。いつも通りハイル・グルッペンと返事をして部屋を出た。またいつも通りか、ただ任務を成すだけと思っていたのだが、実際そうではなかった。朝から頭がガンガンと痛いし、息もしずらく、汗を沢山かきすぎている。それでも出来ないとは言うまいと、無理をして任務をすることにした。
暴れてるヤツらというのは、きっと俺らを信用しきっていないヤツらとか反乱を起こそうとしている奴らだろう。自分の為なのかは知らないが、相手国を戦争させまいと少し慈悲があるようにも感じる。そんなことを考えているとすぐ本部が見えた。我々国の者だ、と言うと簡単にもんを通してしまい「警備大丈夫なんか?」と心配している。中に入ると反乱軍だろうか、それらが銃を構えていた。警備員は中の状況を把握しているのか?と思いながら、トッと飛び銃を構えていた2人組を呆気なく確保。銃弾をぶち込んで殺した。するとおよそ100人超えの仲間が俺を襲ってきた。瞬殺してやると思いながら手を動かした……だが、身体が思うように動くことはなく、ダンベルでものせてるのか?と思うほど重かった一人一人確実に殺していると背後に入られて左足に1発右腕に2発銃弾を入れられた。関節は当たらなかったがそこそこの痛さだ。さっきよりも鈍くなった体を無理に動かす。
それから全員殺した。国王軍には感謝されたが、俺の傷を癒そうとはしなかった。足と腕に銃痕顔や腹にはナイフがかすった傷。深くはなかったが何故か感覚が敏感でとても痛く、止血できなかった。
「ハァ…フ、うっ!…ハァ」
呼吸も正常ではなかった。それでも帰らなければ、自分の居場所に、仲間を心配させたくも、自分がこれ程弱いとも認識されたくなかった。
☆。.:*・゜
今日、ゾムさんは朝からおかしかった。いや、昨日からや。しゃべり方はふわふわしてるしこめかみをギュッと押さえつける動作を何回も見かけた。しかもちょっと走るとすぐ息切れて、私よりも体力が内科のように見えた。味方最大の脅威。その名を持つ彼がこんなはずないのだ。
「なんか隠してるんじゃ…」
声が漏れる
「ん?なんか言ったか?エーミール」
まずい、シャオロンさんに聞かれるところだった。
「ゾムさん、帰り遅いですね」
「せやなぁ、ゾムのことなら1時間程度で終わらせて帰ってくんのに」
「もう5時間もかかってんねんで?おかしいやろ」
「まぁ、信じましょ!帰ってきますよゾムさんなら!」
適当にバレない程度に言葉を交わす。でも内心すごく心配していた。すると遠くから門の警備員の声が聞こえてきた
「どうしたんですかその怪我は!ゾム幹部!」
「なんや、エーミールいくぞ!」
「はい!急ぎましょう」
心配でならなかった私は普段、誰よりも体力は無いのだがシャオロンさんよりも早く走ることが出来た。
門に着くと傷だらけのゾムさんが、今にも倒れそうなのによろよろと立っていた
「ゾムさん!」
「ゾム!」
「シャ、オロ…エ、ミ…ル」
私たちの名前を呼んでゾムさんは倒れた。シャオロンさんが走って、床にぶつかる寸前、ゾムを抱き上げた。ゾムさんは血だらけで傷だらけ。私は医務室に!とシャオロンさんを指示すると元気な返事が返ってきたため、走ってゾムさんを医務室に運んだ
☆。.:*・゜
「あ、れ?ここ、は…」
自分の国の医務室だと瞬時に理解した。安心する。俺は、確かエーミールとシャオロンの前で倒れたっけ?記憶が曖昧だ。
「起きたか、ゾム」
トントンがまぁまぁ低い声で俺に話しかける。話を聞くと俺は傷だらけで帰ってきたようだ。血は出しすぎ、骨もボロボロであと少しで死んでいたらしい。感謝せな。申し訳なさから体を起こしたその瞬間、体がぐるっと回転した。いや、世界が回転した?状況を理解すると俺は倒れてた。
「ゾム!無理すんな、お前ボロボロだ…って」
トントンは俺を抱き上げようとすると何かを言おうとしていた。
「ゾム、お前絶対熱あるぞ。傷じゃなくて、お前が」
俺はそう言われると、頭と腹が蝕まれるように痛んだ。
「っあ!く、ぅ」
「ゾム!大丈夫か!?」
あまりにも痛すぎて、言葉を発せず、喉からはひゅーという音が出た。
「ひゅ、はっ…か、ひゅ」
「落ち着け、ちゃんと息しろ」
トントンは俺の背中を擦る。ようやく落ち着いて、ベッドにも戻り、俺は大人しくしていた。
「トン、ト…大丈夫やからッふぅ、仕事戻りや?」
「病人を置いてけるわけないやろ!」
そう言っても、俺は反論して、ようやく分かったと言ってもらった。そう、普段頑張ってるトントンにこれ以上迷惑をかけることは出来なかった。なんとしてでも仕事を終わらせてもらって寝てもらいたかった。
「…じゃあ、俺の代わりに誰かついてもらうわ」
俺は困った顔を一瞬だけして、仕事終わってる人でいい。と応えた。するとトントンはエーミールでええか?と言うのでエーミール、すまんな
時間がたつとエーミールが凄い顔で来た。ちょっと笑えるけど。
「ゾムさん!もう任務行かないでください…」
半泣き顔でそう言うので、大丈夫やからなとエーミールに言ってやった。……立場逆やろ?普通。まだ15:00、外は明るく、カーテンの隙間から入ってくる光が目とともに脳も刺激して痛い。それを察したエーミールは移動して、自身の影に俺の身体を置いた。やっぱ、エミさんよな。こんな優しくて心がわかる人おらんやろ。そう思う。エーミールをよくいじるが、世話になっている。エーミールに感謝しないやつなんかおらんやろ。いたらぶっ飛ばす。眠くなってきた…
「寝てもええか?」
「いいですよ、何かあったら言ってください。ここにいますので」
熱のせいか分からんけど、優しさがどうも染みて泣きそうになった。
数分後、俺は真っ暗な部屋にいた。何も無い。そう感じたのは一瞬だけだった。黒いロングコートを着た男。グルッペンだ。何を言われるのだろう、そう思った。
「ゾム、なぜ任務完了出来なかった。まだ反乱軍はいたんだぞ?」
冷たい視線で見られている。嫌だ、やめてくれ。するとグルッペンは普段俺に言うはずのない暴言、愚痴を吐いてどこか暗いところで消えた。ひゅーといやな音。俺の喉からだとは理解できなかった。次に現れたのがエーミールだった。エーミールもグルッペンと同じように暴言などを吐き捨てたゴミだの要らないだの無能だの。すると俺の手にポタッと水が落ちた……ああ、泣いてんのか俺。
「やめ、ひ、ぐぅ、ぐずッ、や、ら」
怖くて仕方がない、他の奴らにも言われんじゃないかって、怖くて怖くて、もう耳を済ませたくなかった。
「厶、ん…ゾ、さん…ゾムさん!」
エーミールがいた、こわかった。俺は泣いてた。
「ひぅ、近寄んなやぁ!」
思わず怒鳴ってしまって、やばいと思っているとすぐ様過呼吸になった
「ひゅ、かふ、あ、ぅひゅ」
「ゾムさん!……落ち着いて、ゆっくり呼吸しましょう」
優しい声で言っていた。あぁ、夢だったのかそう思うと安心した。
「エミ、さ!こひゅ、ひゅ、ぅ」
「大丈夫大丈夫ここにいますよ」
そう言うと俺を抱きしめてくれるから、俺はエーミールの服を強く握った。
「っす、はぁ、すー、はぁぁ」
「大丈夫ですよー」
ずっと頭を撫でてくれて凄く安心した。
「エミさ、ん」
「はぁい?」
「どこにも行かんとってや、そばに、おって」
「勿論ですよ、ずっと居ます」
落ち着いた。こいつは何者なんだと思っていた。涙が止まらなくて、止めようとするとエーミールが俺を撫でるから、余計止まらなかった。ボヤけた目で時計を探していた。
「今は20:50です。夜ご飯食べれますか?」
「んん、い、い食べたくない」
するとエーミールはびっくりした顔をした。そりゃそうだ、食害の俺が食べたくないなんて言葉を口にしたんだ。
「水は飲めますか?というか、飲んでください」
ごくんと水を飲む、俺は風呂に入りたいとエーミールに言うと、2人で入りますか?と言った。俺が心配なのはわかるけど…
「いや、1人で入れるから、大丈夫や」
「そうですか、私は自室で入りますので」
「いいですか?シャワー浴びる程度ですよ?」
分かってるよ。と応えて風呂に入った。傷は痛むが問題ないだろう。
医務室に戻ってきた。体が重だるくて仕方ない。エーミールはまだ帰ってきていない…寂しい……布団の中で3角座りをして、エーミールを静かに待った