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絶対に文句を言われるだろうという予想は当たっていた。食卓を見て早速幹雄が文句を言ってきたのだ。
「今日は一品少ないね。暇な専業主婦のくせになにをしていたの? 仕事をしていたわけでもあるまいし」
美晴は唇を噛んだ。幹雄が家庭に入って僕を支えて欲しいというので従い、結婚を機に勤めていたカフェは退職したのだ。惜しまれつつの退職だった。本当は仕事を続けたかったのに、と喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。『暇な専業主婦扱い』を受けて悔しい気持ちでいっぱいになったからだ。しかし養ってもらっているのは事実。言い返すことなどできない。
「ごめんなさい。今日はお義母さまの送迎をしていて……」
「言い訳はいいって。たかが送迎でそこまで時間がかからないだろ。サボって遊んでいたんじゃないのか?」
「そんなことっ……! あのでも、少し待っていただけたらすぐに用意しますから。間に合わせることができなくて申しわけありません」
「ふー…もういいよ。お酌して」
「はい!」
痛む胃を押さえながら微笑み、夫の機嫌を損ねないように必死に取り繕う。
食事に満足した幹雄は、明日から気を付けてよ、と言いながら風呂に行ってしまった。
(今日は機嫌がいいから許してもらえてよかった)
普段ならもっとネチネチと嫌味を言われ続けるが、あっさりと終わってくれたのでほっと胸を撫でおろす。これ以上胃が痛まないように気を付けなければ、お腹の赤ちゃんに影響がある。
(ようやく授かった赤ちゃんだもの……大事にしなきゃ!)
美晴はまだ膨らみのない腹を撫でた。自分の体内を通じてここに赤子の尊い命が繋がっているのだと思うと、どんなことでもできる気がした。
しかし、美晴の気持ちとは裏腹に義母たちの思惑は違った。美晴の報告が嬉しかったために、和子は幹雄に連絡を取った。
『幹雄ちゃん? やぁぁっと私も孫ができるのね』
「そうだよ」
『いくら従順でも、子供が産めなかったら離婚させようと思っていたところよ』
「ようやく利用価値が出てきたんだ。せいぜい松本家のために働いてもらうさ」
『楽しみねぇ~』
ニタリと笑う和子の顔は、モンスターそのものだった。