――選ばなければならない。生きるか、死ぬか。それとも、支配するか――
戦場の空気は重く、張り詰めていた。タクトとルシファー、二人の異能がぶつかり合い、世界はその中心で歪んでいく。周囲の空間が引き裂かれ、まるで無限に続く法の条文が空中に浮かぶ中、タクトは冷静に状況を見極めようとしていた。
ルシファーは楽しむかのように笑いながら、再び異能を発動する。目は、支配し、法で裁くことに酔いしれているようだった。
「お前は、選べないだろう。人生を振り返ってみろ。」
ルシファーはその言葉とともに、空間に一枚の文書を作り上げる。それはタクトの過去を記録したかのような、巨大な「契約書」だった。その中にはタクトの犯した数々の罪、欲望、罪深さが浮かび上がっていく。ルシファーは見せつけるように掲げた。
「お前のような存在は無力だ。」
タクトの目の前に現れるその文書には、彼がこれまでに背負ってきたすべての悪行が書き込まれていた。それらはすべて法的に証明されたものであり、タクトがどんなに足掻いても逃げられない「過去」の証拠となる。
――だが、タクトの心は揺るがない。
彼は静かに息を吸い込み、冷徹に前を見据える。ルシファーの言葉は、確かに過去の痛みを呼び起こしたが、それは今の自分を定義するものではない。過去を背負い、痛みを感じてもなお、タクトは前に進む決意を固めていた。
彼はその瞬間、何かを決意したかのように視線をルシファーに向ける。
「関係ない。」
タクトの声には冷徹さと確信が込められていた。その瞬間、彼の異能「警告」が炸裂する。今度はただの警告ではない。ルシファーが使う「法」をも超越する、存在に警告を発する異能。タクトは心の中で、過去を超えて未来を切り開く力を信じていた。
「警告――お前のルールは、今日で終わりだ。」
タクトの声とともに、空間の法則が崩れ始める。ルシファーが作り上げた「契約書」が浮かんでいる空間に、タクトの「警告」が直撃する。それは単なる予告ではなく、全ての「法」を無効化する力となる。
ルシファーが一瞬、驚きの表情を見せた。しかし、すぐにその驚きは冷徹な笑みに変わる。
「お前、そんなことができると思うのか? この世界の法則を超える力など、存在しない。」
ルシファーは空間を一振りし、無数の法的条文がタクトの前に現れる。その文字が次々と現れ、彼の周囲を囲い込もうとする。しかし、タクトは一歩も引かない。彼の目には決して迷いの色は見えなかった。
――一瞬の静寂――
その瞬間、タクトは完全に異能を解放する。彼の周囲に「警告」の音が響き渡り、空間が一瞬にして静止する。それと同時に、ルシファーの周囲の法則が破られ、ルシファーが作り上げた法的束縛が崩れ去った。
タクトの力は、ルシファーが持つ「法」に対抗できる唯一の力だ。彼の警告が、ルシファーを無力化し、空間を圧倒する。
「どうだ、ルシファー?」
タクトは静かに言った。彼の声に情けは感じられなかった。それはただ、戦いに勝つための力強い言葉だった。
――だが、ルシファーはまだ笑っていた。
ルシファーはタクトを見据え、微笑んでいる。その表情には、どこか哀しみすら感じさせるものがあった。
「お前は本当に、変わらないな。」
その一言が、タクトの心に刺さる。しかし、タクトはその感情に流されることなく、冷静に答える。
「何が変わるんだ? お前のやり方も、俺のやり方も、結局はこの世界における「選択」なんだ。」
ルシファーの笑顔が少しずつ消えていく。そして、再び二人の異能が衝突する。タクトの「警告」と、ルシファーの「法」、それはどちらが勝つのか。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!