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「戻りましたー」
「ましたー」
「ああ、疲れたわい」
数日後、私は妻2人と一緒に―――
ザハン国・ロックウェル家の屋敷へと
帰還していた。
「最後に1発かませて良かったわ」
「お疲れ様でした、ルクレセント様」
切れ長の目をした、ロングの銀髪を持つ女性に、
犬のような耳と巻きシッポを持つ獣人族の少年が
話しかけ、
「ご苦労だった。
疲れてはいるだろうが、まず報告から
聞きたい。
この件については、辺境大陸はおろか
クアートル大陸の四大国も注視している
からな」
グレーの短髪に白髪の混じった筋肉質の
御仁……
ライオネル様が先を促し、
私たちはひとまず、これまでの経緯と状況を
説明する事となった。
「では―――
やるべき事は一通りやった、という
感じですかな」
真っ白い眉毛とヒゲの老人……
この屋敷の主、ベルマイヤさんが
うなずきながら答え、
「ですが、フェンリル様に頼んであちらの
魔法や魔導具を無効化という話―――」
「信じて頂けるのですか?」
金髪を腰まで伸ばした童顔の女性に、
眼鏡をかけた黒髪ミドルショートの女性、
ライさんの秘書であるサシャさんと
ジェレミエルさんが彼に聞き返すが、
「信じるも何も、そのお姿をこの目で
見ておりますからなあ。
奴隷たちを隷属から解放したのも。
浮遊島の事も知らされておりますし、
もうたいていの事には驚きませんぞ」
ベルマイヤさんには拠点を用意してもらっている
以上、ある程度の秘密共有はしている。
もっとも、自分が『境外の民』であるという
事は、ハッキリとは明言していない。
逆を言えばもうそれくらいしか秘密にして
いないとも言えるけど。
「そういえば、魔族や他の方々は?」
四天王とも呼べる魔族4人、そして
レイド夫妻やワイバーンのハヤテさんも
室内には見当たらず、
「空を飛べる人員には、一応ザハン国周辺を
警戒してもらっている。
あちらさんも何か仕掛けて来ないとは
限らんしな」
ライさんの言葉に私はうなずき、
「しかしまあ、あちらさんは今頃大騒ぎ
だろうし」
「仕掛けるどころか、休戦交渉に
差し障りが無ければ良いがの」
アジアンチックな妻と、欧米モデルのような
396
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#僕のヒーローアカデミア
対照的な妻2人が話しに入り、
「フェンリル様のお力で……
新魔導塔を中の人間・魔導具ごと魔法を
封じましたからね。
原因究明に躍起になっているでしょう」
それを聞いたルクレさんは胸を張ってドヤ顔で、
隣りのティーダ君は私の能力である事を知っての
上か、苦笑するような表情となる。
「かつて我が軍の跳ねっかえりどもを
改心させたという―――
魔法封じですか。
さて、モトリプカ側はどう出てくるやら」
ベルマイヤさんが姿勢を正しながらそう
語ると、
「こっちはやる事は全部やったからな……
ま、すぐに『連絡』は来るだろうよ」
『見えない部隊』リーダーとしてこちらに
来ている彼は、一仕事終えたと言わんばかりに
大きく息を吐く。
「来ますかな?」
「来るだろう。すぐに」
老人の問いに自信満々にライさんが答えると、
「断言するのう」
驚きとも呆れとも取れない言葉を
ベルマイヤさんは口にする。
「まー、連中とてバカじゃあるまい。
似たような状況を模索し―――
そしてその解決策を見つけようとするやろ」
「ルクレセント様は一度、この国を相手に
魔法封じ、そして解除を行っていますからね。
そういう意味では、すぐにザハン国へ連絡を
寄越すだろうだろうという推測は、間違って
いないかと思われます」
人間の女性の姿をしたフェンリルの後に、
その夫(予定)である獣人族の少年が続き、
「んじゃ、それまでこちらで待たせてもらうと
しましょーか」
「シンー、何ぞ作ってくれぬか?」
メルとアルテリーゼが料理をねだり、
私は頭をかきながら厨房へと向かった。
「新魔導塔内にいた者は全員?」
「どうもそのようです」
モトリプカの首都・エムビーア……
新魔導塔を一望出来るとある施設の部屋で、
青みがかった短髪に白髪交じりの頭をした、
アラフォーの男が、
従者である赤い短髪を持った青年と
やり取りをしていた。
「魔力はある―――
だが魔法が使えん。
新魔導塔も動力源の魔力に異常は
見られない。
だが、内部にある魔導具が全て
故障・不具合を起こしたと聞いている」
「下手に壊れるよりよほど厄介です。
完全に壊れてしまえば総取り換えも
可能ですが……
何せ魔法が発動不可になったのは、
原因不明ですからね。
それも、人間も魔導具もまとめて―――」
プラクスの言葉に、ドルミンは眉間にシワを
寄せる。
「外部にこの情報は?」
「ドルミン様の命で、口外法度にして
おりますが……
いずれ漏れるのは時間の問題かと。
何としてでも―――
その前に解決策を見つけなければなりません」
どちらからともなく、重い空気を吐くように
ため息がつかれ、
「解決策……
魔導具だけならまだしも、俺たちまでが
魔法を行使出来なくなっているのだぞ。
こんな事態は初めてだ」
「新魔導塔にいた技術者や関係者までもが、
同じ症状を訴えております。
やはりこんな出来事は前代未聞だと。
ですが―――」
そこで従者はいったん口を閉じ、主人が視線で
先を促すと、
「やはり……
数ヶ月前にあったザハン国の一件。
これに酷似しているかと思われます」
「軍の一部が暴走し、辺境大陸に攻勢を
仕掛けようとしたアレか。
フェンリル様が介入し彼らの魔法を封じ―――
『誤解』が解けたので直してもらったという、
あの……」
ザハン国での一件は彼らの耳にも当然入って
いたが、
彼らはそれをただの噂、もしくは情報操作に
よるものだととらえていた。
「フェンリル様に詫びを入れる?
どうやって?
そもそもこれが、そのフェンリルとやらの
仕業かどうかも」
「ですが、自分もあの時見ました。
あの巨大な狼が―――
明らかに自分たちの部屋をのぞくようにして、
遠吠えするのを。
それに、以前からこのエムビーアでは、
フェンリルと思われる獣の目撃情報が
相次いでいたとの事。
であれば、少なくとも関与している可能性は
高いと思われます」
ドルミンはそれを聞いて天井を見上げる。
もちろん、モトリプカ側でも原因究明は急いで
いたものの、
魔導具も人間も魔法が発動出来なくなるという
事態に、当事者たちは焦りと混乱の極みにあり、
このままでは解決など思いもよらない……
八方ふさがりの状態である事は身を以て
理解していた。
「ザハン国―――
そのフェンリルに封じられた魔法を
戻してもらった連中に連絡は取れるか?」
「可能だとは思いますが……
休戦交渉中にこのような情報を相手国側に
伝えるのは、悪手では」
プラクスは一応の反論を試みるが、かと言って
今はそれ以外の手があるかという危惧もあり、
「どちらにしろバレる時にはバレる。
それを計算に入れた上で動くのだ。
それに交渉中だからこそやる。
今、相手はこちらから領土を返還して
もらわなければならない立場。
主導権はこちらが握っているのだ。
交渉の主軸たる俺がこのような状況に
陥っている。
ならば、今後の交渉にどのような影響が
出るか、わからないわけでもあるまい。
この問題が片付くまで交渉は進められない、
とでも付け加えてやればいい」
確かに、と従者の青年はうなずく。
今交渉を進めているのも、ドルミン様あっての
事―――
その彼が途中離脱し、さらに交渉に不具合が
起きるという状況は……
向こうも望んではいないだろう。
「(自分が置かれた状況を逆に利用するとは、
何というお方なのか。
いや、しかしこれくらいでなければ―――)」
そう感心していると、
「どうした?
早くザハンへ伝えるよう動け」
「は、はい。
しかしそれぞれ、どのように伝えれば
よろしいかと」
「そうだな……
フェンリルと遭遇した事のある連中へは、
もし可能であればフェンリル様との
会見を願う、とでもしておけ。
自由商圏同盟への通達はさっき言った
通りだ」
その言葉にプラスクはうなずくと、すぐに
ドルミンのいる部屋から退室した。
「そう来たッスかー」
「直接、フェンリル様を名指しなんて」
後日、交代でロックウェル家の屋敷に戻ってきた
レイド君とミリアさんは―――
モトリプカの動きを共有していた。
「表面上……
というより休戦交渉は『不測の事態』が
生じたとして一時中断する一方で、
以前、フェンリル様に魔法を戻してもらった
という軍の一部に、何とか連絡を付けようと
している感じか」
私の説明に、黒髪に褐色肌の青年と、
その妻であるタヌキ顔の女性が同時にうなずく。
「さんざん、ルクレセント殿が脅かしたの
だろう?
だからそちらに目星をつけるのは間違って
いないのだが。
それを理由に交渉中断とは」
戦士や武人のようないかつい顔の、白緑の
短髪をした青年……
人間の姿をしたワイバーン、ハヤテさんが
両腕を組んで渋い顔をする。
「うまくいかないッスね」
「魔法が使えなくなったのだから、必死なのは
わかりますけど」
レイド夫妻は仕方ない、というように
消極的にとらえる。
「ただまあ、これらの情報は―――
全てロックウェル家に届けられている、
というのがありがたい。
裏と表、両方わかるという事だからな」
ライさんが飲み物を口にしながら話す。
「じゃあ表面上の交渉は止まってしまったと?」
私の質問に、秘書風の女性2人が書面に
目を通し、
「そういう事になりますね」
「それで、メナスミフ自由商圏同盟各国から、
交渉再開を早く、とせっつかれていまして」
サシャさんとジェレミエルさんの後に、
ベルマイヤさんがため息をついて、
「問題解決能力も無いくせに、口だけは
出して来るからのう。
領地や国がかかっておるから、そこは
理解出来るのだが」
そこでメルとアルテリーゼがお茶請けの
お菓子に手をつけながら、
「思ったよりねばるねー」
「ルクレセントのヤツに魔法を封じられたので
あれば……
すぐに全面降伏するかと思っていたが」
それを聞いた当の本人は、
「まあ仮にも同盟諸国にケンカ売ったほどの
人物やろ?
そう簡単に諦めんかも知れん」
「そうなると、今後はどう出て来るか、
ですね―――」
ルクレさんとティーダ君が考え込むと、
「ちなみにライさんならどうしますか?
モトリプカ側の立場なら」
私の問いに彼はアゴに手を当てて、
「俺かぁ?
そうだな、下手すりゃ奴隷の返還にケチを
つける。
そもそも今の交渉は奴隷を返すと同時に、
国や領地を元に戻す……
交換みたいになっているし。
だけどその奴隷に逃げられちまって
いるんじゃ、交換する意味がねぇ」
「え? でもそれは―――
新魔導塔の制御の問題ですよね?」
もちろん、それは私の能力でそうしたの
だけれど……
少なくとも原因は判明していないはず。
するとライさんは首を左右に振って、
「そりゃそうかも知れないけどよ。
俺は結果を言っているんだ。
どの道、奴隷が返って来ない事を知ったら、
交渉意欲は無くなるわなあ。
それなら実質支配している土地でその損害を
補うか、って考える」
すると彼の後ろで聞いていたサシャさんと
ジェレミエルさんが身を乗り出して、
「ですが、魔法を封じられた状態なんですよね?
向こうは」
「そっちはどうするつもりなんでしょうか」
そう、いくら土地だ奴隷だと言っても、
自分の魔法が使えない事とバーターに
なるだろうか?
と思っていると、
「そっちは秘密裏に何とかなると思って
いるんじゃねえかなあ。
それに、新魔導塔の故障を理由に、
身内の反乱分子を粛清したとも
聞いている。
つまり、内外に敵が多い人物って事だ。
今、自分が魔法を使えないなんて
知られたらどうなるか―――
そいつ自身がよ~くご存知なんじゃねぇの。
……って事は待てよ?」
そこまで話すと、ライさんは何かに気付いた
ように、
「つまり、結構追い詰められた状態でもある、
とも言えるな。
しかしそうなると余計手札は手放さんよなあ。
う~ん」
彼は両腕を組んで考え込み、
「ねーねー、シン」
「シンには何か策は無いのか?」
2人の妻がそう言うと、全員の注目が私に
集まって、
「いや、確かにこっちもまさか、魔法を
封じられた上でこうまでゴネられるとは
思っていませんでしたけど―――
こっちがやる事は決まっています。
封じた相手の魔法を解除してやる事。
以前、フェンリル様に関わったとされる
軍の一部に接触しているんですよね?
そちらを進めましょうよ」
私が基本に立ち戻ってそう語ると、
「そういやそうか。
今そっちをせっついているんだっけ。
んでそれが解決すりゃ交渉再開か」
そう言うとライさんはニヤリと笑い、
「おー、また悪い顔しているッスね」
「ウチのギルド長やシンさんもそういう顔に
なるからわかります」
レイド君とミリアさんに話を振られ、
「いやいや、そんな。
せっかくこうまでゴネてくれたんだから、
こっちもそれなりにおうじてあげないと、
なんてちっともおもっていません」
「もういいや。
こうまでてこずらせてくれたおれいに、
このこうしょうでぜんぶおわらせちまおうぜ。
なにせこっちにゃ、どんなことをされても
まっしょうめんからたたきつぶすことのできる
やつがいるからな。
というわけでシン、たのんだ」
アラフォーと恐らくアラフィフの男2人の
会話が終わると、
「いったい何を話し合っておられるのか?」
「いえ、様式美のようなもの。
お気になさらず」
ベルマイヤさんの問いにハヤテさんが答え、
こちらも今後の方針が決まった。
「フェンリル様にお会いしたい……
という事でしたかな」
かつて、辺境大陸に懲罰に向かおうとし、
その大艦隊を止められた事がある艦隊総司令、
ゼレクト―――
(■292話
はじめての ひょうけつせんじゅつ参照)
初老の老人は、自分の屋敷で使者を前に
ソファで対峙していた。
「は、はい。
何でもゼレクト総司令は、フェンリル様に
お会いした事があるとかで」
ドルミン・プラクスの使者である若い青年は、
おずおずと話を切り出すも、
「直接お会いしたのは一度だけだ。
ちょっとした『誤解』があったのだが。
その後もフェンリル様との伝手を元に、
良い取り引きをさせて頂いておるよ」
「で、では……!
フェンリル様にご連絡頂く事は可能なので
しょうか!?」
使者が期待を込めて聞き返すと、
「その前にワシも聞こう。
何故、フェンリル様にお会いしたいのだ?」
老人とはいえ、歴戦の軍人の眼光ににらまれた
若者は一瞬怯むも、
「そ、それが―――
ザハン国において、フェンリル様と関わった
者たちに生じた状況……
それに酷似した事態が発生しまして」
何とか事実を語る事なく、使者は説明するも、
「ワシらの場合は―――
魔法が一切使えなくなった。
魔導具もな。
魔力はあるのだが、どうしても魔法が
発動せん。
だからすぐにどうこうという事は、
無かったのだが」
魔力と体力がゼロになれば、この世界でも
人は餓死状態となる。
ただし魔力があればそれを体力に回せるし、
魔力の扱いがうまく出来ない子供をのぞけば、
基本、魔力さえあれば生命は維持出来る。
「だが魔法を封じられるという事は……
非常時は元より、私生活においても
致命的だ。
そこで我々は何とかフェンリル様に
誤解を解いてもらい、やっと魔法を
取り戻す事が出来た」
当時の事を思い出してか、ゼレクトは自分の
手の平を見つめながら語る。
「こちらとて二度とフェンリル様の不興を
買いたくはない。
いったい何があったのだ?
モトリプカは何をやらかした?」
言外に、正確な情報を伝えないつもりなら、
こちらもフェンリル様に連絡を取る事は無い、
という意図も含まれ、
それを察した使者は冷や汗を流しながらも、
「こちらの最優先目的は、フェンリル様に
連絡を取って頂く事です。
正直に話せば、こちらの願いを聞いて
頂けますね?」
「それは約束する。
こちらとしても、二度とあのような目には
あいたくないのでな」
「それでは他言無用でお願いします―――」
そして若者は、モトリプカでの出来事を
説明し始めた。
「……う~む。
そういう事になっておったか」
「は、はい。
しかし、元よりこちらは確かに『内戦』
状態ではありましたが―――
これと言ってフェンリル様に敵対したような
事実はなく。
ただ、複数の者たちが魔法が使えなくなった
というのは事実なので」
それを聞いた老人は両目を閉じて、
「ワシらも同じだったよ。
どうしてフェンリル様の怒りを買ったのか、
とな。
ただどうも、この現象はフェンリル様
ご自身にはどうにもならぬ事らしい」
「……は?」
ゼレクトの言葉に彼は目を丸くする。
「実は我が国は一度、属国化を目的として
辺境大陸へ軍船を派遣しておってな。
それは一官僚の暴走だったのだが。
その時は、幼子をいざという時の魔物の
エサとして準備していた事で、魔法封じが
発動したらしい」
「らしい、というのは」
「当人にもよくわかっておらぬようだ。
ただ、どの種族であれ幼子や子供に
手を出す事をフェンリル様は嫌う。
次に身内や関係者に対する敵意―――
これにも発動するらしい」
そこで彼は一息ついて、
「もちろん、モトリプカ側にもフェンリル様に
対する敵意は無かったのであろうが、
何か気分を害するような事はなかったか?」
その問いに使者は沈黙する。
「周辺国への侵攻にあたり、奴隷を使ったと
聞いておる。
その中に、未だ年の若い奴隷がいたという
事も、こちらはつかんである。
もし魔法が使えなくなった者や魔導具が
あるのなら……
それに関わったという事であろう。
それに対して釈明するつもりが
あるのなら―――
紹介状を書いてやるゆえ、この国の
ロックウェル家を訪ねるといい」
「はは、はい!」
実はすでにゼレクトは、
『フェンリル様はもうザハン国に来ている』
『モトリプカ側はその怒りを買い、魔法を
封じられた人間が複数いる』
『それを何とかしようと、フェンリル様に
繋がる交渉先を彼らは探している』
という情報を入手していたのだが、
彼はそれをおくびにも出さず……
手筈通り、ロックウェル家に誘導したので
あった。
「来ましたか」
「思ったより早かったねー」
「まあそれだけ焦っているのであろう」
ベルマイヤさんから連絡を受けた私たちは、
ライさん・サシャさん・ジェレミエルさん・
ルクレさん、ティーダ君と同室で話し合う。
「多分、連中―――
自分たちの魔法封じの解除は元より、
新魔導塔の復活も要求してくるだろう。
ここで全部の条件を飲ませるぞ」
「まず子供の隷属化……
これは必ず外してもらいましょう」
「次に新魔導塔の隷属化利用も、ですね」
ライさんに続き、2人の女性秘書がそう話し、
「ほな、打ち合わせ通りにやればいいんやな?」
人間の姿のフェンリルが軽く答えると、
「え、ええと―――
まずは魔法封じを解除して欲しい人員を
こちら側へ派遣する事。
新魔導塔へはこちらが出向くという事で……
土地や領土返還に関してはどうしますか?」
ティーダ君が彼女をフォローするように
確認して来て、
「それについちゃ、こっちの管轄じゃ
ねーからな。
ただ今回の内戦―――
侵攻にしろ占領にしろ、あの新魔導塔で
制御していた、奴隷頼りでやっていたのは
間違いない。
それが使えなくなるとなりゃ、いつまでも
占領に固執はしないだろう」
正体は前国王の兄である男性がそう告げると、
「ほな行ってくるわー」
「い、行ってきます」
ルクレさんとティーダ君がまず『交渉』のために
退室し、
「じゃー私たちもちょっと」
「?? どちらへ?」
メルの言葉にサシャさんが反応すると、
「ちょっとゲートで、子供の顔を見に
行ってきます」
「いい加減帰らないと息子に顔を忘れられて
しまうかも知れん」
私とアルテリーゼがそう答え、
「あー、確かレイド夫妻もそれで一時
戻っているんでしたっけ」
「止めはしないが、早いうちに戻って
きてくれよー」
ジェレミエルさんとライさんの言葉を背中に、
私たちは我が子へ会うため、一時帰還する事に
なった。